紙の本
既得権益との対決
2018/05/03 08:39
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投稿者:とめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
グローバリズムをきっかけに構造改革を行い、グローバル経済に対応した労働法等の改革による労働生産性の向上を通して、国益を守るための大局観をもったグローバリズム思想を広めたいという結構真っ当な経済政策論。
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日米の雇用慣行の違い レイオフ=再雇用を条件にした一時解雇。定年制がない=年齢による差別 実質的な平等主義
金融資本主義は末期症状ではなくマルクスの根本的な矛盾ではない
労働者の需給逼迫で賃金格差は縮小する。アメリカは移民があるので逼迫しない。時間がたつとより高い層に移動しているはず。
健全な市場経済国カナダ 歳出削減で財政再建
アメリカの南北戦争は、保護貿易主義の北と自由貿易主義(綿花の輸出)の南の間の戦争。大きな政府と小さな政府の争いでもある。
自由貿易を通じた世界全体での所得格差の是正のために国内の所得格差が生じる
イタリアの北部、南部の違いは労働力の移動がないので埋まらない。失業給付が福祉政策の一部のため、人が移動しない。北部の独立運動。スコットランドも同じ。
日本は高度成長期に都市部へ労働力が移動し、高度成長を後押しした。労働力の効率性を高めた。全国総合開発計画のころから移動ではなく、地域間の所得格差を埋める政策に移ったため、成長がなくなった。EU内でドイツが南欧を救済するのとお同じ図式。
地域間格差は、労働力が移転して埋めることをためらってはいけない。
ドイツのシュレーダー政権の改革
社会保障改革、医療改革、失業給付の引き下げ、労働市場改革(解雇の金銭補償)
最良手当=残業代ゼロ法案=労働時間規制の改革案
日本の公共サービス効率化法
イギリスの金融市場の活性化(サッチャーとブレア、市場経済主義)
スウェーデンモデル 企業を救済せず個人を守る。その結果、企業は世界的企業になる。日本は中小企業を弱者とみなす。徹底した地方分権。重複行政がない。
米英型と独仏型の資本主義の違い
日本は戦前は米英型(直接金融と流動性の高い労働市場)だったが戦時体制の統制経済で変わった。
ヨーロッパ以上に格差のあるアジアでは、NAFTA型の自由貿易地域に留めるべき。
輸入代替型=国内の幼稚産業を保護=いつまでも保護体質から抜けだせず、成功しない。オーストラリアの自動車産業。
輸出主導型=外資の直接投資を複数導入して競わせる。一つだと牛耳られて植民地と同じになる。
日本の高度成長期は、労働力逼迫によって賃金が上昇し、教育が高まって中流階級を生み出した。
その背景には、労働移動の高さがある。
高い経済成長が労働需給逼迫を通じて所得格差を縮小させ、国内市場が成長した。東アジアの高度成長。
中南米は、先進国からの直接投資が悪かった例。搾取する資本。
日本も、最初は外資規制があった。外資の導入が成功するかは、国際経済環境に依存する。
アジアの成功要因=教育による労働の質の高まり。直接投資の競争。中国の需要を取り込んだ。
中国の高齢化は日本の20年遅れ。労働移動が必要。
シンガポールの都市部の出生率は1.2と低い。老後に備えた強制的な貯金。積立金に利息をつけて個人に払い戻す。
オーストラリアは見込みの無い輸入代替政策を放棄した。自動車、鉄鋼、造船などを時限的な補助金を条件に関税を引き下げた。競争に晒す自由化政策。
年金支給開始年齢を平均寿命の伸びに合わせて伸ばす。
混合医療の推進。
生産者利益が国益、ではない。自由貿易は消費者余剰の増加分が大きい。生産者利益が減少しても。
地域の均衡ある発展、は無理。労働力移動を通じて地域間格差を是正する=最適通貨圏の発想。
援助より貿易を=1960年代の国連。
高関税と援助の組み合わせから、低関税で輸入を増やせば発展する、という提言。人の移動も同じ効果をもつ。所得格差は広がるが、経済全体は活性化する=米国の例。
介護サービスの矛盾=官製相場の弊害。民間の上乗せサービスを市場の需給で決めれば民間事業者の創意工夫が生まれるはず。
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日本市場の国際化は、米国のためではなく、日本自身のため、とくに消費者の利益のために行うものである。急速に進む少子・高齢化社会を乗り切るためには、貿易や金融だけでなく人材面の自由化も不可欠である。外国人労働者を大量に乗り切るためには、貿易や金融だけでなく人材面の自由化も、不可欠でである。外国人労働者を大量に受け入れるかどうかにかかわらず、人々の生活の安全を維持するためには、様々な制度改革が必要となる。また。食の安全性を保障するための規制は、輸入品だけでなく国内品も含めて強化する必要がある。「日本の農産物は安全性」といわれるが、OECD統計では、日本のの高知面積当たりの農薬使用量は、加盟国中トップであり、米国やドイツの約8倍となっていることは、ほとんど知られていない。(p.188)
国際基督教大学での経済学で学んだのは、「冷静な頭脳と温かい心を」(アルフレッド・マーシャル)が経済学の基本ということだ。現実の社会では、「人々の幸せのため」に定めた制度や規制が、かえって人々を苦しめる結果となる場合が少なくないからである。
例えば、「最低賃金では生活できないから引き上げを」という「温かい心」だけで政策を決めてしまうと、失業者を増やすだけの結果となる。そうではなく、「地域の労働力需給を無視してしまうと引き上げられた賃金水準では、生活の基礎となる雇用機会 失われてしまうだろう」と「冷静な頭脳」で考える必要がある。そして、最低賃金は地域の実情に合ったものとして、その不足分を「最低生活保障」の仕組みで補充する、という答えを導き出すのが経済学の論理なのである。(p.203)