紙の本
『どろぼうのどろぼん』
2018/09/11 20:25
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投稿者:百書繚乱 - この投稿者のレビュー一覧を見る
どろぼんはどろぼうの天才です
背が高くもなく低くもなく
ふとってもやせてもおらず
十代かもしれないし五十代かもしれず
たしかに会ったことがあるはずなのに
顔も声も思い出せなくなってしまう
そんな男です
ですから千回もどろぼうしているけれど
ケイサツにつかまったりおいかけられたりしたことがありません
それだけでなく、どろぼんがぬすむのは
持ちぬしが、それがあったことさえおぼえていないもの
なくなったことさえ気づかないものばかり
どろぼんはそういうものの声を聞ききとることができるので
耳をすませて声のみちびくままにどこへだって忍び込み
だれにも気づかれることなくぬすみ出してしまえるのです
そんなどろぼんを刑事のぼくはつかまえてしまいました
さあ、どろぼんの取り調べがはじまります
人が信じられなくなった人に贈る心ふるえる物語
詩人斉藤倫の初の長編物語、2014年刊
紙の本
世界に悲しい音、素敵な音、色んな音が溢れている
2017/10/24 17:42
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投稿者:M77 - この投稿者のレビュー一覧を見る
忘れられた物の声を聴いて、囚われている場所から連れ出すどろぼうのどろぼん。
取り調べる刑事たちもどろぼんを好きになって応援したくなってしまう。
挿絵はカラーで、オブラートの上に描いたような不思議な質感。
どろぼん自身は誰の記憶にも残らない容姿だけど、世界をこんな風に観ている聴こえているどろぼんは、きっと素敵な人なんだろうと思える本になっている。
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詩人でもある斉藤倫さんの作品。この題名から、子供向けの小説かと思いきや、大人の心にも響く心温まる物語。物の声が聞こえる主人公のどろぼん。ここから救ってと言ってるようなちいさき声が聞こえる。ところが、それに誰も気がつかない。必要とされていない物は、誰も気にもとめていないのだ。それどころか、幸せになることも。そんなある日、世話を放棄したような手入れされていない、虐げられた子犬を救う。物の声ではなく、生き物の声が聞こえ始めたどろぼんは、刑事に捕まってしまう。事情聴取されてしまうが、刑事も書記もいつのまにか、どろぼんの話に引き込まれる。。。
大人の童話だ。年末の気ぜわしいこの時期、ホッと温かい涙に洗われるのもいいかもしれない。
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持ち主に忘れられた物の声が聞こえるどろぼん。警察に出頭してきたが、持ち主には所有していた記憶がないので、被害届がない。
どろぼんの取り調べをしていた刑事たちは、だんだんどろぼんに心情がうつっていく。
子どもの本なのに哲学的。不思議な安心感が訪れる。
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ある日、刑事のぼくが出会った男は、「どろぼうのどろぼんです」と名乗った。どろぼうだという男をそのまま帰すわけにもいかず取り調べを始めたが、「助けてもらいたがっているものの声が聞こえる」というどろぼんが盗んだものは、盗まれた事さえ気づかれたことがないという。不思議などろぼんの話に、ぼくも記録係のあさみさんも引き込まれていく。そして、なぜ今どろぼんが警察につかまろうとしたのか、その謎があきらかになっていく…。不思議な主人公の不思議な話。
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実際に、こんな泥棒はいるのだろうか??
誰にも必要とされずに忘れられたものたち。
きっとうちにもある。
でも、思い出せないから、きっとどろぼんはいるんだ。
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この作品に限らず、本当に好きな部分がある作品は必ず論理で片付かない部分がある(しっかりと感想を残しておきたかったからレポートの題材に選んで、テーマ(どろぼんは、あわいの存在ではないか、というもの)を自分で設定して書けたから、それはそれで良いけれど)。
論理で片付かない部分を自分だけで反芻しているときが一番幸せな時間だという気がする。良さをひとと共有できるまで、自分の中の言葉を探す喜びもずいぶん分かってきたけれど。
例えば「どろぼん」を読んで、モノの声が聞こえる事は凄くさみしいと同時に全然さみしくないなと思ったこと。人は心の中や家の中に森を隠していると思うと、楽しい面白いと同時に恐ろしいしさみしいだろうと想像した(人の持っている森が「まとまり」で維持されているかどうかは、他人にはわかりにくいから)こと。こういう事はどうやって書いたらいいんだ。
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モノの声を聞くことができるどろぼん。でも聞こえるのは持ち主に忘れさられたモノたちの声だけ。そのため、盗みを働いても誰からも気付かれることはなかった。一匹の犬と出会うまでは・・・。なぜそんな不思議などろぼうになったのか、そのひみつは彼の生い立ちを知ると明らかになっていきます。
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必要とされなくなった「もの」の声が聞こえる、どろぼん。
「もの」の声に導かれるように「もの」を盗み出す。
そんなどろぼんが、ある雨の日、刑事に捕まる。
というより、目が合った刑事に、逮捕してくださいと言わんばかりに手を差し出した。
取り調べで語られる「どろぼう歴」。
どろぼんの話に引き込まれる刑事。
優しい雰囲気に包まれた、優しい物語でした。
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忘れ去られたモノの声に導かれて盗んでしまうどろぼうのどろぼん。モノに溢れた現代でその大切さや、逆に執着をなくすことを教えてくれるお話だった。
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福音館のFacebookで紹介されていて気になったので、借りてみた。
わくわくする装丁!牡丹靖佳さん、覚えておこう。
静かに、ゆったりと流れる、ちょっと不思議などろぼうの話。素敵だ。
止まらず読んだ。
最後に泣いてしまった。
やさしい、おはなし。
読み終えた余韻がすごくて、これが消えてしまうのがもったいなくて、何もできない。どうしよう…。
良い本には大人向けも子ども向けもないのだ、と改めて思った。
言葉が美しいと思ったら、詩人の方の作品なのですね。詩も読んでみたい。
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なーんかきれいな色の表紙だなあっと手にとる。
と、中の挿絵も素晴らしかった!
特に公園で赤ちゃんに出会うシーン。感動的な美しさである。
おはなしも素敵だ。
よくみたら斉藤倫さんだった。
なるほど、納得。
この人、めちゃ好きだ、と再度確認。
確か詩人さんってあった気がするんだが、どんな詩をかかれるのか興味深々。
ものの声がきこえるどろぼう。
忘れられ、見向きもされないものたちが
助けを請うように呼びかける声。
あることすら忘れられているんだから
盗んだところで、誰も気づかない。
なるほどー、だから捕まらないのねー。
でも、お話は冒頭、そのどろぼんが捕まるところから始まるのだ。
ものの声といきものの声、
どろぼんはこれから両方を聞いていけるのだろうか?
ふしぎなじゅもんのような唄のような、
どろぼうどろぼん、の旋律がどこからか聞こえてこないか、
ふと歩きながら耳をすませたくなる一冊。
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まず、読み始めは幸せになる。紫陽花とミストのような雨がふあ〜っと紫に煙って、ふんわり迫ってくる感じ。。
私の微々たる読書経験の中でも5本の指に入るほど素敵な語り出し。
刑事、どろぼうの出会いから始まるけど、その出会いはいささか、ファンタジーのようで普通でない。だって、どろぼんが盗むものは、持ち主から忘れられたものたち。盗んだって、持ち主は気づきもしない…
取り調べが始まり、物語が語られる。
これは、ぼく と どろぼん との二重構造のようなおはなし。
読んでいて私は「海辺のカフカ」を思い出した。どろほんがナカタさんとかぶるのもあるけど、ファンタジーちっくなのにリアルだから。そして、比喩と、情景描写が美しくて瞼に焼き付いてくる感じ、と、気の利いたジョーク。(オーハスの扱いww)
挿絵が美しい。でも、どろぼんの顔だけは描かれない。そこが私たちをより物語に引き込ませる。
ずーっと取調室のお話を聞いているだけでも楽しいんだけど、ラストは小さな事件にみんなが巻き込まれていく。ほんとによく出来た、楽しめるおはなし。善き物語。こういうお話がベストセラーになればいいのにな。
斉藤倫さん、「せなか町から、ずっと」でお話の名手だと感激したけれど、どろぼん、もっと早くに読んでいたらよかった!
次はどんな本を作ってくれるんだろう。楽しみだなぁ。。
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児童書だけど大人も楽しめる。いつか子どもに教えてあげたい。
終わり方も素敵。
どろぼんとよぞら、楽しく暮らして欲しい。
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うちにはどろぼんに盗んでもらいたいと思っているものがたくさんある気がする。
私がそう思っているのも、ものの方がそう思っているのも、どちらもありそう。