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号泣小説。最終章とひとつ前の章が破壊力すごかった。白痴っぽい人間の自己犠牲とか献身的な姿は胸を打つ。「働かない蟻は、いざというときのための存在」という言葉を伏線に、ピンチに陥ったヒロインや震災で苦しむ人々を木偶の坊が助けに行く展開なんて泣くに決まってる。
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二人の男女のハルの物語。生きづらい世の中で自分のスペースを何とか作って生きる二人が運命的に出会い愛を育むと言う話。柔らかそうでどこかちくちくした感じのする前半と二人の「運命的すぎる」多少現実的ではない後半。好みが分かれそうな話だ。
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正直よく分からなかった。
大震災の混乱のなか、見知らぬ作業服の人が現れたからといって、しるしがどう、と言われても、リアリティが感じられない。
分かれた不倫相手が付きまとうのも、よく分からない。
ま、しかしこれは、実際そういうこともあるのかもしれない。
残念。
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ふたつのしるし 30年の人生ドラマに圧倒
2014/11/12付日本経済新聞 夕刊
これは30年にわたる物語だ。その意味で、実質的には大河小説なのである。ところが本書は200ページ。長編というよりも中編に近い。それでも30年の人生を見事に描き切っている。
しかもここで描かれる人生は、2人の人生だ。柏木温之と大野遥名。この2人の半生がぎっしりとつまっている。その色彩感豊かなそれぞれのドラマに圧倒されるから素晴らしい。
静かな筆致ながら奥行きがあるので、読んでいるだけで膨大な人生をともに生きたような錯覚に陥ってしまうのである。
冒頭の第1話で柏木温之は小学1年生。蟻(あり)の行列が面白く、校庭でじっと見ている。そこに同級生の健太が絡んでくる挿話がなかなかにいいが、その詳細は本書を読まれたい。
その同じ年、大野遥名は中学1年。彼女は優等生だが、息をひそめるように過ごしている。目立ちたくないのだ。
こうしてその後20年間の2人の生活が交互に描かれていき、最後の第6話はその10年後。どこでどういうふうにこの2人の人生が交錯するのかは読んでのお楽しみ。とても清々(すがすが)しい小説だ。宮下奈都の傑作だ。
(北上次郎)
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生きることに不器用な2人の出会い。遙名のほうはありきたりな話だが、温之の生き方が認められることはうれしい。そういう社会のほうが、たぶん、生きやすいはず。彼を受け入れる度量のある人たちの存在が救いだ。
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ハルとハル。前半は二人のそれぞれの様子が丁寧に書かれていました。しかし、後半は二人の出会いと接点がイマイチ雑に感じました。ラストが近づくにつれ、タイトルと内容をムリに繋いだように思い、前半が良かっただけにちょっと残念な気持ちになりました。
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嫌いじゃない。
この小説の雰囲気は割と好きだ。
心が温かくなる大人向けのおとぎ話といったところだろうか。
二人のハル。
小さな男の子のハルとちょっとお姉さんの遥名が出会うまでの30年を描いた物語。
ハルは自分の世界の中に生きていて周囲から浮いている。
でも彼は母親にそして友達に温かく見守られながら成長し、やがて実生活と折り合いをつけていく。
優等生の遥名は周りの目を気にしすぎて自分らしさを失っているが、やがて恋をし徐々に変わっていく。
どう考えたって現実はもっと厳しい。
この二人のように運命の赤い糸の様な出会いはなかなかあるもんじゃない。
でも宮下さんの温かい文章で描かれると、素直に受け止められてしまうのが不思議。
なるほど、ハルのモデルはご自身の息子さんなのですね。
「ハルのような子が幸せになれる、喜びを見出せる世界を書きたい」
そういわれちゃうと、言い返せないじゃないか(笑)
世界観としては「窓の向こうのガーシュウィン」と近いかな。
この作品が好きな人はきっと気にいるはずです。
それにしても日経新聞のレビューはどうなの。
いささか大げさすぎやしないか・・・。
すっかり騙された。
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これのどこが恋愛小説だろうと思い読みすすめたら、名もなき人たちの小さいけれど大切な日々が描かれていた。触れたら壊れそうな、今にも溢れ出しそうな思いが込められている。くすぶっている日常に一冊。
2014.11.18
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性格は対象的だが、不器用だけどまっすぐに生きていこうとするハルと遥名。二人が震災を機に出会うまでの人生、性格などが自分と共通する部分があり、感情移入してしまった次第である。
遥名の社会人3年目の話で出てきた「人生いきていれば、いいことあるよ」という台詞に共感してしまった。長い人生、生きづらさがある中でいいことも必ずあるんだなと感じてしまう。
ハルが母を亡くしたその後のアルバイト先で仕事ぶりや性格などが評価され、今の仕事に就き、重宝される存在になるまでに成長できたのがよかったなと感じた。人は出会いによって人生が変わるものだなと感じ、ハルが成長できたのも何かの縁で、ひとに恵まれたのもある。
震災後にしるしがうまれ、母親が言った「ほんとうに大事なものは自分で見つけるしかない」という台詞に心打たれた。自分の人生は自分にしかわからない、人に決められるものではないのかなと。
しるしが書いた生い立ちの記に心が温かくなった。良い話だとしみじみ。
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ラスト、2人がつながる部分があまりにも雑すぎて残念。
ハルくん、うちの息子にも通じる感じがあったので、どう育つのがすごく読み進めていただけに、あっけなさ過ぎて。。。。
ハルくんのような子の違う話をまた読みたい。
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自分とは違う異質な2人に戸惑いが隠せず、読み進めるのに苦労した。2人の行動や言動を『個性』という言葉でわりきってしまえば、当人達も周りも楽だろう。しかし、あの2人は個性という言葉でわりきれるようなレベルではなく、知的な部分が足りない(病気的な意味で)のかなといった印象を受ける。難しい。
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最近、宮下さんと相性よくないなぁ・・・と思いながら読んだ割には、けっこう楽しめたかも。
・・・とはいえ、なんか強引というか、
「しるしが見えた」ってのが、なにやらさっぱり理解できないド凡人のワタシには、「カッコいいタイトルでスマートにまとめたお話です!」って印象しかないな。
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柏木温之(ハル)周囲のひとたちから理解されにくい行動をする。心のままに行動する。
大野遥名は醒めている。自分を前面に出すことを避けている。まったく対照的な二人の心のうごきをこんなふうにことばで表現する宮下さん。文学でしかできない表現だと思います。
まったく違うふたりにみえるけれど、ハル(温之)はハル(遥名)を見いだすことができた。ハルはハルにどんなしるしを見つけたのだろう。
ハルを認めてくれるひとがいたから、ハルはしるしを見つける目を持ち続けることが出来たと思う。そこが嬉しい。
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ハルと遥名の子供時代から大人になって
出会い子供を持つまで、と長いスパンを
それぞれの転機になるエピソードを
数年おきに紡いでいくかたちが新鮮だった。
幼いころのハルと母、容子のところが
一番心持ってかれたかなぁ。
なんだか切なくて、でも心救われる
ピュアな一冊でしたね。
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”ハル”と呼ばれる男の子と女の子が成長していく中で遭遇した出来事を年代ごとに追っていく青春小説。
ふたりの人生がどこで交わるのかが見どころになっている。
温之は自閉傾向がある少年として描かれている。
他人への関心がほとんどなく想像力が乏しい。けれど温之自身の心理描写がないため淡々とした印象。
あくまでマイペースに温之は日々を過ごす。
遥名は勉強ができ自立心があるが、女の子は賢くなくていいという父親の意向に従い内向的な部分がある。
まったく異なる性格と環境であるがふたりとも家族や周囲との距離を感じて成長していく。
途中、特に幼少期〜社会にでるまではあまりに行儀の良い物語で凡庸だなあ、と思ったけれど、終盤ハッピーエンドの典型のようにまとめられた様に、これはこれでありなのかなと感じた。
それくらい読後感がよい。
特に温之の個性を認めよい方向へ導く人の登場が登場することで救いになっている。
ひねりや重みはないけれど優しい気持ちになれる物語。