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『真鍮の都』の長編化バージョン。
中編バージョンよりも『アラビアン・ナイト』風味が増し、エキゾチックな仕上がりとなった。物語に下敷きがあるせいか、長くなるほどアラが見え始めるヤングの欠点もさほど目立つことなく終わる。
作品の完成度の面では『真鍮の都』だと思うが、この長編版はエキゾチックなファンタジーとして、かなり味付けが異なるので、単純な長編版と考えなくてもいいのかもしれない。
それにしても、少女趣味というか、これだけはっきりとラブロマンス指向を持った作家が、何故、SFというフィールドで多くの短編を発表したのか、考えてみると不思議だなぁ……。
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面白かったです!大好き!!
この物語の主人公の時代の博物館では、歴史上の重要人物そっくりのロボットが、過去の場面を再現しています。そのロボットは、タイムマシンで過去から連れてこられた当人をコピーして作られたもの。そっくりロボットの作成後、何事もなかったかのように当人は過去に送り返されます。
この、歴史上の重要人物を過去から連れてくる仕事を担当しているのが、自動マネキン社の“vipp誘拐員”。その予備員である主人公ビリングスは、今回初めて任務を与えられ、これが成功すれば正規の社員になれることになっていました。その任務とは、千夜一夜物語の語り手、シェヘラザードを連れてくること。
色々ありながらもなんとか彼女を連れ出せたかと思いきや、それはシェヘラザードではなく妹のほう、15歳のドニヤザードでした。しかも、時を越える乗り物タイムスレッドでたどり着いたのは、元の時代ではなく魔人の住む奇妙な世界。ここから、勇敢で機転の利くドニヤザードの協力の下、食人鬼やルフ鳥、人間界とこの魔人界とを行き来できる盗賊たちにまみえる、千夜一夜物語さながらの冒険が始まります。この冒険を通して、ビリングスはだんだん愛らしいドニヤザードに惹かれていきます。
シェヘラザートが歴史上の人物になっている時点で、物語はわたしたちの現実との結びつきを絶ち、完全な架空の世界が立ち上がります。どんな不思議が起ころうとも驚かない構えが読者にできているところへ、非常にファンタジックな出来事が続くため、そのような世界観で物語を読み進めてしまうのですが、その後その世界観を一変させる展開になり、非常に驚かされます。これはもう見事としか言いようがないです。SF物語が千夜一夜物語の世界に取り込まれたと思いきや、千夜一夜物語を取り込む大きなガチのSF物語があったのです。
さて、ガチのSF物語であるならば、時を越えた恋愛は、時に阻まれて悲恋で幕を閉じるのがお約束。ところがラストは、さらに一転して、千夜一夜物語風のハッピーエンドなのです。
うわーっ、やられた、もう大満足するしかないです。
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『結論として、ヤングの長編について断言できることは
「すべて壊れている」』
~河出書房新社「たんぽぽ娘」編者あとがき~
で、例示された「真鍮の都」(『時を生きる種族』創元SF文庫収録)の「待ちに待った」長編版。
まあ、分析、評論する立場でよめばそうなるかな。
(読んだことないが)千一夜物語の
スピンオフ同人誌(?)として読めばいいんじゃない。
真鍮の都とは乙女の仕掛け(これが少女愛傾向と、
受け取れるかな?)オチの脱少女愛傾向が異なるが、
確かに、物語の進行としては中編の方が上の☆×4。
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ヤング十八番のボーイ・ミーツ・ガール時間SF!
過去にタイムトラベルして歴史上の重要人物を拉致、現代へ連れ帰り、そっくりのロボットを製作したあと本物は過去へ送り返す。それが自動マネキン社の商売だ。
ビリングズの初仕事は、新しい展示計画《千夜一夜物語》の語り聞かせの場面を再現するため、9世紀へ跳んで本物のシェヘラザードを連れ帰ること。
だが……シェヘラザードを確保したつもりが、それが15歳の妹ドニヤザードのほうだったとは。
追手を振り切り、彼女と時間移動したビリングズだったが――タイムマシンを故障させてしまい、到着した先はいずことも知れぬ世界だった!
訳者あとがき=山田順子
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う〜ん、既読感ある御伽話
古い。好きな作家さんだが、いかんせん1985年作品だ。古き良き時代っていうよりもアラビアンナイトを下敷きにしているだけにデジャブ。再読することもあるかな程度。
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タイムトラベルでシェヘラザードを連れ帰るはすが間違えて15歳の妹をさらってきてしまう。そして未来に帰るはずが異世界に入り込んでしまい・・・「たんぽぽ娘」のF・ヤングのかわいらしいSFファンタジー。
アリババ、ランプの魔神・・・アラビアン・ナイトに登場するおなじみのキャラクターたちも登場するのも楽しい。
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「たんぽぽ娘」で知られるロバート・F・ヤングのロマンチックSF。
『千夜一夜物語(アラビアン・ナイト)』を下敷きにした、可愛らしいお話です。
タイムトラベルが可能な未来世界。
新米のマークは博物館の展示企画のため、9世紀へ飛びます。
『千夜一夜物語』の場面を再現するために、本物のシェヘラザードを拉致して、そっくりなロボットを作り、本物は何も知らないうちに過去へ戻すのだ。
この時代の娘は、魔法のじゅうたんで王子様が迎えに来てくれたとすぐ信じてくれるので、楽勝だとか(笑)
ところが、連れて出たのは、似てはいるがまだ15歳の妹のドニヤザードだった‥!?
追手を振り切ってドニヤザードと移動した先は、見知らぬ世界。
『千夜一夜物語』さながらの異世界に飛び込み、謎また謎の状況を生き抜けるか。
利発で可愛いドニヤザードに惹かれ始めたものの、いくつもの壁があって、これじゃあどうにもならない‥?!
いえいえ、そこはね(笑)
ハインラインの『夏への扉』ファンにも、おすすめです☆