紙の本
次作を早くも楽しみです
2015/01/29 14:38
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投稿者:黒猫 - この投稿者のレビュー一覧を見る
息子を火事で亡くしたトラウマにどっぷり浸かりつつ、別れた妻には未練たらたらと駄目男感ばかりが目立って、最初は読み進めるのが忍耐と葛藤を覚えた。
しかし、ある残虐な事件が起きてその事件を記者として関わることになってから、変貌ふりが凄かった。
水を得た魚のように、仕事はコツコツと地味ながら、視点がスタートから違っていて、冴え渡る勘とその明晰な頭脳は、天才がいるとしたらこういうものだと読者に思わせずにはおれないもので、ヘニングのもたらした情報は事件解決の進展に進ませることとなったが、犯人もまた最後まで正体が判明せず、読者を全く飽きさせず読み進ませる。
ヘニングと彼の持つ情報屋とのやり取りも面白く、またヘニングとは警察学校で一時的同期だったきりで今回事件で再会することになった女たらしの警部だが、今後は友情発展の付き合いとなっていくかも楽しみだ。
何故ヘニングを警察関係者ではなく記者に作者がしたのか、読んでいてちょっぴり残念に思ったが(警察官になろうとしたがなれなかった理由も本書には書かれているが)、組織の中には才能は相反するからやはりこれで良かったのだろうと納得した。
六部作構成で書かれたとのことで、本書は息子の死に初めて向き合い、死の究明を決意した所で終わっているが、早くも次作が楽しみである。
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舞台はノルウェー
主人公は息子を事故で亡くしたメディア記者
死体の状況は異常で登場人物があっちこっちから出てきて、エンディングまで引っ張り続けてあっさり終わる
普通の外国小説
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公園のテントの中で見つかった女子学生の凄惨な死体。
火事で息子を失い、自らも重傷を負った事件記者ヘニングは仕事に復帰し取材に奔走する。
短い章立てで展開が早い。
現在進行形が多用されている地文は気になるほどではなかったけれど、その効果も感じられなかった。
570頁を超える「はじめまして」と言うところか。
評価は次作以降に持ち越し。
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北欧ながら珍しくノルウェーが舞台。ただ他の北欧ものと同じく、映画や旅行ブックのイメージとは違ってなんともダークな雰囲気にはいつも驚かされる。憧れてるんだけど・・・。
ストーリーは記者が主人公とはいえ、事件の謎を追う正統派ハードボイルト調。そこに主人公の再生が横糸として描かれる。これまた北欧の他の小説と同じく犯行(の描写)が残酷なのにはいささか辟易させられることと、登場人物の名前が難しく覚えにくいのは残念(しっかり一覧はつけてくれてるが)。文章回しがすこし癖があって、話が見えにくい所もあるし、オチがスッキリしないのも残念。これがデビュー作だそうで、そういう意味では良くかけているし、次回作(の内容)を暗示するラストは面白そうだけど。
次の作品で真価が問われるかな?
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ノルウェーの作家のデビュー作。もともとは新聞社に勤めるジャーナリストだったそうだ。物語もオンライン新聞社が舞台。オンライン新聞ってよく知らないけど、神新聞よりはスピードとか目玉記事が必要とされるのだろう。ときには無茶な取材も行う主人公。「瘢痕」とは主人公の傷のことだ。次作につながるラストだったので、待ち遠しい。
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西欧ミステリ地味に読んでるんだが『瘢痕』が読み辛い。事件の奇抜さから派生する事案がよく解らない。これが自分がノルウェーの背景を知らなさすぎるからなのか、単純に主人公の記者に感情移入がしにくいからか…火事で子供を失い自分も顔に瘢痕を負っている事に根ざすものが伝わってこないと言うか。
ラストで、彼が子供を失った後から精神が停止していた、と言う描写があり、ここから瘢痕を負った事から来る彼の葛藤はこれ以降の作品に描かれて行くのだろうが…ノルウェーの作品なのだが、日本と同じ様に「アメリカかぶれ」と言うか、アメリカの文化が普通に入って来ている国の様で、その点で「北欧」の作品を読み、北欧の国の文化に触れる、と言う鮮度があまり感じられなかった。
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「トマス・エンゲル」の長篇ミステリー作品『瘢痕(はんこん)(原題:Skinndod 、英題:Burned)』を読みました。
「カリン・フォッスム」に続きノルウェー作家の作品… 北欧ミステリが続いています。
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【北欧の新星登場】
公園にぽつんと張られた白いテント。
昨日まではそこに無かったテントの中に、まさかあんなものが隠されていたとは――酸鼻をきわめる女子学生殺害事件の発生に、ネット新聞社は色めきたった。
どこよりも先に特ダネ記事をモノにするんだ!
火災で一人息子を亡くし、心と体に虚無を抱えたまま復帰したばかりの事件記者「ヘニング」も取材に奔走するが……はたして事件の真相を暴けるか?
本書は、本国ノルウェーはもとより英米などでも絶賛され、シリーズ化されています。
また映画化も進んでおり、著者「エンゲル」は、いま北欧でもっとも注目を集めている作家の一人です。
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個人的にはノルウェー作家の第二弾作品… 600ページ近い大作でした。
北欧ミステリではありがちなのですが、本作品でも殺害や暴行シーンが残虐なので、目で文字を追いつつも、頭ではあまり考えないようにしました… そのまま映像化されると耐えられないかも、、、
殺害や暴行シーンは苦手な部類でしたが、内容はなかなか愉しめましたよ… 現在形で物語が展開するので理解しやすかったし、ほぼ主人公の「ヘニング・ユール」の視点で語られているので「ヘニング」に感情移入しながら読めましたね。
ネット新聞「123ニュース」の事件記者「ヘニング」は、自宅の火災で幼いひとり息子の「ヨナス」を失い心に深い傷を負い、自らも全身にひどい火傷を負い顔には瘢痕が残っている、、、
また、その事件が原因で妻「ノラ」と離婚し、傷の治療とリハビリのために休職を余儀なくされる… 2年間の休職期間を経て職場に復帰した初日に、センセーショナルな殺人事件が発生し、「ノラ」の現在の恋人「イヴェール・グンデルセン」を取材パートナーとして仕事を再開することになる。
その事件は、オスロのエーケベルグ公園内に張られていた大きなテントの中で、若い女性の死体が発見されたという事件… 被害者はオスロの芸術系カレッジの学生「ヘンリエッテ・ハーゲルップ」で、死体は血にまみれで、半ば地中に埋められたうえに、片手が手首のところで切断されており、石をぶつけて処刑された痕跡があった、、、
「ヘンリエッテ」の恋人でパキスタン人移民の「マームード・マーホニ」が容疑者として浮上し、警察は身柄を拘束して取り調べを始める… 「ヘニング」は、「ヘンリエッテ」が通っていたカレッジを取材するうちに「ヘンリエッテ」の友人「アネッテ・スコップム」と出会い、二人は「ヘンリエッテ」がシナリオ執筆、「アネッテ」が監督として、映画作品を撮影することを予定していたことを知るとともに、「アネッテ」が何かを恐れていると感じ、そのシナリオが事件と関係しているのではと推理する。
その後、「ヘニング」は、「マームード」が兄弟で居住してい��住まいを訪問し、弟の「タリク・マーホニ」にインタビュー取材を行っていたところ、突然、正体不明の男が侵入してきて「タリク」を銃殺… 犯人を目撃した「ヘニング」も命を狙われる、、、
そんな中、「ヘニング」は警察内部の情報源「6ティエルメス7」から捜査情報を得ながら独自に調査を進め真相に近付いて行きます… 「ヘンリエッテ」の個人指導教官「ユングヴェ・フォルヴィーク」に接近した「ヘニング」は「ユングヴェ」の息子「ステファン」が自室で自殺しており、机の上には「ヘンリエッテ」が執筆したシナリオが残されているのを発見、そして「ユングヴェ」の妻「イングヴィル」が、「ユングヴェ」を「ヘンリエッテ」と同じように講演のテントの中で半身を地中に埋め殺そうとしているところに遭遇する。
そこで、「ヘニング」は「ヘンリエッテ」を殺した犯人と、その動機を知ることになります、、、
そこへ「アネッテ」が現れ、事件は思わぬ方向へ… そして、「アネッテ」の不可解な行動や、行動の変化に違和感を覚えた「ヘニング」は、そこから事件の全体像と、その黒幕を知る(推理する)ことになります。
自分の手は汚さず、周囲の者を使って犯罪を犯すなんて… 許せないですねぇ、、、
でも、犯人の動機に関する説明や動機付けが弱く、こんな動機でこれほどの犯罪を犯すとはあまり思えませんでした… その点は残念でしたね。
火傷の影響でまだ身体が不自由にも関わらず、積極的に現場に出向き、警察とも協力(情報交換?)しながら、事件を解決しようとする「ヘニング」の行動に気持ちを重ね合わせながら読めたので、600ページ近い大作でしたが、意外と早く読めました。
「ヘニング・ユール」を主人公にした小説は全6作のシリーズものになっているらしいんですよね… 翻訳されているのは本作のみ、、、
プロローグで、次作では「ヘニング」の自宅が火事になった原因を探るという興味深いテーマを扱うことが示唆されており、続きがとても気になります… 続篇も是非、翻訳して欲しいものです。
以下、主な登場人物です。
「ヘニング・ユール」
123ニュースの記者
「ヨナス」
ヘニングの息子
「ノラ・クレメッセン」
ヘニングの元妻。ヨナスの母親
「コーラ・イェルトラン」
123ニュースのニュース・エディター
「ハイディ・ヒュース」
123ニュースのニュース・エディター
「イヴェール・グンデルセン」
123ニュースの記者
「ストゥーレ・シープルー」
123ニュースの編集長
「ヘンリエッテ・ハーゲルップ」
女子学生。事件の被害者
「マームード・マーホニ」
ヘンリエッテのボーイフレンド
「タリク・マーホニ」
マームードの弟
「アネッテ・スコップム」
ヘンリエッテの友人
「ユングヴェ・フォルヴィーク」
ヘンリエッテの個人指導教官
「ヘニング・エーノクセン」
映画プロデューサー
「トゥルルス・レイールヴォーグ」
映画プロデューサー
「ザヒールウッラー・ハッサン・ミントローザ」
洗車場のオーナー
「ヤセル・シャー」
洗車場の従業員
「オマール・ラビア・ラシド」
タクシー会社の経営者
「グンナル・ゴーマ」
ヘニングの隣人
「ビャーネ・ブルーゲラン」
警部
「エラ・サンラン」
巡査
「6ティエルメス7」
情報源