紙の本
おあいとさいかく、父娘のつつがないお話
2016/02/12 01:31
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投稿者:szk - この投稿者のレビュー一覧を見る
自分勝手で奔放で天才でそして何より娘を愛してやまない父親の話再び。昨日は音楽家で今日は戯作者。時代もそれぞれ。自分の思うことに一直線で、それが娘に疎まれているとわかっていても辞めらない上、なんとか愛を伝えようと必死。父親ってかわいいんだな。物語は中盤、おあいと淡路へ旅するあたりからぐっと濃くなってきた。おあいも大人になっていき父親へのわだかりも少しずつ溶けて行く。忙しい合間をぬって西鶴が盲いのおあいに文字を教える場面がいっち好き。そして弟へ認めた最初で最後の文。おらんださいかく、つつがなし。おあいも、ね。
電子書籍
浅井まかての西鶴
2015/09/30 09:32
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投稿者:こっこあこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
西鶴がこんな感じの人だったとは
知らなかった。
見栄っ張りで世話好きで。
好色物を書いたことを教科書で勉強した時は
「好色物なんて下品な小説家だ」
と思っていたけれど
本当に多彩な人で
俳諧師としても活躍するし、
『日本永代蔵』『世間胸算用』のような
経済の小説も書ける。
気前がいいからお金をどんどん使って
ツケが払えないこともあったようだ。
目の見えないおあいが
子供の時に養子に出されて別れた弟と
再会したときに弟から聞いた話を
読んだときは涙が出た。
ますます西鶴が好きになった。
それで『日本永代蔵』と『好色五代女』
を買ってみた。
私がきちんと読めるか心配だけれども。
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私生活がほとんど知られていないという西鶴をいきいきと描き尽くした手腕はみごと。
公儀への反骨は小気味良く、市井の人への人情味あふれるまなざしは暖かい。江戸中期の巨人の姿が娘おあいを通して完璧な上方言葉でつづられる。ユーモアに富むリズミカルな言葉の応酬にするする読み進められる。
同時代に生きた芭蕉に対する敵愾心も、どことなくおちゃめで憎めない。
おあいは盲目ゆえの差別を受けつつも、実は家事をやらせば適うものなし。そのスーパーウーマンぶりに胸がすく。
父に字を教わり、幼くして別れた弟にかな一行の手紙を送るくだりは、目頭が熱くなった。
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失礼ながら…なんの前知識もなく…。
下世話な物語を書いて人気があった作家だと思ってました。
娘おあいからみた、俳諧師であり草紙作家の井原西鶴の物語。
自分勝手にふるまい、家をでたら何日も帰らず、
母が息を引き取るときも、どこにいたかわからない。
そんなおあいの冷ややかな目線から物語が始まります。
西鶴とおあいは対角線上にいる親子。
性格も行動もほぼ真逆状態。
目が不自由で、そのことに甘えることなく
厳しく母に育てられたおあいは、
何でも1人で出来るように努力を重ねていきます。
母が亡くなり、弟たちは養子に出され、
気が付けば父との2人きりの生活。
でも賑やかなことが好きな西鶴の周りには、
いつでも囲む人々がいて、
おあいもその人々に囲まれ接していくうちに
父の真意がわかってきて…。
おあいが西鶴に心を寄せていくのと同時進行で
私も西鶴から目が離せなくなっていきました。
自分が好きで、他人も好きで、人そのものをこよなく愛しているのが伝わってくる西鶴。
いろんな人と交わり語り、感じたことを物語に綴っていく。
泥臭くても、醜くても、ええのんちがいますか。
そっちの方が(人として)可愛げがあって好きやなぁと
温かなまなざしを私にも向けてもらえた一冊です。
いい親子でした。最後の方のおあいの父への言葉。
この本との別れが寂しくて、図書館のブックポストの前で
返却前にもう一度読み返しました。
やはり、まかてさんってすごい。
忙しない年末に、じんわり温かくなりました。
西鶴にも俄然興味がわいてきてます。
あれだけ溢れるように書いていた西鶴が少し筆をおいた後、
再び書けるようになった作品「世間胸算用」や
他の作品も少しずつ読んでみたいと思います。
「阿蘭陀」流は人間臭さ満載なんだろうなぁ。
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歴史上の有名人(?)当人に
スポットを当てるのではなく
その すぐそばに居た人に焦点を当てて
物語を進めていく
そこで語られる
数々の あれやこれや噺が
めっぽう 面白い
よくある
その人礼讃のお話でなく
その人を主人公にしていないからこそ
その人物が より その人物らしく
描かれている気がする
「先生のお庭番」も よかったけれど
もう 一つ上の満足感を得ました
いゃあ 次の作品が
今から 待ち遠しい
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俳諧師、草紙の作者として有名な井原西鶴の物語。
西鶴がどのようにして俳諧師の名を馳せていき、その後草紙の執筆に情熱を傾けるようになったのか。またその裏でなり振り構わない性格の西鶴に振り回される人々がいかに多くいたか。そんな奔放な父西鶴を疎ましく思っていたことなどが、盲目の娘おあいの視点から描かれています。
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井原西鶴の盲人の娘 おあい目線で
父親を見つめた
西鶴の人物像はもちろん あの時代の人情物語やつながりが
おもしろい
なにより 親子の最初はかたくなな気持ちがだんだん
ほどけて、
「おとうはんのおかげで、私はほんまおもしろかった}
は、気持ちがほっこりあったまった
最後、こういって幕を閉じたいもんだわ
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西鶴の俗なところが娘の視点からよく書けている。父親への気持ちが少しずつ変わっていくところなどが印象深かった。
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井原西鶴の一代記だが、ここですばらしいのは西鶴の娘の視点から描かれていることだ。
この娘は盲目という設定であり、世間を音、臭い、肌触り、味で捉える。
視覚を通さないが故に、その体験はより直接的、主観的となる。
亡母から譲り受けた着物は触感で柄を見分け、父親の帰宅の気配は誰よりも早く感じ取る。
この仕掛けにより、西鶴や周辺人物はより距離の近い、血の通った、実在感のある人物に描かれることになる。
作者はさらに同時代の松尾芭蕉、近松門左衛門、将軍綱吉との直接、間接の絡みを織り込み、時代の雰囲気を盛り上げる。
舞台となる元禄前後は江戸幕府開闢から約80年。もはや戦国の世の記憶は遠く、庶民文化が咲き乱れるのもむべなるかな。
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芸術家の家族は大変だなぁ。
娘を通して西鶴を描いた物語。
娘が成長することによって
見えてくる世界が広がり、
それに伴って、
西鶴のとらえ方や世界が
広がっていくのがおもしろい。
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盲目の娘おあいからみた父、西鶴の姿が活き活きと描かれていて、面白かったです。おあいの父に向ける厳しい眼は母への愛の裏返し。母に盲目でもきちんと生きて行けるよう厳しく仕込まれたおあいは、台所仕事も針仕事もこなせます。それがおあいの自信であり誇りでもあると思うのですが、父西鶴に自慢の種として吹聴されることが許せません。何も知らないくせに、と思うのでしょうね。ですが、おあいも成長し、他人から語られる父の姿を知っていくうちに、徐々に心を開いていきます。まかてさんの軽やかな筆致で、あっという間に読了でした。
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好色一代男の、奔放な生き様、好色五人女の様々な業。日本永代蔵の商売人の話。世間胸算用の貧乏人の話。西鶴の生涯は、如何なものだったのか。盲の娘がさぞ可愛いかったのだろう。
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井原西鶴を盲目の娘・おあいの視線から描いた話。
おあいが成長し、少しづつ世界が広がっていくにつれ
西鶴への見方・接し方が変わっていくところが、上手く描かれている。
が、それだけではちと物足りなかったような。。。
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父親の不器用な愛情を受けとめていくおあいの心情の変化が細やかに描かれていて、グイグイ読めた。淡々と読み進めていくうちにどんどん物語に引き込まれていき、最後の1ページを読んだときブワッと涙が。
最近なかなか身を入れて小説を読むことができなかったのだけど、読ませる本ってあるんだよなぁ。
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流れるような筆の運びで江戸の草草を書き綴った西鶴。大矢数はもとより、多くの好色物から世話物、またいささか教訓めいたものまでを、己の中から湧き出る言葉をすらすらと墨字にかえて面白おかしく哀惜を込めて書き記した人だと思っていた。
本作は、その西鶴を早くに亡くなった妻の代わりに支えている盲目の娘おあいを通して描いたものだ。取り巻き連との掛け合いや板元との駆け引きなど、なるほど名のある戯作者とは、こういう生活だったのだろうという日々の中から、ある時、筆で身を立てるということを真剣に模索し、言葉を紡ぐ苦しみに打ちひしがれる西鶴。それまでは父の愛を自分勝手なものとして疎ましくすら感じてきたおあいだったが、そんな父をやさしい気持ちで包み込むことができるようになった。
西鶴は書いたものを必ず声に出して推敲したとあるが、もし諸国ばなしの序を読み上げていたとしたら、一生嫁にもいかず、父のそばで家を取り仕切ってきたおあいは何と思って聞いたのだろうか。学生時代、先生が「君らはもう大年増ですよ。」と笑いながら教えてくれた講義を思い出し、そんな風に考えてしまった。
「世間之広き事、国々を見めぐりて、はなしの種をもとめぬ。 …… 都の嵯峨に四十一迄、大振袖の女あり。是をおもふに、人ハばけもの世にない物ハなし。」