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過去に囚われながら現在を生きるさわ。生きてるんだか死んでるんだか、あったことなのかそれともなかったことなのか、過去なのか現在なのか、ゆらゆらと川の流れのように進む物語。始まりそうで何も始まらなくてでも始まっていて。
10才の娘を持つさわ。素晴らしい旦那がいるさわ。さわの親友のシングルマザーのひかる。そしてその息子、13才のりょうと10才のしん。りょう。現在のりょう。
静かで、静かすぎる物語。狂気はそこには、ない。
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恋愛小説……恋愛……の、ような気もするし、えー……と言うような気もする。でも私的には、ナイ。腹の中の時から知ってる男の子に恋愛感情は、無理。
でも、ないわー、と思いつつ、少々不快感はありつつ全部読めた。なんだろう。それはきっと水というモチーフと、それに深くかかわる死、なんだろうな。特に死に関しては「流れ」と言う点で水と密に絡み合いながらうねるような展開をしていく。
そしてラスト、主人公は「もうあたしはもどってこない。」と、出発のようでもあり死のようでもあるこの一行に、何か凝縮されているように感じました。
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じりじりとして読む。さわに、かつて起こった何か、そして今起こっている何か、
を思いながらじりじりと読む。
恵まれた環境で生活しているはずの彼女はいったい何を迷っているのか。
何に揺れ何を怖れ何に苦しんでいるのか。
何も分らないまま遠い島の大きな川のふちで立ちすくむ。
川のこちらとあちら。渡ってしまうのか。もう帰らないのか。
ぼんやりと浮かび上がって来る不穏な思い。
あなたはそっちに行ってしまったのか。もう戻って来る気持ちはないのか。
女であること。どうしようもなく女であること。
さわの心はあくまでも女。妻でも母でもなく、女。
綿々と受け継いでいく女としての命。
読みながら苦しくなる。女である自分が鏡に映る。私もさわなのか。
違う、いや、違う。と目を反らしながら命の流れる川を思う。
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四国。夏。盆。村。過去。ピアノ。音楽。ラヴェル。会話が方言で書かれている。昔話やわらべうた、音楽で死んだ人も蘇る。その時だけ蘇って、人はそれを忘れない。周りの大人や親を怨むことだってできるのかもしれないけど、諦めているわけでもなく、自分をはぐくんできてくれたものを慈しんでいるみたい。
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読む人の力量が問われる…命を紡いだ話。死んでも、死なない、生まれなくても、生きている、そんな命題が、静かにたゆたい、自分の答えを見い出す。
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中脇初枝の新境地と言っても過言ではない。今までのジャンルとは違うため、違和感を感じるが著者の作風の道が拓けるのならば、ファンとしては嬉しい事である。今回の作品は恋愛小説だが、普通の恋愛小説とは良い意味で何か違う。自然がたくさん溢れる文章のおかげか、頭の中で情景が浮かぶ。しかし、異質な関係の恋愛についていくのに必死だったのもあり、読了まで時間がかかったが良い作品だった。
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ツイッターで好評だったので読んでみた。
ピアニストになれなかったさわは、例年と同じように帰省するが、そこには例年とは違うりょうがいた。
うーん、雰囲気は好きなんだけど、読む人によってすごいストーリーになれば何も起こらないと読むこともできて、それって放棄しすぎなんじゃないかと思った。
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いろんなことが詰め込まれているのに、散らかってる感じはしなかった。
何にも知らないふりして、やっぱりみんなちゃんと知ってる
大人はたいがい、どんな風に見えたとしても、ちゃんと知ってる
そんなことを思った。
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これは、なんだか不安定になる本。
さわさんと、りょうの話。
大人になりかけの危なげな少女と、狡猾な大人の女性が同居してるような佐和子。
産まれるまえから知っているりょう。
母が、生まれた土地の言葉を使うと泣き出すみやび。
なんか、ひたすら不穏な空気が漂っていて、不安定になるお話でした。
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真夏の鮮やかさに、未来に溢れる子供たち。そして、荒涼とした感情と、可能性に見放された大人。その対比から切なさを感じる。
過去に囚われたさわは、自分の思いを、りょうに投影させているのではないかと思われるが、読んでいてなんとも居心地が悪い。
さわの一方通行な愛情は、孤独から生まれたみたいで気持ち悪い。
さわは、安全な場所から受け身的で何もしてないのに、不全感ばかり訴える。距離をとって斜めに構えれば、自分が特別になれるとでも思っているのだろうか。そうやっている間は、ずっと孤独だろうに。
けれど、そう思う一方で、等身大の自己を受け入れることがなんと辛いことなのか。向き合うことがどれだけ苦悩に満ちていることか。その痛みが伝わってくる。
さわは、いったい何を得て、何をすてたのだろう。
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表紙絵のように四万十の青い空、川、緑の濃い山という風景が浮かんでくる。
田舎によくある、近所の人はみな知り合い的な閉鎖的な空気感もある。
でも、実家の隣に住む同級生の息子に恋するってあるのか?
息子の母親に学生時代憧れがあったから、その思いが息子にまで伝播していっているような気がする。
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ピアニストになれなかったさわ。高知の実家に帰り、同級生ひかるの息子りょうを愛してしまったさわ。うーん、「きみはいい子」がよかったので期待してしまったが、ちょっと違った。みなそこ=水底?
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端的に言うと、高知の実家に娘を連れて帰省した30代の女が、旧友の息子である中学生男子と一夏の恋をする物語である。
村と町の間のような、ご近所皆顔見知りという田舎で生まれ育った主人公は、ピアニストになれなかったという傷を持って、今は平凡な主婦をしている。
優しい夫と可愛い娘を持つ安定した生活を送っているのに、漠然と不満がある。
実家に帰り、懐かしい風景や旧友と触れ合う中で様々な過去が蘇る。
物語の本筋は主人公が実家に滞在するひと夏の日々で、過去の出来事が回想として入る構成。
方言が読みにくいとか、展開が遅いとか、色々気になる部分はあるのだが、イマイチだなあと思ってしまった最もおおきい理由は、結局主人公は何も成長・変化していないところだろう。
ハッピーエンドでもバッドエンドでも、共感できてもできなくてもいいのだが、何らかの変化が見られなければ読み応えというものを感じない。
起承転結とはよく言ったもので、何らかの異分子により日常がかき回され、状況が変わりまた新しい日々になっていくのが物語の骨格だと思う。
その中には「結局変われなかった」、という展開ももちろんあるのだが、物語中の変化量が大きいほどにやはり面白い。
(ごくまれに淡々と進みつつ満足度の高い物語もあるのだが、それは希少な存在である)
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う〜ん、微妙…
「きみはいい子」「わたしをみつけて」がすごく良くて新作を心待ちに、期待していただけにガッカリ。
耳慣れない、読み慣れない方言のセリフがまた読みにくさを倍増させた感じですが、とても読みにくく、主題もイマイチかな〜。
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正直評価するのが難しい。
傑作のような気もするし駄作のような気もするし。
四万十川沿いにある小さな集落が舞台。
大雨が降ると沈下橋が沈み孤立してしまうほどの田舎。
そこへピアノ教師のさわが娘を連れて帰省した短い期間のお話。
高知のじりじりと照りつけるような日差しと四万十の清流が目に浮かぶようだ。
ショパン、リスト、ラヴェルなどのクラシック音楽、四万十の耳慣れない方言、お施餓鬼の念仏、様々な音が洪水のように現れては消えるが不思議な静寂感が広がる文章は秀逸で作者の新境地であることは間違いないだろう。
特に死者と交差するような日常を描きだした死生観はすばらしい。
かつての日本では各地で民話として受け継がれ、人々に自然の恐ろしさを説いてきたのかもしれない。
素晴らしい文章であるからこそこの小説の核である少年との恋のやりとりが残念に思えて仕方がない。
こどもっぽいさわと少年りょうの恋に興ざめ。
他にも少年との恋を描いた小説を読んだこともあり否定するつもりもないが、この小説に関しては私には理解不能だった。