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著者自身はタバコを吸わないのに、「タバコという文化は人類にとって大切だと思っている」という度量の広い姿勢に貫かれていて好感が持てる。
喫煙者率は1968年をピークに減少し続けているのに、肺ガン死亡者数は逆に増え続けてるというデータを示し、タバコを吸うと肺ガンになるという根拠となった1981年の「平山論文」の欺瞞性が明らかにされる。その後、この論文の問題点が指摘されるようになると、厚生省が「データ隠し」を行い始めたという驚くべき事実も、当時「21世紀のタバコ対策検討会」審議員であった評論家山崎正和氏の証言から明らかにされる。さらに喫煙と肺ガンの因果関係が薄弱になり、禁煙自体が個人の権利の侵害にもつながりかねないとなると、今度は「公共の福祉」を盾に「副流煙の害」を持ち出す。こうした姑息なやり方が如実に反映されているのは、タバコに表示されている注意書きが、いつの間にか「喫煙は、あなたにとって心筋梗塞の危険性を高めます」と変わったことだ。
このようにして、政府主導の誤った禁煙運動が進み、マスコミも無批判なまま乗っかることによって「禁煙ファシズム」「現代版魔女狩り」が広がった経緯が明らかにされる。
著者は、「タバコは人類の大切な宝」としてその多様な価値についても言及しているが、一方でタバコの吸いすぎはCOPD(慢性閉塞性肺疾患)をもたらすと注意を促すことも忘れていない。
さらに、終章では、「タバコを吸っても健康だというお手本になって欲しい」と、喫煙者に対して健康法を指南までしていて、著者の優しさは極まっている。
私は死ぬまでタバコを手放すつもりはなかったが、この著書により、自信は確信へと変わり、「タバコを燻らせながら、健康で知的で穏やかに過ごし、大往生を目指そう」という大きな希望も生まれた。