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紙の本
夢と現実にダイヴ
2002/03/21 21:59
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:もくれん - この投稿者のレビュー一覧を見る
千葉敦子は天才的なサイコセラピスト。PT機器という、患者の夢をモニターするものを使って日々治療にいそしんでいた。
彼女はまた、それを使って患者の夢の中に入りこむ事も出来る稀有な才能を持っていた。
そんな彼女にはもう一つの名前があった。それが「パプリカ」。
医師としての治療ではない、内密なセラピーの時に使うコードネームである。
「パプリカ」として何人もの患者を癒していくうちに、PT機器の発明者である時田の新たなる発明品によって起こる事件に巻き込まれていき…
前半はまさにジェットコースター。一気に読みましょう。
とても興奮する、傑作エンターテイメントSFです。
紙の本
夢と幻想の間のトリップ
2007/01/27 13:30
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:祐樹一依 - この投稿者のレビュー一覧を見る
現実と夢の融合、という素材は、割とそこかしこに溢れているものだったりします。夢は現実の象徴、現実は夢の延長戦、そんな描かれ方をする物語の一端は、人間の深層心理を描こうとする試みと共に、意外に誤謬を伴わない想像の産物として、物語の中に組み込もうとするときには、書きにくいものではない。けれども本作のように、全くもって、現実と夢が言葉通り「融合」してしまう様を描いた物語は、そうそう見つからないのでは、と思われます。今まさに進行している「物語」が、夢の中での出来事なのか、それとも夢を抜け出した現実でのことなのか、それとも「これは現実なのだ」と自覚している明晰夢の中での夢想に過ぎないのか…、一種のトリップ感は物凄いものがあって、その世界観はファンタジーに限りなく近いSF。
無論、そう表現してみたものの、本作がSFであるのかファンタジーであるのか、という境界線は、非常に曖昧であると言えます。この物語での主要アイテム「DCミニ」は、精神治療を施そうとする患者の夢の中に治療者が潜り込み、患者の内面から直に治癒を試みる、というもので、如何にもな精神物理学に則った科学的機器の登場により、読者は現実感を損なうギリギリの位置で物語を読み進めることが出来る。しかしその機器の効力が使用者の意識を媒介して増大し、夢が現実に作用するに至り、読者は混乱を排除しきれなくなる。現実には存在しないはずの物質、人物、動物、といったものが無意識の夢から抜け出して現実を侵し始めるとき、それは果たして「現実に存在するもの」であると呼んでいいものかどうか、途惑わずにはいられないのです。そもそも混沌が基本的なスタイルである「夢」を、カオスのまま描き切る手腕は見事としか言いようがありません。トリップ、と称したくなる本作の感覚は、そういったところからくるもの。筒井氏の無駄な間を持たせない文章と絡み合い、冒頭から終盤まで間の読めぬ展開(「先の読めぬ」ではなく)が繰り広げられます。
(初出:CANARYCAGE)