投稿元:
レビューを見る
[末端よりの報告]学園闘争に従事し、権力との対決の果てに革命を夢見た若者は、いかにして連合赤軍に合流し、雪山での陰惨な「同士殺し」に加担することになったのか......。日本の現代史の一ページである赤軍派、そして連合赤軍の動きを、「一兵士」という立場で参画し続けた著者が、自らの行動を振り返り、当時の様子を生々しく記した作品です。著者は、雪山越えの逃避行の末、軽井沢駅で逮捕された後、長年にわたる拘留生活の中で本書を執筆した植垣康博。
完全に閉じ込められた「あちら側」の世界の話を、「こちら側」の世界の言語で一貫して書き残しているところに、本書を読む第一の価値があるのではないかと思います。時代も、思想背景も異なり、今ではその感触の一端すら知覚することが難しいであろう「あちら側」の話が、植垣氏の翻訳を通して非常に鮮明に伝わってきました。
「何故に同士殺しが起きたのだろう?」というのは関心を持つ誰しもがたどり着く疑問だと思うのですが、その一つの理由として、下記の引用に記すとおり、メンバー内には何か「掛け違えた感覚」の 土壌があったことが読み取れます。「ではなぜそんな土壌が生まれたのか?」などの疑問がそこからは次から次へと湧いてくるのですが、本書を繰り返し読みながら、今日の私たちが避けなければならない陥穽を探すのも本書の読み方として良いのかもしれません。
〜午後、森氏の指示で、私は銃の掃除をした。その時、大槻さんが、土間で、元気なくボンヤリしていたので、私は、大槻さんに元気を出してもらおうと、大槻さんに銃口を向けて銃をかまえた。大槻さんは、例の怒ったような顔をし、私に指を向けて、「ナンセンス!」といった。私は、ニヤリと笑い、「ゴメン、ゴメン」と謝りながら、銃をはずしたが、久しぶりに、大槻さんの元気な顔を見る思いがした。〜
貴重な証言だと思います☆5つ