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同じ越塚先生(ら)著の計算力学レクチャーシリーズの『粒子法』に引き続き、粒子法(MPS法)の日本語の本2冊めです(『粒子法シミュレーション』はどちらかというとCG向けなので数に入れてません)。
内容を一言でまとめると「大学院M1の学生向けの講義資料集をまとめたもの」に近いと思います。もう少し具体的に言うと、「知識・能力は学部レベルの初歩的な内容は一応は頭に入っているはずの人が、いきなりMPS法のプログラムを書けと言われた場合に、少しずつ理解しながら作っていくのに参考になる本」です。
200ページ弱あるうちの、1/3がMPS法(と計算シミュレーション)の理論が書かれており、具体的に数値を当てはめながら、丁寧に式誘導も書かれています。
(ここまでやるなら演習問題があってもよかったのではないかなと思いました)
あと100ページ(本書の半分)は応用(マルチフィジックス・並列化・可視化)ですが、応用を紹介するには100ページは短すぎて少し物足りません。
適用例の紹介が残りの1/6ぐらいありますが、「へーこんなのあるんだ」で終わってしまうので、おまけと思います。
説明が丁寧な以外には、個人的な観点から良かったと思う点は、
・「粒子法」と「粒(ビーズ)の動き」の違いの説明が分かりやすかった
・乱流についてももう少し掘り下げた説明がある
ところです。
ただ一方で、現在の粒子法(MPS法)の状況を網羅しているとは言いがたいです。
つまり、意図的に紹介・内容に取り入れていない研究等があり、政治的な何かを感じざるを得られませんでした。
仕方ないこととは思うのですが、がっかりしたのが正直なところです。
本書で紹介されている標準MPS法のままでは実用に耐えないのは既知の事実ですので、本書の内容だけで「粒子法(MPS法)つかえねー」と判断される方が増えないことを祈るばかりです。
あと細かいところだと、GPGPU(CUDA)は、今はもはやカーネルをがりがり書くって時代でもないので、ちょっと内容が古いかなと思いました。
GPGPUの世界は1年前は江戸時代みたいなものなので、これも仕方ないことなのですが・・・。
というわけですが、説明や式誘導がとても丁寧で、前出の『計算力学レクチャーシリーズ 粒子法』の内容をさらに分かりやすくしたものになっていますので、これから人に勧めるならこちらを勧めると思います。
ただし、これが粒子法(MPS法)のすべてではないので、あくまできっかけとして使うだけで、実用に向けて進むにはまだまだ知るべき内容があります。
そんな意味では少し不完全燃焼気味なので、☆4の評価としました。
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水や空気などの流体の動きをコンピュータでシミュレートする手法は数多くありますが、「粒子法」は最も新しい数値解析手法です。その特徴は様々ありますが、最たるものとして、計算点自体を移動させながら支配方程式を解くことが挙げられます。すなわち、ナビエストークス方程式を例にとると、最も計算が煩雑である移流項を扱う必要がありません。要するに、自由表面流れ問題(例えば、津波)のような水面形状がダイナミックに変化する系を安定的に解くことができます。そのような理由もあり、現在では都市域の津波被害予測(ここでの被害予測とは、単に浸水域を算出するだけでなく、津波の圧力や流速、水深などを詳細に計算するシミュレーションを指します)などに応用されています。本書は、そんな粒子法の基礎を一通り学ぶことができる一冊となっています。
(ラーニング・アドバイザー/構造エネルギー工学 OMURA)
▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら
https://www.tulips.tsukuba.ac.jp/opac/book/1621339
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【琉球大学附属図書館OPACリンク】
https://opac.lib.u-ryukyu.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB1590101X