紙の本
これからの定番テキスト
2015/03/18 14:29
8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
今のミクロ経済学は、アメリカの経済学会でスタンダードとされているテキストが世界的に翻訳されていることもあって、ある程度共通理解がされているといってもいいが、アメリカのテキストの翻訳であれば、説明事例などが日本のことではないということもあって、読んでいても何か「他人事」感が伴ってしまいます。そうした中で、日本人によるスタンダードテキストが出されたこと、展開されている議論も単に入門レベルにとどまらず、政策議論に資するレベルのものになったいます。「経済学者」が語る経済政策でわかった気になるだけでなく、本書を読んでみて自分で考えてみる必要があるでしょう。
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http://www.nippyo.co.jp/book/6638.html
正誤情報
http://www.nippyo.co.jp/seigojoho/index.php?id=6638
日本大学の安藤至大准教授がTVで本書を推薦されていました
http://www.bs-j.co.jp/keizaikyoushitsu/95.html
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経済セミナーの連載を読んでいたので。判り易い講義には様々な努力と、話を膨らませる創造力も必要。憧れます。
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本書の冒頭で、問題解決を「事実解明的な問い」に答えること、「規範的な問い」に答
えること、の2つに分けることが紹介されています。
「事実解明的な問い」は、論理に従えば、正解が一つに定まる類の問いであり、その
ためのツールが「ミクロ経済学」です。
「ミクロ経済学」は、常識と思われる内容を、わざわざ難解なグラフや数式を用いて
まどろっこしく説明していると思われがちです。しかし、「常識」と思われる判断(本
書でいうところの「常識的判断」)は同じ前提から出発して、結果として逆の結論を導
く危険性があります。そうした極めて曖昧な判断基準に基づくのではなく、客観的に判
断できるツールとして、本書では数理モデルを多用しています。
経済学の入門書では、「数式を使わず、平易に日本語で解説」といった類の本ではあ
りません。微分の知識は当然必要であり、大学数学で習うようなラグランジェ未定乗数
法など、妥協をゆるさず、余すことなく数式が展開されます。かなりハードで、途中か
ら数式を読み飛ばしたくなる衝動に駆られます。
しかしながら、本書のモットーの一つとして「ストロボ写真を経済学にも」が掲げら
れています。放物線を描いて飛ぶボールのストロボ写真が、物理学における落体の法則
を説明しているように、実際の経済データにたいし、数式モデルに適用して、政策を評
価できるまでに昇華させよう、という意図があります。各トピックで、現実に基づいた
モデルの説明が試みられています。ミクロ経済学の試みが、机上の空論となってしまう
ことを避けています。
実際に、TPP問題を消費者余剰、生産者余剰というミクロ経済学のモデルで説明す
るにとどまらず、実際の農業従事者の所得データを用いて、社会全体の「富」が高まる
のは、どちらの選択肢であるかを客観的に説明しています。(その事実に対する「規範
的な問い」は読者に委ねられています)
さて、冒頭にミクロ経済学の役割は、「事実解明的な問い」に答えることだと記述し
ました。だとすると、「規範的な問い」にはどのように答えるべきなのでしょうか。こ
れは個々の価値判断に基づく内容であり、その考え方の礎はかつてベストセラーとなっ
た「これからの正義の話をしよう(マイケル・サンデル)」にも触れられているところ
です。
本書でも最後に「最後に、社会思想(イデオロギー)の話をしよう」として、社会科
学的な思考の重要性に触れています。
さて、本書を読み解いている間、ジョン・ナッシュ氏が不慮の事故で死亡したとの
ニュースが報じられました。ミクロ経済学の一分野となったゲーム理論の提唱者であり、
「ナッシュ均衡」のモデルは、経済学徒であれば誰しも耳にしたことなる概念です。
ちなみに、ナッシュ氏は経済学者ではなく、数学者です。現在のミクロ経済学は、数
学のみならず、心理学や行動科学などと学際的な統合を遂げ、人間社会の成り立ちをよ
りわかりやすく明快に説明できる学問として、発展を遂げつつあると考えられます。
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今年もノーベル経済学賞の発表が先日なされたが、今年の受賞項目は「契約理論」だった。契約理論はプリンシパル=エージェント理論くらいしか知らず、どのような理論かもっと知りたいなと思い、まずは中級ミクロ経済学の復習をと思い立ち本書を読んだ。
本書はなんといっても事例が多いことが特長である。従来のミクロ経済学のテキストは、無味乾燥な理論の羅列であり(しかし個人的には好きである)、どうも現実味がないという批判がなされる。しかしながら、本書はそういった批判を一周するものとなっており、説明されている理論を現実の事例に当てはめて説明しており、身をもって理論を学ぶことができる。また、本書はミクロ経済学を学んだことのない人でも中上級レベルまでを学ぶことのできる構成となっており(といいつつ実際は相当の気力と覚悟が必要だが)、それぞれわかりやすく説明されているため理解がしやすい。
自分自身、中級ミクロは学習済みであったため、本書は忘れかけているポイントをつまみながらざっと読んだわけだが(それでも内容が濃いため1週間くらいはかかった)、時間があるときにしっかりと熟読したいと思った。
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数年前に読了だが放置していた演習書『ミクロ経済学の技』をやるために再読。
いや素晴らしいが『ミクロ経済学の技』の方がなかなか解けない。
繰り返すしかないか
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老人医療補助制度の問題点。
補助金より年金を増やしたほうが総効用は上がる。
市場メカニズムで決まる価格をゆがめると、パイは小さくなる。
効率性と公平性。韓国と北朝鮮。
制度的知識と理論的理解。
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基本的なミクロ経済学の概念をきちんと数式とグラフの意味を説明しながら解説した本。変数を変えることでグラフが変わることが現実に意味することまで解説してくれるので、とても親切。
高校程度の微積分でいけるそうなのだけど、そちらを頑張って解読する根気は無かった。それでも楽しめました。
・原油価格が高騰した時に消費者への価格転嫁は可能か。
「激しい競争にさらされている中小企業は力が弱く、価格転嫁ができずに困っている」と言われれば、「そんなの当たり前だ」と思えるし、また「激しい競争にさらされている中小企業は余力がほとんどなく、小売価格に転嫁せざるを得ない」と言われればやはり「そんなの当たり前だ」と思えてしまうのではないでしょうか(実際には前者がマスコミ多数の意見で後者は読売北海道版の少数意見)。
常識的議論が100あったら、そのうち90はどこかおかしいものと思って差し支えない。
・重要なのは効用の大小であり、効用の絶対的な大きさには意味がありません。
u(ウーロン茶)=2,
u(ビール)=1
であると経済学者がいうとき、これが意味するのは、ウーロン茶の満足度はビールの満足度の2倍であるということではなく、単にウーロン茶のほうがビールより好きだという事なのです。
別に
u(ウーロン茶)=1000000000,
u(ビール)=1
としてもよいわけです。注意してほしいのは、「満足度の大きさ」は、温度や物価水準のように客観的に計ることは不可能だが、「どちらが好きか」という選好は調べることができるということです(ウーロン茶とビールのどちらが好きか聞けばよい。あるいは、実際に二つのうちどちらを選ぶかを見ればよい)。このように、効用を、(原理的には測定できる)人々の好みを表す便利な工夫とみなす考えを「序数的効用理論」といい、現代の経済学はこの考えに従っています。
これに対し、19世紀の経済学では効用を「満足の大きさ」と考え、その大小関係だけでなく本来は測定できないはずの絶対的な大きさにも意味があると考えていました。こうした、今では過去のものとなった考え方を「基数的効用理論」といいます。
・現在、コメの輸入には1kgあたり341円の関税がかかっています。これは国内価格(241円程度)のはるか上なので、たとえコメの輸出価格がゼロ円であってもまったく輸入が起こらない水準になっています。
…私のアメリカ滞在経験からすると、現地の日本人が買うコメで有名なのは「錦」と「田牧米」でしょう。どちらも日本のコメと同じ短粒米です。錦は値段は安いのですが、日本米に近い味がするのは田牧米のほうです。留学生が食べるのが錦、駐在員の奥さんが買うのが田牧米という感じです。また、これよりも安い短粒米を食べている日本人は私の周りにはいませんでした。そこで、現在のこれらのコメの値段を日本のスーパーでよく売っているコメと比較すると、おおむねつぎのようになります(1kgあたり)。
錦価格/日本の安めのコメ価格=237円/400円=59%
田牧米価格/日本の安めのコメ価格=349円/400円=87%
田牧米価格/日本の普通のコメ価格=349円/500円=70%
農林水産省は、TPPの影響を試算した資料で、中国短粒米の価格を根拠に「自由化するとコメ価格は1/4になる」としていますが、これは価格の下落を過大に見積もっているように思われます。
・一人だけが意思決定する場合には、選択の幅は広いほどよいのに対し、複数の主体(人・企業・政府など)が、相手の出方をうかがいながら行動する場合には、選択の幅を狭め、自分にとって最適な行動がとれないようにする(これを、「コミットする」という)と、かえって得をすることがある。
→囚人のジレンマでは相手が黙っていても自白しても、自分が自白すると得(刑期が短くなる)。そのため、両者が黙っていると全体としては一番利得が大きいのに個々でそれを選択できない(ナッシュ均衡)。その場合、自白すると後で組織に報復されるなど、自由を制限することでしか状況をコントロールできない。
・市場に(政策変更や技術革新などで)変化が起こるとき、得をする人が損をする人に補償をすることで全員が得をすることができるなら、そのような補償が“実際に行われなくても”、その変化を認めるべきである(補償原理、ヒックスの楽観とも)。
・自分の職業が何であっても、3世代先(ひ孫)の台になると職業の分布はほぼ同じ、つまり、社会全体の職業分布にほぼ等しい。したがって、社会全体のパイを大きくする市場の恩恵は、現在の職業がどんな人の子孫にも等しく行き渡る可能性がある。
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伝統的な(一般均衡分析に至るまでの)ミクロ経済学と新しいミクロ経済学の領域(ゲーム理論や情報の経済学)をバランスよく融合した良書。邦書にはあまり見られないある種の「冗長さ」も良い。レベル的には入門レベルをやや超える程度なので、ミクロ経済学の入門書を一通り終えた後で取り組むと、理解が早まると思われる。社会人にもお薦め。
なお、補論D 「厚生経済学の第2基本定理の証明」は、凝縮された経済学のエッセンスを(証明を通じて)分かり易く記述しており、非常に参考になった。
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他の類書とは視点が違う。
曰く「道具(包丁)ではなく料理の本」
ゲーム理論を上から目線ではなく書いているものに初めて出会った気がする。
これまでリファレンスとしてずっと伊藤元重先生のを手元に置いていたが、常備はこれと交代にしようと思う。ちょうど伊藤先生も東大を退官されたことだし。でも、この著者も東大か。やはり経済学は東大ということなのかな。
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机上の学問とされる傾向にある経済学を平易に説明し、社会をよみとく視座を与えてくれる名著。
数学的説明も簡易。ただ、簡易すぎて自力で問題を解けるようにはならない。
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圧倒的に面白くて分かりやすいミクロ経済学の本でした!!
入門のミクロ経済学の本では、難しくならないために、本来重要であるはずの仮定や数学による証明等を避けているのが多いです。この本では、それらを避けないでしっかり説明していて、そのうえで初学者にとって分かりやすくなっていると思いました。初学者が難しいと感じる、または疑問に感じるであろうところを、あますことなく会話形式で丁寧に解説してくれているからだと思います。
また、理論だけでなく、それが現実社会でどう役に立つかを説明してくれるので、楽しみながら学べました。
この本を読めば、中級程度のミクロ経済学を学べます。はじめて学ぶ人、初級を終えた人に、オススメです。
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ミクロ経済理論を勉強する上ではかなりわかりやすいと思う。説明も細かく、数式⇔現実の状況といった解釈がよくなされている。
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私には理解できなかった。行き帰りの電車で理解するのは無理があった。
ただ、なんとしても読者に理解させようとあの手この手で説明してくれる筆者の熱意を強く感じた。
必要な時がきたら再挑戦したい。
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経済学を机上の空論としてでなく,社会にどのようにして活用することができるのかまで,具体例とともに記載されており,現実味を持って経済学を学ぶことができる良書.
時折数学的な処理(とは言っても高校数学Ⅱレベル)が出てくるが,それを避けずに利用しているのがさらに良い.
巷では,どうにかして数学的処理を避けることでわかりやすく表現しようとして,逆に理解し辛い説明になっている本が多いが,この本はそういったこともなく,とてもスッキリと理解しやすく,良い.
また,後半はゲーム理論も交え,より現実的な市場の分析なども具体的に行っており,現実世界に潜む経済学をより身近に感じることが出来,非常に良い.
筆者は TPP の話題などにも触れているが,私も TPP に関しては消費者側の立場の発言が無さ過ぎるという点に,非常に同感である.
一消費者もこれからは経済学に対するリテラシー(エコノミックリテラシー)を付けることが,グローバル化していくこの世の中で生きていく上でより重要になっていくと思っている.
経済学を学ぶことは,経済学者になるための手段ではなく,より多くの人間が幸福になるための,ひとつの手段なのだ.