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この本を読んで、わたしが好きな物語は変愛について描かれたものだったんだ! と気付かされた。そう、変な愛。偏っていて、普通ではない、変態な、風変わりな愛について描かれたものだったんだ、と。
村田沙耶香さんのトリプルは彼女の著書の殺人出産に収録されてて読んだばかりでしたが、他のものは、読んだことないものばかり、知らない作家さんも多くて、本当に楽しく読ませてもらった。多和田葉子さんの作品とか好きだなーと思ったり。川上さんはさすが、彼女のヘンテコ話し大好き。シリーズ化期待してます。
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当初タイトルを「恋愛」と読み違えていましたが、これはもう紛うかたなき「変愛」なのです。
ここ1ヶ月は体調不良のためかなり流し読み気味で、しかも読み終わったのがすでにひとつき前のため個々の作品の印象は川上弘美さんの作品以外ほとんど残っていないのが事実。ただしこの本でこれまで知らなかった作家さんを知ることができたのは良かった。
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『群像』の特集の書籍化。まさか書籍化されるとは思っていなかったので驚いた。
著者はベテランから若手まで多彩だが、共通しているのは『現実と作中の視点をずらした小説を多く執筆している』という作風では? とくにその傾向が強いのは川上弘美、多和田葉子、吉田篤弘だと思うが、木下古栗、深掘骨も『現実からのずらし具合』が凄い。
こうやって1冊に纏まったものを読んでみると、作風は多彩ながら、『変愛』というテーマ以外にも、一定の共通点を持っているように感じられた。
単著を買ってみたいと思えるのは木下古栗と深掘骨だが、深掘骨は10年ほど前にハヤカワから単行本を出したっきりらしい……。
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(2014/11/5読了)
海外の作家さんによる「変愛小説集」なるものを翻訳された岸本佐知子さんのたっての希望で書かれた日本の小説集です。
川上さんと星野さんのお名前を見つけて、変な愛って何かなともに思ったので借りてみました。
変わった性愛の描写や、ホラーっぽさ、グロテスクさ、これもファンタジーと呼んでいいのか違う世界のもの、どの話も感情移入ができなくて、楽しむことはできませんできた。
岸本さんは、飛び上がらんばかりの嬉しさのようだけど、こういう本を愛する岸本さんも、変愛な方なんだなぁと思いました。
(内容)
『変愛小説集』待望の日本作家編が誕生!豪華執筆陣による奇妙で純粋で狂おしい愛、12編。
(目次)
形見(川上弘美)/韋駄天どこまでも(多和田葉子)/藁の夫(本谷有希子)/トリプル(村田沙耶香)/ほくろ毛(吉田知子)/逆毛のトメ(深堀骨)/天使たちの野合(木下古栗)/カウンターイルミネーション(安藤桃子)/梯子の上から世界は何度だって生まれ変わる(吉田篤弘)/男鹿(小池昌代)/クエルボ(星野智幸)/ニューヨーク、ニューヨーク(津島佑子)
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12の短篇だが、どれも意表をついた感じのものばかりだ.「逆毛のトメ」では、オークションでの独特の言い回しが面白い.最後の「ニューヨーク、ニューヨーク」は男が元妻を回想する話だが、なぜか悲しいのはどうして? どれも楽しめる.
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たしか、図書館で検索したときに、このずらずら並ぶ著者の誰かの名前が引っかかったのだと思うが、誰の名前を検索したのだったか、読み終わってみると全く思い出せない。
編者の岸本佐知子は翻訳家でもあるが、『ねにもつタイプ』とか『気になる部分』という変なエッセイも書いている。このエッセイ類で私はかなり笑ったおぼえがある。お花畑の河童が…
その変なエッセイを書く岸本佐知子が、あるとき、翻訳アンソロジー『変愛小説集』を編んだ。「恋」ではなくて「変」である。「偏」ではなくて「変」である。誤字ではない。
カバー装画は、MARUUさんという人。(遠目には、色使いと雰囲気で、勝手に山本容子かと思っていたら違った。) 「変」によく合っている。
巻頭は川上弘美。王道のような気もする。私はこの人の変な系統の「おはなし」もスキなので堪能した。以下、ぞくぞくと、変な話が続く。
初めて名前を知った書き手や、初めて読んだ作家も。印象に残ったのは「トリプル」(村田沙耶香)と、「逆毛の留め」(深堀骨)。
村田沙耶香は、『殺人出産』という、なんかコワそうなタイトルの本がある(これに「トリプル」も収録されているらしい)。「トリプル」がおもしろかったので、タイトルにビビらずに、こんど読んでみようと思う。深堀骨[ふかぼり・ほね]には、『アマチャ・ズルチャ』というSF作品があるそうだ。
アンソロジーは出会い系でもあるので、おーっと思った人の新しい本を読んでみたい。そして、この日本作家編の本家、翻訳アンソロジーのほうの『変愛小説集』も読んでみようと思う。
(1/13了)
※日本作家編の収録作品
「形見」(川上弘美)
「韋駄天どこまでも」(多和田葉子)
「藁の夫」(本谷有希子)
「トリプル」(村田沙耶香)
「ほくろ毛」(吉田知子)
「逆毛のトメ」(深堀骨)
「天使たちの野合」(木下古栗)
「カウンターイルミネーション」(安藤桃子)
「梯子の上から世界は何度だって生まれ変わる」(吉田篤弘)
「男鹿」(小池昌代)
「クエルボ」(星野智幸)
「ニューヨーク、ニューヨーク」(津島佑子)
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これは嬉しいアンソロジー!
ただ、変愛、の意識が強い感じ。意図を持って書かれたが故に純な変愛から離れてしまったものを含むような。日本人編も、作品ありきの編が良かったかな。
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一冊の本を読むということは、筋書きを追いかけたり奇想天外な展開にふらふらしたりすることを楽しむよりも、実は言葉の抑揚や拍子、その裏にある作家の息遣いを、むしろ、楽しんでいるものなのだなと、私花集を読むと気付かされる。この本は、翻訳家が自らの選んだ作家に短篇を書き下ろしてもらうという、なんとも贅沢な企画の本。それだけ聞いても充分わくわくするが、更に、翻訳家も選ばれた作家の多くも、普段から好んで手に取る本の作り手でもあるので、すいすいと読むみ進むかと思いきや、短篇毎の調子の違いにたちまちこちらの息があがり、息を整えることを強制されるようにして、ぽつぽつと一つひとつの短篇毎に小休止を置かざるを得ない。面白いものだなと感じる。
それにしても、いずれの作品も短い文章の中で随分と変わったことが起きる。その変節度は何れも甲乙付けがたいけれど、その曲線のしなやかさには差がある。数学的なメタファーで例えれば、二階微分可能な滑らかな関数がある一方で、微分不可な極限点を持つ関数もある。個人的にはどこまでも滑らかであるにもかかわらず、いつの間にかとんでもない方向に導かれるような話の展開に惹かれるが、たまにはがつんと衝撃を受けるのもまたよい。
もちろんそうは言っても好きな作家の文章は、その言葉の連なりの滑らかさや句読点の作り出す拍子に乗せられて、知らず知らずのうちに心地好くなるのも事実。改めて蛇を踏んだり、男の靴に足を入れたり、存在しない子どもに代わって探偵をしたりする作家たちのことが気に入っているのだなとも自覚する。そして、何故ここに人形の中に入ってチェスをする少年の作家がいないのだろうかとか、耳の中がぶんぶんするような名前の作家が含まれていないのかななどと思ったりもする。究極的にこの本は、岸本佐知子という翻訳家の価値観に対するリトマス試験紙のようなものなのかも知れない。
多分、試験紙が赤くなろうと青くなろうとどちらでも構わない、と一風変わった作家の作品ばかり翻訳するこの編者は考えているのだろう。色が変わらないのは困るのだ、と。出来れば、赤くなったり青くなったりして欲しいのだ、と。編者の目論見通り、一篇毎に大きく身体が揺さぶられるような感覚が、読み終わってもしばらく振り払えない読書となる。
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翻訳版が大変面白かったので、期待して読んだけど、さほどでもなかった。
翻訳版は、沢山の作品の中から岸本佐知子がセレクトしたものだけど、こっちは「書き下ろしてください」と作家にお願いしたわけだから、出来上がった作品がいまいちでも載せないわけにはいかないもんね。だからクオリティが落ちるのは当然かもしれない。
だったら既に発表された作品の中から岸本佐知子がセレクトすれば良いのだろうけど、著作権とか色々難しいのでしょう。
安藤桃子は下手。「変愛」で言えば本谷有希子や星野智幸が良かった。
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岸本佐知子が選んだ日本の作家による書き下ろし。
川上弘美はやっぱこういう、水墨画みたいなアワアワした中の怖さ、うまいなーと思った。
漢字が本の中で蠢き踊り出す多和田葉子、藁の夫とのセレブ?な暮らしの本谷有希子、辺りが面白かった。革靴の話の小池昌代も、初めて読んだけど色気があって素敵。脚って映像的にも綺麗な色気というか、大人という感じ。
最後に?‼︎てなる話もいいけど、突っ込み不在で不穏な空気が渦を巻くようなタイプもいいな。
あと装丁画が内容にあってて素敵。MARUUという作家さん。
前後の岸本佐知子による文章もやっぱり好きだなあ
「これ全部訳してぇぇぇ!」
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愛はどこに?
アンソロジーは好きでよく読むんだけど、読みたくない人のも読まなくちゃいけないから大変。
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どこが愛?と思ったのもあるが面白い。深堀骨の作品が読みたくなってアマゾンで検索したが意外と高くて保留。
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読んでる時はパンチ力がないなあ、と感じていたが、読後、それぞれの持ち味を反芻してみると、いやいやどうしてくせものばかりです。最初の川上弘美さんが印象的だったな。村田沙耶香のトリプルは別の場所で既読しており損をした気分。
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「変わった愛」をテーマにしたアンソロジー。
木下古栗「天使たちの野合」収録。
飲み会がはじまる前、駅前広場で女性に声をかけられる。人違いだったようだが、その後もそこで誰かを待っているのが居酒屋からも見える。遅れてきた友人に様子を探りに行かせるが、突然頭が膨らんで破裂する。
ほかに印象的だったのは、
生け花教室で知り合った東田一子と束田十子が大地震から非難する、多和田葉子「韋駄天どこまでも」
(漢字を分解した言葉遊びのような文章や、人が字になって交わるシーンなど)
藁でできた夫との幸せな暮らしのなか、ふとした瞬間にその夫の中身がこぼれだす、木谷有希子「藁の夫」
未開部族の集落での恐ろしい儀式の体験が身体に焼きついてしまう、安藤桃子「カウンターイルミネーション」
いつも足に合わない靴を履く女性がひとりのシューフィッターと出会う、小池昌代「男鹿」
別れた妻の死をきっかけに会った中学生の中学生の息子から妻の話を聞き、それまで知らなかった一面を垣間見る、津島佑子「ニューヨーク・ニューヨーク」
など。
(評価は木下作品について)
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どの作品も普段の日常からしたら余りにも「変」な状況や設定や主人公達で描かれている。そこに潜む様々な「愛」のかたちに触れるとき、読み手の想像力はその「変愛」を享受してーーここにも編者が望んだと思える愛があるーー、その愛の純度の高さに驚嘆するだろう。彩り豊かすぎる12編が単行本版では収録されていて、文庫版はどんな理由だか知りたくもないが1編収録を見送るという愚かしいほどの編まれ方がされているので、絶対に単行本版で読むことをオススメする。