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映画はキャスティングで8割決まるというのは意外だった。映画は総合芸術で、複雑な要素が占めているが、生身の人間による揺らぎ部分、俳優たちの持っている実体としてのオーラのようなものの組み合わせが決める部分が大きいということではないかと思った。
映画のことを監督がはっきりとつかんでいないときもあり、是枝監督が迷った時に出演者に相談し、カットするはずのカットが大きな意味を持つことになったなどの実例が話されていて、映画はチームでこそ実現できる芸術活動なのだと改めて感じた。
是枝監督がドキュメンタリーにかかわる中で、公平さではなくどうしても主観が入ってしまうと語っているのは、森達也とかぶる部分がある。ドキュメンタリーを考えつめると考えが至る部分なのだろう。報道写真なども同じだが、「公平さ」という言葉を軽はずみに使えないというのは、説得力がある意見であると思う。
山内豊徳の妻の取材で、是枝さんの取材だけを引き受けた理由が、「あなたがそこに座って、取材を受けてほしいとモジモジしている姿が、夫にそっくりだったんです」というところに何とも言えなく感動した。それは、「はっきり見えない本当のこと」を感じたからだと思う。言葉で尽くす論理的な説明ではなく、その人の全体的な表現、感覚、ある意味、野生状態で感じられるような、人対人の関係性の中で直感的に感じられる信頼感、また亡くなってしまった夫の再現として、デジャヴとしての存在への通底する感情などが混ざって、この人であれば話せると感じたということがこの世の中に存在する。ということに感動した。