電子書籍
魂の救済
2014/07/24 02:25
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:アリス - この投稿者のレビュー一覧を見る
【ふったらどしゃぶり】では、整との関係も和章自身も危うすぎて、最後、二人の関係が終わるときも痛々しさが残っていて、和章の内面を覗くのがちょっと怖くて、一瞬読むのを躊躇しました。でもやはり一穂さん、さすがでした。心に刺さった棘は本当にやっかいですね。何かをされたほうの棘も、してしまったほうの棘も、なかなか抜くことができなくて、いつまでもその場所をジクジクと痛ませる。その痛みが新たな道を進めなくさせてしまう。けれど、「一度はものの数じゃない」。一度失敗しても諦めるな。自分の中にもまだ棘が刺さっているのに、柊の前向きさがとても眩しいです。和章を救ってくれたのが柊でよかった。柊を救ってくれたのが和章でよかった。素敵な小説をありがとうございました。
紙の本
攻の特異な性格。その男はやめとけ! と言いたくなる
2015/09/12 13:48
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:hike - この投稿者のレビュー一覧を見る
発売当時に読み、その時はさして印象に残らなかった作品である。前日譚として「ふったらどしゃぶり」という作品があると知り、そちらを読んだらとても面白かった。メインキャラクターの一人が登場する作品として「ナイトガーデン」を読み返した。彼らの背景について知った上で読むとより理解が深まったが、感動するというよりは心配になった。受よ、そんな相手と生涯を共にすると誓って大丈夫なのか、君のように素直でいい若者なら、もっといい人が見つかるぞ……と。物語としては面白いが、メインカップルの未来を手放しで応援する心境にはなれない小説だった。
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もう毎回一穂さんの作品を読むと同じことを書いている気がするのですが、毎回毎回こうも訴えかけてくるラブストーリー(男同士ですが)を書けるのかなぁと感心と感動させられます。
ゆっくりとじっくりと世界に入れる文章に、それぞれの人生にもがいて苦しむ柊と和章がほどけるように近づいていく姿に思わず切なくて嬉しくて涙してしまいました。
これは別作品「ふったらどしゃぶり」に登場していた藤澤和章と中卒で植物園でアルバイトをしている石蕗柊のお話です。
感情の見えない和章とはつらつとして真っ直ぐな柊。二人はタイプが全く違うんですが、柊の実直さが前作の整とのことで閉じこもっていた和章の殻をそっとめくっていく感じに切なくてときめきました。
それにしても和章は恋仲になると、あんなに優しくてデレデレになるんですね。思わぬギャップにこっちがどうにかなりそうでした。
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ふったらどしゃぶりのスピンオフ。
前作の一顕と整のその後が描かれるのかと思っていましたが、和章のお話だったんですね。
淡々としていて、無機質な和章が、自然の中でまっすぐに暮らす柊に惹かれるまでがすごく丁寧に描かれていて、読んでいて心が温まりました。
残念ながらおじいさんは亡くなってしまいましたが、和章の愛と再生の物語でもあり、過去に惑わされ、大切な人を失い、また新たなひかりを手に入れた柊の再生の物語でもあったのだと思います。
もしおじいさんが生きていたら、柊と和章について何て言うかな、と考えてしまいました。
一穂先生のおはなしは、情景だけでなくひとのこころもとても丁寧に描かれていて大好きです。
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『ふったら〜』では掴みにくかった和章さんも、蓋を開けてみれば素敵な人だった。すごく優しいお話でした。
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一歩踏み出した2人、どんな未来が待っていても大切にお互い想っていくのだろうなぁ・・・ いつか整にも会えるといいね、和章さん。
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なんとも言えず、静かな気持ちになった。
幸せになってもいいのだと、傷が、満たされるような感じがした。
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読後自分の中で色んな気持ちが駆けめぐって、それをうまく論理立てて説明する自信がない。
一言でいえば、それはとてつもない安堵かもしれない。自分を許さない和章をちゃんと許してくれる人が現れたことに。
罪悪感に苛まれながら、それでも手放すこともできなくて、幼なじみの整を囲い込むことでしか愛せなかった和章。愛しているのに受け入れられない矛盾。いびつな関係が破綻してどこかほっとした一方で、すべてを失ってしまった喪失感に絶望する。
そんな和章の心に整の別れの言葉が抜けない棘のように突き刺さる。大切な中味を失った空っぽの入れ物みたいな自分に。
そんな和章の前に文字通り降ってきた一条の光。山奥で隠遁生活をしている祖父と共に暮らす柊。あらぬ誤解、父母すらも100%の力で自分を信じてくれなかった事に傷ついて、逃げるように祖父の元にやってきた。
逃げるのも闘い方のひとつだと鷹揚に見守ってくれる祖父もまた心に深い傷を抱えている。
それぞれ過去を引きずりながらもひっそりと過ぎていくやさしい時間。それが、ずっと前に進めずにいた和章をやがて再生していく。
和章はつくづく不器用な人間なのだと思う。でもこんなにもやさしさと情熱を内に秘めていたのか…とも。
一見とりつく島もないように見える冷静さは、心にない事は言えない誠実さだ。
整は整でちゃんと幸せになっている。自分も幸せになっていい。そう想える相手に和章が出会えて本当に良かった。
『ふったらどしゃぶり』と対の作品として、ぜひともセットで読んでもらいたい。
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はー、やっぱり一穂さん好きだわ…。
前作ありきのスピンオフものだけど、前作とはまた違う雰囲気を醸し出しているのはさすがといったところ。
恋を失って傷ついた和章と、祖父と二人暮らしをする柊が出会い、惹かれあう。野生児のような柊と、人との関わりを嫌い都会で生きていた和章がどうやって恋に落ちていくのか、そして何を知っていくのか。恋物語であると同時に喪失と再生の物語でもある稀有な作品。一穂さんを好きで良かったと実感できます。
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水の流れるような透明感と清冽な美しさ、穏やかさ溢れる文章。情景や想いの切り取り方、人物一人一人の心の切り取り方がとても綺麗でするすると物語に引き込まれます。
心の色の見えにくい和章の消えない痛みと喪失感、野生児のようにのびのびと明るく生きながら心を閉ざして狭い世界に自らを閉じ込めて生きる事を選んでいた柊。
互いに消えない痛みの中で時を止めて生きてきた二人がゆっくりと心を重ね合い、人肌の温もりと共にお互いの心をそっと預けあって前に進もうとする姿が丁寧に優しく描かれ、柔らかな思いにそっと包まれます。
喪失と再生というある種の王道でありながら、風景と人の想い、取り巻く世界の全てがとても丁寧に柔らかく、幾重にも折り重なるように描写されていく所に引き込まれました。
和章の心の中にあった情熱的な色がゆっくりと色づき、花を咲かせていくその様の美しさに、胸がいっぱいになりました。
人物の描写、心のうつろいようが本当にたおやかで美しい。
二人の視線が交差しながら、お互いが何を知り、どう向き合い、どんな風に気持ちを重ねていったのかが手に取るように伝わり、時にしんとしたり、ハラハラしたり。
それでも積み重ねた物語のその先で二人が前に進むことが出来て良かった、と瑞々しさに胸が詰まるようなお話でした。
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前作では不憫な役回りでしたが、
ようやく幸せをつかめたようでよかったです。
スランプだった仕事もきっと順調にこなすでしょうし
ちょっと重いくらいの愛情を持っている和章だけれど
柊ならそれも受け止められる素敵なカップルだと思います。
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ふったらどしゃぶりのスピンオフ、当て馬元彼(語弊あり)のその後的な…あのあとどうしてるのか気になってたから、読めてよかった。ただ、個人的にはカプがストライクゾーンから外れちゃったので萌えたかというとウーン?かも
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「ふったらどしゃぶり」という本のスピンオフ作品です。一年ほど本棚に眠らせていた本でした。あらすじを読んでためらってしまって…。表紙の絵が素敵で、こんな可愛い子が片思いして悲しい思いするのか、と思うと、読めなかった(笑)ハッピーエンドなのは分かってるんだけど、その経過が可哀想なのは嫌だなぁ、と。だって絵が好みだったから(笑)
で、ある時旅行のお供に持っていくことにしました。何もない時に読むよりも、旅行の合間の移動時に読めばそんなに衝撃を受けないだろうと。…甘かった…。違う意味でめっちゃ衝撃を受けてしまいました!何で今まで読まなかったんだよーーーーって。柊はやっぱり激かわいいな…。って。そしてそもそも前作で出てきた和章も私嫌いじゃないよ、そうだよーって。旅行とかそれどころじゃない(笑)電車の移動時間が待ち遠しい!一穂さんの作品はいつもそうですよね。日常を薔薇色に変えちゃうの。つまらない移動時間が何よりも待ち遠しくなっちゃうの。
ということで、まんまとはまってしまいました。ちなみに京都植物園にも行きました(笑)聖地巡礼。とりあえず、心が洗われるというか、現実から少し解離させてくれる癒しの作品だった。テーマも作品の舞台も。植物園に行きたくなりますよ。
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「ふったらどしゃぶり」のフラれた方の和彰のお話。これ単体でも問題なく楽しめますが、前作を読んでいた方がより和彰に感情移入して読めそうです。
山の、緑の描写が綺麗で素敵な世界観を楽しめました。