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書店は簡単に滅びはしないと信じたい。私にとって書棚の間に身を置くと気持ちが安らぐ、かけがえのない存在だから。
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読み終えて、泣きそうになっている(というかもうほぼ泣いている)自分を発見した。
大好きな「本」と「本屋さん」を永遠に失ってしまったかのような寂しさを感じている自分に驚く。
そしてその責任の一端は間違いなく自分にあるのだという後悔をも。
でも、この本の著者である田口久美子さんは、「私たちはなんとか自力で生き残りを図らねばならない。」と仰っている。
まだ出来ることがあるはずだと。
それならば私にも出来ることがあるはず。
いや、あるのです。明確に。
でもなかなか出来なかった。というより出来ないのだと言い訳していた。
でももう言い訳はやめます。やめますとも。
だって、「本」と「本屋さん」を失いたくないから。
この本は主に書店員さんのインタビューから「書店の今」に迫っている。
最後の章は電子書籍のことにも触れていて、「緊デジ」というプロジェクトやら電子書籍の将来の見通しやらが語られている。
「緊デジ」…初めて知りました。皆さんいろいろと苦労されているのですね。
でも、まだまだ紙の本が電子書籍に取って代わられる日は遠い(?)のかな。
目がつらいから電子書籍には一切近づかないようにしているのに、紙の本がなくなったら私は一体何を読めばいいのか。
とてつもない危機感。
書店の厳しい現状が語られる本編の間にちょこちょこと挟まれる野良猫の「マリコ」ちゃんについてのエッセイも何やら大変なことになっていた。
でもとにかく無事で良かった。
命にはしぶとくあって欲しい。
そしてうまくいくことばかりじゃないかもしれない一生を、それでも幸せだと感じていてほしい。
「本」についてもそう。
というより、私自身が幸せに一生を終えるためにはどうしても本が、それも紙の本が必要だと信じている。
だからそのために出来ることをしたい。
それが何なのか(改めて)(根気強く)(何度も何度も)教えてくれたこの本に感謝。
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多くの学問と同様に日本語学もまだ途上、どんな研究ジャンルにも新しい波がやってきて、常に変化していっている。
固定化された体系、ジャンルなどありはしない。
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書店の危機が叫ばれて久しい。著者はジュンク堂池袋店の副店長さんで、大手書店ではあるけれど、今後の見通しには相当の厳しさを感じておられる。
だが、それでも、あえての「書店不屈宣言」である。
書店員たちが日ごろ感じていること、考えていること、出版の未来への想いを、周囲の方々の声とともに伝えてくれる。
印象的だった文章を引用します。
『「効率的な買い方」が日常生活に入り込んでくると、選書に失敗するという遊びがなくなり、本の選び方が痩せてくるのではないか? ・・・ 「文化」というものは無駄と無理の果てにあるもの、と私は無謀にも考えている』
Amazonなどで効率よく本を買うのもいいけれど、書店でさまざまな表紙を眺めたり手にとって重さを感じたりしながら、(時には読んでみたらそれほど面白くもなかったなどという経験もしつつ、)「書店で本を選ぶ喜び」を、自分はこれからも味わい続けたい。
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「小さな書店から中型、大型と、規模の大小を経験しながら、現場で40年以上も働き続けた書店員」(p.9)である著者が、書店員としての自身の日常とともに、「主にジュンク堂の社員を中心にインタビューをし、それぞれの担当ジャンルの現状を話してもらったもの」(p.12)をまとめたという本。
この著者の本は、『書店風雲録』も、『書店繁盛記』も読んだおぼえがある。
「あとがき」のラスト。
▼「本」は素晴らしい記憶装置だ。(p.239)
ちょうど、アフマートヴァの詩のことを書いた『詩の運命 アフマートヴァと民衆の受難史』を読みかけているところで、「本」というかたちにならない(なるまえの)人の記憶にゆだねられた詩やことばのことを考えていて(アフマートヴァの話を読んでいると、やはり記憶によって「遺書」を届けた『収容所から来た遺書』のことも思い出して)、なんかここを読んだら、字を記して残したり、「本」というかたちにつくったり、そういうのができない時代と場所があったんやとつくづく思った。
この言葉で言及された本『考える人びと この10人の激しさが、思想だ。』は、田口の大切な友人・入澤美時がつくったもので、入澤はこの本に心血を注ぎ、夢中になって編集をしていた、という思い出が記されている(絶版だというので、図書館で予約してみた)。
もうひとつ印象に残ったのは、本を買うのに無駄をしたくない、カスをつかみたくないという話。
出版業の外郭団体「日本出版インフラセンター(略称JPO)」の専務理事だという永井祥一さん(元講談社の営業部次長)の話がある。
▼「最近の読者は『カスをつかみたくない』んだよ。つまらない本を読んで時間をムダにしたくない。だから誰か権威のある人の推薦とか、ベストセラーとか年間ベストとかがもてはやされる。アマゾンのお勧めとかベストとか、みんな見ているじゃない? こっちも逆手をとって、ブッククラブみたいなものをつくるとかさ、そこまで行かなくても出版界全部で知恵を絞って、「本の情報発信」をしていかなくちゃね。僕たちが忘れているのはそこなんじゃないかな」(pp.221-222)
私は学生だった頃(とくに院生だった頃)から勤めはじめて数年の間、やたら本を買いまくっていた。勤めるようになって多少の余裕ができた頃はともかく、ビンボーだった学生の頃に、よくあれだけ本にお金を割いていたなと今は思う(本代が、一ヶ月の食費の支出をぬかすときもあった)。
注文するのは主に大学生協の書籍部で、注文短冊をせっせと書いては出していた(もう短冊で注文するなんて、ないのだろうなー)。そのうちに、インターネットで注文して、早ければ数日後には生協書籍部で受け取れる、というのが始まってからは、ばかすか買うのに拍車がかかった。
本の現物を知っていて、つまりセンセイや先輩に教えられたり人が持ってる本を見て注文するのもあったが、まだ知らない本を注文するほうが多かったと記憶する。「これから出る本」でタイトルを見てとか、本を読んでいて後ろに出てくる参考文献リストからとか、書評などで見かけてとか、いろいろ。
そんな中で、受け取って(うわー、こんな本やったんか…買わなんだらよかった、高かったのにー)と残念、後悔、失敗したと思った本も、結構あった。買ったものの、ぱらっと見ただけで、結局読まなかった本もある。とはいえ、買った本はなかなか捨てられず、長いこと積んでいたなア…。
著者の田口は、こんなことを書いている。
▼…「必要な本」を買うのに便利なアマゾンでの、読者向けサービスに抜け目のないアマゾンでの、つまり「効率的な本の買い方」が日常生活に入り込んでくると、選書に失敗するという遊びがなくなり、本の選び方が痩せてくるのではないか? いやいや、無駄な買い物をしないのが現代人の生き方、と多くの人がいうのだが、「文化」というものは無駄と無理の果てにあるもの、と私は無謀にも考えている。実は本心では無謀でさえない、と思っている。(p.186)
私も、「カスをつかみたくない」気持ちは分かる。でも、あの失敗の買い物のかずかずが、自分の「本にたいする嗅覚」みたいなのを鍛えてくれたなーとも思う。だから、田口の書く「選書に失敗するという遊び」とか「本の選び方が痩せてくるのではないか?」には共感する。
「あの本!」と心に決めて本屋へ行くのであっても、行けばその場にはほかの本もいっぱいあって、そこをうろうろすることで、(あ、こんな本が~)というのはやっぱりあるから。
アマゾンの本の検索システムは、図書館などの蔵書検索に比べて、「あいまいさ」を拾ってくれる設計になっているなと感じるが(図書館の蔵書検索では、一字違っていてもヒットしない)、それでもアマゾンが持ってない本、アマゾンが扱わない本は当然のことながらヒットしないし、「検索した結果」に出てこないものが世の中にはたくさんあることを知っていなければなーと思う。
そして、「雑誌売場」のことを書いた章では、ジュンク堂で雑誌担当をしてきた小高聡美さんのこんな話を読んで、自分が編集部を離れてしまった『We』誌のことや、今も本ネタ原稿を書いている『ヒューマンライツ』誌のことなどをぼんやり考えた。
▼「そうですよ、雑誌って本当は編集長の顔が見えなくちゃいけないんです。商業雑誌は広告主義なので、雑誌の後ろが見えないでしょう? つくる人の顔が見えるのが〈いい雑誌〉って私は思います」(p.58)
▼「私たちは〈売る〉立場ですから、一冊でも多く売ることで雑誌を応援することしかできません。私たちができる雑誌のよさを伝える方法は、あらゆる雑誌を仕入れることと、バックナンバーを大々的に売ること。壁中が一種類の雑誌で埋まっていると、お客さんの目を引くし、そこが入り口になって〈面白い雑誌がある〉と思ってくれる、と私は信じています」(p.60)
▼「今出版社は雑誌のバックナンバーを持たないようにしています。維持費にお金がかかるとかで。多くの雑誌は広告収入があるので、極端にいえば、売れなくてもある程度の採算はとれるようにできているんです」(p.60)
そうか、広告収入があることで「売れなくてもある程度の採算は」ということもありうるのか、と自分の知らなかったことを知る。
(9/18了)
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書店員は本に囲まれていて楽しい仕事? と思っていたけれど、仕事となると好きなものであっても大変ということね。
引っ越しで経験済みだが、本を移動させるのは重労働。そこへ、お客が欲しいと思う本を棚に並べ、売れそうな本を予測して準備し、自分の思い入れのある売りたい本の扱いも考えたいとなると大変そう。
本好きだけれど、本屋さんには読みたい本を探しに楽しみで出かけるのが1番ということだわ。
以前、東京に住んでいたときに利用していたジュンク堂、リブロが登場していて懐かしかった。とってもお世話になりました。
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まず文体が合わずに躓く。口語で書いたブログっぽいのだが、テキストの前後やリズムに違和感を感じまくり、また取材ももう一押しすれば深くなるのに、という部分が目に付く。だが、書店の現実を確かに切り取っているので興味は惹く。児童文学の項は特に面白。
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大規模書店の裏事情。著者は池袋ジュンク堂の元書店員。
以前「書店繁盛記」というエッセイを読んだことがあるが、その後、アマゾンなどのネット書店や電子書籍の普及により、普通の本屋は苦戦を強いられている。著者は、雑誌や人文書、児童書などの売り場担当者にインタビューし、売り場を巡る様々なエピソードや担当者の意見を紹介し、現在の書店事情を考察している。
一昔前、会社の帰りに時々池袋ジュンク堂に立ち寄った。ふらふらしているとあっという間に2,3時間経ってしまうような本好きの楽園のような書店で、いつも沢山の客で賑わっている印象だったが 、現在は本や書店を廻る環境が大きく変わり、書店に足を運ぶ客が減り、売り上げも減っているそうだ。そんな状況でも若い書店員は本を買ってもらうために棚を工夫し、顧客の傾向を分析し、ベテラン店員と相談しながら改善の努力を続けている。書店員が自分のような客をどのような目で見ているのかが判って興味深く読めた。
著者は電子書籍やネット書店を脅威と感じているようだが、紙の感触が好きで、本は紙の本に限ると思っている人も多いと思う。例えば、美しい装丁で丁寧に作られた所有欲を擽る本は、電子書籍には無い価値がある。書店も本を単に商売の道具としてではなく、モノとしての価値をアピールすれば、将来も生き残ることができると思う。
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アマゾンの上陸に震撼した日本の書店業界、紙の本は滅びるのかなど、
ジュンク堂の副店長が業界についてまとめたもの。
作家がベストセラーを出すと、気が狂わんばかりのストレスがあるという。
実際うつになった人もいるそうだ。
また、賞レースの裏で册数確保やコーナーの設営に東奔西走する様子など、
知らなかった裏事情がとても新鮮。
とにかく書棚に囲まれるのが大好きな私。書店よ永遠たれと願うばかりだ。
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興味深々で拝読。
書店員の視線で読めば、全ての章においてふむふむ。共感と発見が多かった。初版は2014年に単行本、2017年末には文庫化された。
著者の田口久美子さんは、大型書店何店かでの現場経験を積んだうえで、ジュンク堂池袋店の副店長をされている。
本に携わることで痛感する"なんとかならないものか"という問題点が、明快に指摘されていると思った。
そして、何より、著者の純粋な本(そして本を取り巻く人々・環境に対しての)情愛が、すごーくすごーく伝わった。暖かい体温を感じて心地良かった。
タイトルも、とっても気に入りました!
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著者はジュンク堂池袋店の名物店員さん。丁度今週は池袋に縁があり、ジュンク堂へ何度も行ってるので、何度かお見かけした。
村上春樹とノーベル文学賞から始まり、国語・日本語学、雑誌、コミック、人文書、児童書と色んなジャンル担当の書店員さんのインタビュー。ネット書店や電子書籍についても一家言。そしてゲンジコードの提案。
「電子書籍に負けない」と断言するのが児童書だけってのは寂しいなあ。あと、アマゾンって消費者から取った消費税を納税していないらしい。それはないわー。
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1973年に書店員としての人生をスタートし、現在も副店長という立場で現場に立ち続ける著者による書店ドキュメント。ネット書店におされ、電子書籍の推移に神経を張りながらも、肉体労働を含めたリアル書店の仕事は続いていく。変化の激しい状況の中で、それぞれの現場は今、何を考え、どう動いているのか。現場で働く社員たちへの取材を中心に、業界全体への危惧、希望へと話は及ぶ。
書店の仕事への憧れが強い私としては、実際に働いている書店員さんの話をとても興味深く読んだ。
棚作りにかける情熱と、売れる仕掛けを作る難しさ。
電子書籍の勢力が増していることについては、私も利用しているので、少し心苦しく思ったが、やはり紙の本を扱う書店は、この先も残っていってほしい。
思わぬ本との出会いもあるし。
この本では、大型書店の話しか出ていないけど、小さな書店の言い分はまた違うものだろうな。
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同じような事を何度も書いているけれど、書店員の仕事はとっても大変ながらずっと憧れの職業です。1番は学校の図書館の先生、2番目は図書館司書、その次位に書店員が来ます。給料が安いのにハードワークで責任もある、でもやりがいはあるというまさにやりがい搾取の筆頭のような仕事ですが、それでも憧れうんですよね。
本が大好きな人は誰しも憧れる事があると思いますが、実際になるのかと言われたら躊躇しますよね。高校生の時にアルバイトしようと思ったら、高校卒業以降でないとなれないと言われて、一生本屋さんとして過ごす事無く生きていく事になりそうだとあきらめました。
筆者の田口さんは伝説の書店員ともいうべき超ベテランの書店員さんです。40年位本の世界を見つめ続けて来ているので、いい時も悪い時も本と一緒に過ごせた幸せな人です。
職場で有るジュンク堂の後輩へのインタビューを軸に書店の古今、本めぐる業界のこれからを語っています。
本もCDも1996年頃がマックスでそれ以降衰退の一途を辿っています。もっと楽しい事が沢山あるから関心を無くした、電子化によってメディアの統合が進んでいる等色々有ると思います。
これ実は思っている事が有って、時代時代で「かっこいい」という事が変わって来ているような気がします。僕らの頃は本を読んでいる方がカッコよかったし、音楽の事を沢山知っている方がカッコよかった。映画だって詳しい方がカッコよかったんです。スキーが上手いとかっこよかった時代もありましたが、既にその時も過ぎ好きな人だけが通うニッチな趣味になってしまいました。
本や音楽にこだわる事もまた、既にニッチな趣味になりかけているのであろうと思います。こればかりは大多数の趣味趣向がそうなっているので動かしがたいのが実情です。悲しい現実ですが早晩紙の本は無くなり、本屋も図書館も無くなる事になるのでしょう。永遠に有ると思っていたレコード屋もみるみる無くなっていっていますから。
それでも僕らは本にしがみつきたいのであります。馬鹿とは分かっていても愛しちゃってるんですもの。
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書店も出版業界も下り坂だ、という前提のもと、それでも書店で働いている人はいて、その人たちの話を聞いてみよう、という本。
テーマとしては、これまでも似た本があったけれど、本書はジュンク堂のさまざまな担当者に上司が聞いていく、という感じで、書店員の意気込み、というよりも書店のオシゴト、というところがクローズアップされている。
この業界で生きていくって決めているから、という人や、本は素晴らしい記憶装置だ、という素敵な言葉もあったりする。
けれど、不屈宣言、というよりも、アマゾンと電子書籍の波に溺れそうだ、というどんよりさが漂っている。リアル書店、やばいけど応援よろしくです、という小さな声。
僕も、紙本はともかく、kindleで本買うからなあ…。結局のところ、水は低い方に流れてしまう。抗うだけのパワーが、どこかにあるか。素敵な本屋の存在に他ならないが、卵と鶏のような話で…。