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その結婚はかりそめのものだった。祖父の親友から請われてマリエは彼の孫の元に嫁ぐこととなった。
ネット発の小説で表紙は華麗なイラストに飾られ、主人公マリエには親しい人以外が色のない灰色に見える目がある。そのため読み始めるまではラノベや少女小説の雰囲気が強いのだと思っていました。
確かにその要素は強く読みやすく登場人物も個性が際立っているのですが、それよりも強く思ったのは「赤毛のアン」や「風と共に去りぬ」のような大河小説の雰囲気でした。それは舞台設定によるものも大きいのかも知れません。その作品世界の雰囲気に身を委ねて読むのは、実に楽しかったのです。
辺境の町に育った働き者のマリエと、鼻持ちならない冷淡な性格のエヴァラード。ふたりはエヴァラードの祖父の望みを叶えるため、祖父の死まで夫婦であるように見せ掛けようとする。そんなかりそめの夫婦だけれども、マリエは一緒に暮らすのだからと誠心誠意エヴァラードに仕える。
やられたら倍返し!みたいなヒロインの小説をよく読むせいか、マリエの言われるままに仕える姿にはじめは戸惑いを感じました。しかしマリエはただ耐え忍んでいるのでなく、何事もさらりと受け流す術とやるからには完璧にやりたいという前向きさを感じたのです。そこで感じた好印象はそのままエヴァラードの胸中にも忍び込んでいくものとなっているのでしょう。
読み進めていく内に実はマリエもエヴァラードもある意味鈍感で、その鈍感さが物語に起伏を与えているのではないかと思えてきました。
全2巻の物語。さてどう帰着するのか楽しみです。