紙の本
人間に関わることで絶滅をまぬがれた生き物、イチョウ。
2015/06/03 16:07
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書にはイチョウについての多様な話が載っている。著者の専門である化石を中心とした、生物学的な進化や生態の話。化学物質の話。文学やデザイン、伝承などの文化的な話などなど。少し知っている人には、一つ一つは特に新しくない部分もあるかもしれない。しかしそこを外れると「ほう」と思うことがたくさんあるだろう。
地表のあちこちで繁茂していた時期もあったと考えられるのに、寒冷化などで激減した。一度イチョウが絶滅したヨーロッパには、日本を通して新に紹介されたという。少し前「イチョウの自然誌と文化史」(長田敏行 裳華房 2014)を読んだのだが、日本人が書くとどうなるか、という目線でこちらも読むと面白いと思う。実は両著者は執筆時にも連絡を取り合っていたと、本書の解説(日本語監修も長田である)で長田が書いている。内容は重複する部分もあるが補い合っていてそれぞれに面白かったことを記しておきたい。
アジアでの栽培歴史が長いイチョウであるので、日本文化についても「おや」と思われるような詳しさが見られて楽しかった。
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「生きた化石」といわれるイチョウは途方もない長寿と忍耐力をもった驚異の樹木だ。中国で絶滅しかかった時に日本に移入され、長崎の出島から欧州へと移出、復活した奇跡の文化史でもある。
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秋の風物詩の一つと言えば、イチョウ並木が浮かんでくる。枯葉を見ると「Autumn Leaves drift by the window♪」の歌が浮かんでくる。すっかりおなじみになったイチョウだが、もし人間がいなかったらこの世に存在していなかったかもしれない存在だったと知ったらびっくり。
読んでいて驚いたのが「イチョウの精子が泳いでいる」こと、さらにそれを発見したのが平瀬作五郎という日本人の学者だったことだ。1896年に発見とある。他の植物の受精方法と違っていたので、気づいたそうだ。
ヨーロッパに伝わるときにギンコー(ginkgo)という名前を、オランダ東インド会社の社員として勤めていたエンゲルベスト・ケンぺルが使った。このスペルに関しては諸説あり、どれが正解かは分からないようだ。
イチョウと言えば、ギンナンだ。ギンナンと言えば、ギンナン拾いが好きなあの落語家が浮かんでくる。ギンナンはあの独特なにおいを放ち、手でつまむとにおいがなかなか取れない。ギンナンに関する様々な食べ方が紹介されている。
イチョウにも長い歴史があり今日まで生き延びてきた。今度この本で読んだことを思い出しながら、イチョウの木を眺めてみるか。
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とても詳しく、広く深い本で良書だけれど、その分だけ読み応えがあって読了するのに時間が掛かる。
参考文献記述や付録だけで100頁近くあるので、推して察してほしい。
植物学の教科書としても優良だし、資料としても面白い。
著者はイギリス人だけど、日本のイチョウも多く取り上げられていて興味深いものになっている。
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いちょう誌。植物園のひとが何してるかもわかる。ともかく面白かった。古生物から民俗学まで。プラントハンターから生物多様性条約へ。縦横無尽。
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街路樹や寺社境内の樹木として、日常なじみの深い「いちょう」の大河ドラマ。
欧州とアジア、特に日本との関係について、長い歴史にわたって、細かい具体的な事実まで拾われていることに、訳書であるだけに驚いた。
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イチョウは2億年前に誕生し、数百万年前頃には絶滅寸前状態でわずかに中国南西部で自生していたものが日本に伝わり、18世紀には長崎出島からオランダ人を通じてヨーロッパに伝えられました。ヨーロッパに到達すると「生きている化石」として熱狂的な支持で拡がり、次には北米へそして世界中で親しまれていったのです。イチョウには雄株と雌株があること、種子植物としては例外的に精子を形成すること、その事実を日本人が発見したことなどを知りました。
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銀杏は2億年前から誕生し、世界中で自生していたらしい。しかし人類が誕生する頃にはアジアに一部を除き絶滅した。
そのことは以前漫画「家栽の人」でも、太古の昔銀杏は何種類か存在していたが、今現存するのは1種類だけだという話があったので知っていたが、その銀杏がいま世界中の街路樹で見られるのは、実は鎖国時代の日本の出島からヨーロッパに出回った話には驚いた。
銀杏の特異性や類似の品種は既に絶滅していることなどを説明している。
非常に興味を持ったのは、そういう研究をする際に化石が非常に役立つこと。
まあタイムマシーンがないんだから当たり前だけど、化石から様々な情報を読み解き、その当時の状況などを証明する事が出来る事はすごいことだと思った。
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帯文:”絶滅寸前だった「生きた化石」の奇跡的な生還と人間の物語!” ”第30回「国際生物学賞」受賞者の著者による最新著書!”
目次:まえがき、序文、第1部 プロローグ;1章 長大な時間…他、第2部 植物としてのイチョウも生態;4章 エネルギー…他、第3部 起源と繁栄;11章 初期の陸上植物…他、第4部 衰退と生き残り;19章 分布域の条件…他
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☆イチョウは人に保護(栽培)されて絶滅を免れたのではないか
☆アメリカ・ヨーロッパでは絶滅し、日本で発見されて100年足らず街路樹などに利用されている。
☆イチョウの実に含まれる酵素はアルコールを分解する