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この本も、後ろに数人の予約待ちがあって、先に読む。
生活保護について比較的若い女性が書いた本といえば、1年くらい前に『生活保護とあたし』を読んだことがある(この本のことは、『ヒューマンライツ』誌の2013年10月号で書いた)。
「リストラや契約打ち切りで無職になり、転職活動では100社近くから不採用になり、貯金もすべて使い果たし、生活に困って途方に暮れていました」(p.1)という著者は、借金・風俗勤務・自死の3つのうちどれにしようかと思い悩んでいたときに、生活保護という制度を知る。
ウワサによると申請はコワくて物々しいようだが、申請するからには不備がないよう、ストレスも最小にとどめたいと考えた著者は、生活保護を申請した人の「実践的アドバイス」を求めて、図書館で勉強に励む。しかし、あまり参考になる本がなかったという。
▼「もっとこう、つい最近まで働きながらひとり暮らししていた女性がある日突然、『ああ、生活保護申請しなきゃ! けど、どうすればいいかわかんない!!』ってときに参考にできて、経験者から『こういうふうにやってみたら、なんとかなったよ!』みたいにアドバイスをもらえる本、ないのかなぁ。できれば、明るいタッチで書かれたもので。あればすっごく読みたいのになぁ」
という一年前の私自身の渇きが、この本にはふんだんに活かされています。(p.2)
37歳の女性が書いた、そんな本。もとは、いろいろ「吐きだす」ためにブログ(※)に書かれたもの。
そもそも、著者が「借金・風俗勤務・自死の3つのうちどれにしようか」と思い悩んでる時点で、なんで生活保護という制度は「こういうときに使える」と思われていないのか?と思う。憲法25条とか朝日訴訟が教科書に載ってても、「こういうときに使える」という知識になってなかったら意味ないでと思う。
著者は実家との折り合いが悪く、「親に養ってもらうのではなく、自分の食いぶちを自分で稼ぐ」という夢を実現させるため、就職先を選ぶにあたっての最優先事項は「安定」だった。
▼スーツを着て社畜となり、馬車ウマのように働くのは、まったくやぶさかではなく、むしろ「誰よりもがんばって働きたい」と希望していました。…(略)
そんな願いを胸に秘め、初めて職を得た先は、とっても安定した企業だったものの、私の身分はあんまり安定しない契約社員でした。一年ごとの更新です。
それでも、社会保険や厚生年金に加入できる職に就けただけで、私は大満足でした。(pp.12-13)
契約社員から正社員になれて、「安定」を手に入れた!と思ったものの、体調を崩して、1年で休職を余儀なくされる。「病気になったのだから、辞めて実家に戻れ」という親の言葉に従ってしまったことは「人生最大の失敗」だったと著者は書く。
子どもの頃から、「母の金切り声と父のタバコの煙にまぎれてどうにか自分の存在を消し、日々をやり過ごす場所」(p.14)だった実家に戻ってしまったことで、著者は「人間関係の溜め」「精神的な溜め」「お金の溜め」を失っていく。
「死ぬ以外の方法��ここから抜け出すには、引っ越すしかない、そのためにはお金を貯めなくては」(p.23)と著者は新たに仕事を探し、精神科の主治医には両親との別居を勧められて、貯金をはたいてアパートを借りる。その後、正社員として採用された会社を、わりと簡単にクビになり、もうあとがない状況で、契約社員の仕事についた。
だが、長期が前提のはずだったその契約社員の仕事を、3ヵ月であっさり切られてしまう。すでに貯蓄はくいつぶし、契約の仕事の給料でぎりぎりの生活をしていた著者は、「月末の家賃が払えない」状況に陥る。何か救済措置はないかと尋ねた著者が知ったのは、社会福祉協議会の「総合支援金貸付」だった。住むところはあるが、雇用保険の受給資格がない人を対象にしたもので、社協の審査に通れば原則3ヵ月お金が借りられる。
その後、生活保護をうけることになった著者は、あとから振り返って、この「総合支援金貸付」は生活保護を受けさせないための水際作戦の一種ではないかと考えているが、ともかく、この時点では、まさに一筋の光明だった。
とはいえ、「総合支援金貸付」も借金は借金。お金が入るあてがなければ、「つなぎ」にはならない。
福祉事務所で生活保護の提案を受けたときに、著者はとにかくそれがどんな制度なのか分からなかった。図書館でも本を探してあれこれ調べているが、何より著者があたった福祉の職員・諸葛孔明子さん(仮名)や、職安の職員・ハローワー子さん(仮名)が、真っ当に仕事をする人だった。生活保護の申請のために役所へ行ってイヤな思いをしたという話は、それこそ山のようにあるので、こんな職員さんばかりであれば、「借金・風俗勤務・自死の3つのうちどれにしようか」と思い悩む人がどんなにか安心できるのにと思った。
生活保護の申請にあたり、著者がいちばん怖れていたのは、扶養照会で両親に連絡されてしまうことだった。結果的には「虐待親への連絡なし」での申請することができ、どれだけ著者は安堵したことか。
そして、生活保護を受けて、生活をたてなおそうとしている著者は、かつての自分をかえりみて、「安定」というものを考えなおしている。
▼できるだけ多く納税するために真摯に働いていたら、結果として保護を必要としなくなっていた…というのが未来の理想です。 見たことなかったからわからなかったけど、あの頃欲しくてたまらなかった「安定」は、私が想像していたのとは、かなり違った形をしているのかもしれません。
「私なんかでも、生きていていいんだ」
という、じわじわ溜まっていくような心のありよう。
ひょっとして、これが「安定」ってやつですか?(p.217)
「生きていていい」、その最後の支えになる制度が生活保護なのだと思うけど、なんでここまで知られてないのか…。
表紙と各章の扉にある4コママンガ(イラスト:小山健)がオモロイ。
※著者のブログ
http://haguki-lovey.hatenablog.com/
(11/2了)
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おかれた状況がやや特殊なのかな、とも思った。ただそうゆう方向けにあるのが福祉であって、それを有効に使うのはなんら悪いことではない、むしろ使って軌道修正をしていくべきであるという強い意志を感じることができた。
◯◯女子という題名にはなんだか違和感だったけれども、手に取りやすい感じにしたのは良かったのかな。
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病気で働けなくなりこのまま社会復帰できなかったらどうしよう…と思っていた時にこの本を知り読みました。筆者の大和さんの文章力が素晴らしく、読みやすいです。受給までの手続きなどの流れを知ることができ勉強になりました。筆者が受給を決めた部分では読みながら泣いてしまいました。
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ごく普通、というには実家の事情が少々込み入ってるけど、まあ普通めな女性がいかにして失職し、生活保護を受給していくか、というだけの話。しかし細部や当事者の感情、つまずくポイントなどは確かに得難い情報である。私もいつかくる生活保護申請のために知っておこう。
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都会で生きていくにはお金が無いとつらい。
いくら切り詰めたって、家賃は払わなくちゃいけないし、公共料金の支払いもある。仕事についてたらいいけど、失職中となると・・・
今の時代、貧困も大きな問題。
大和さんの過酷な体験は、同じような悩みをもつ方々の大きな道標となるでしょう。
細かく書いてくれてありがとうございます。
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一言で感想をザッと述べると女性の皆さん、明日は我が身かもしれないので一度読む事をおすすめします!と言った感じである。昨今、日本では女性の社会進出が当たり前の時代。しかし、『不景気』という社会情勢もあり、著者のようにいつ会社からクビを切られてもおかしくない時代でもある。そんな生き辛い現代の日本を生き抜くためにはある程度の予備知識も必要である。総合支援資金貸付や生活保護の申請など困った時に役立つ知識が盛り沢山。現代の生き辛い時代を生き抜くための説明書と言っても過言ではない。
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大和彩さんという方の実体験に基づいたエッセイ。
正社員で働き、自立して安定した生活を…と誰もが思うささやかな希望。大和さんもそんな自分の未来を夢みていたひとり。
だがそんな思いとは裏腹に現実の厳しさが彼女を襲っていきます。
決して他人事では済まされない、誰もが陥る可能性があるよな〜と考えさせられました。
働いて収入を得て、そのお金から生活に必要なものを支払って、生きていく…、そんな当たり前の様な図式も、職を失う事によってあっと言う間に崩れていく。
彼女は両親から虐待を受けてきた過去があり、精神的な病気も患っています。なので頼れる両親なんてものもなく、ひとりで全てを抱えていました。
貯金もどんどん無くなり、光熱費、家賃も払えない…どうやって生きていったらいいのか、不安と恐怖は計り知れなかったと思います。
事実は壮絶だったんでしょうが、このエッセイは努めて明るく書かれています。それはこの著者の大和さんが、同じ苦しみを味わっている人達に「心配しないで」というメッセージを送っているからではないでしょうか。
昨今、生活保護受給の在り方について色々と話題になっていますよね。私もあまりいいイメージは持っていませんでした。
だけどこの本を読んで、実はとても素晴らしい制度なのではないかと感じました。
大和さんにも、今後も頑張っていってほしいと思います。
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2015.1.10
最後のライフラインだと思っていたけど、ものすごく身近なことになっているんだと気付かされた。
本当に苦しくて申請する人がいる、その裏で不正に需給している人もいる。広く知られることで助かる人もいるし、抜け道にする人も出てくるだろうなと思う。実話なだけに難しい問題。
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生活保護云々よりも彼女自身の家庭環境、特に両親との関係を知りたいと思うようになった。なぜこれほどまでにこじれるようになったのか。
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いろんな方向から追い込まれて卑屈になる気持ちをオブラートに包んで読みやすく表現していて、著者の執筆時のエネルギーに恐れ入る。かなり消耗しながら執筆したのだろうと勝手に想像する。
精神的に追い詰められて何もできなくなった人、何もできなくなりつつある人には参考になる本だと思う。申請書がダウンロードできるURLを記載するなど、現実に生活保護を検討してる人の手引きなるようなコンテンツがあればなお良かったが、そこは編集者に頑張ってほしかった。
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できるだけ明るく書かれているものの、崖っぷちも崖っぷち。いつ自殺してもおかしくないような人生で、なんともいえない気分になりました。波乱万丈、そして不幸すぎる。
さらに、努力がなかなか実らなかったり、不幸に追い討ちをかけるような出来事があったり。これがリアルなのか・・・と愕然としました。
この女性(著者)は途中から人(役所での担当者など)に恵まれ、最終的には生活保護を受けながら自宅での仕事(ウェブサイトへの寄稿)をする、という生活に落ち着いたようですが、それでも手放しで「良かったね!」と言える程の進歩ではないんですよね・・・。
この本を読んだ後で軽々しく励ますことはできないけれど、いつかドン底から這い上がって欲しい。そう思いました。
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生活保護はとても遠い世界の話だと思っていたけど、意外と誰でも陥ってしまいうる可能性があるのかもしれない。もしかしたら私も。でもそれをつなぎとめられる術も私たちは持ってるはず。
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生活保護を受けるということを、肯定的な選択肢の一つとして選択した女子の実話。
失職した後、何がおこったか。さらに、職を失ったことにより失うものはなんだったのか。
そして、そこから脱出するために、どんな経緯をたどることになるのかという経験談を、読みやすく紹介している。
社会的扶助をうけるようになる経緯や、その方のかかえる様々な状況は異なるが、女子の貧困が社会問題としてとりあげられるいま、同様な境遇にある失職女子が、極端な無理をせずに生活再建を目指すときに参考になる一冊だと思う。
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明日は我が身。
幸い職に就いているし実家も頼れる状況だけどこの先がどうなるかなんてわからない。
何より辛いと感じたのが「誰にも頼れない」切羽詰まる感じが辛い。貧困と貧乏は違う。
「人間関係の溜め」は本当に大事だと思う。
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わりと文章がおもしろくて、てきとうに流し読みであっさりと読めます。
あ~こんな人いるな~と。自分語りは饒舌でいいんだけど、どうしようもない人だなとー。