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川田先生の名前はレヴィ・ストロースの翻訳者として知ってはいたが、著書を読んだことがなかった。文化人類学関連の本もいくつか読んできたつもりだったが、今までと全く違う発想で、新鮮で興味深い内容だった。頭にのせて荷物を運ぶ姿はテレビなどでよく見かけるが、それが体格と関係しているというのは、言われてみればそうなのかも知れないが、考えたこともなかった。アフリカの人々が前屈している写真とか、足を放り出した姿勢がわれわれ日本人と違って楽であるとか、逆に、蹲踞の姿勢はわれわれの方が楽であるとか。履き物の形とか。赤ん坊の背負い方とか。人間の道具化とか、道具の人間化とか。とにかくどれもこれもおもしろい。どうして今まで、こういう発想に触れないままでいたのだろう。その方が不思議なくらいだ。図版が多く分かりやすい構成になっているが、馬が船を引くというのはどんなふうにするのか、それは映像で見てみたい。
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「毎日新聞」(2014年10月19日付朝刊)で、
中村桂子先生が紹介しています。
(2014年10月19日)
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運び方に傾向はあるようですが、結局・・原則はなかったような印象です。
それでも、色々な学びがありました。
アフリカの人が屈んで草取りをしているのを見ても、これからは「たいへんだなぁ」とは思いません。楽なんでしょうから。
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モノの運び方が人種によって違うとは思わなかった。黒人にとって道具は必要最低限なもの、白人にとって道具は誰でも運べるようにするもの、黄人にとって道具は使う技術を要する簡素なもの。道具一つ見ても考え方が違うのがよくわかる。ユニバーサルデザインというのは日本にはなかった考えなんだなぁ。ユニバーサルデザインという考えは素晴らしいものだが、巧みな技術というものが日本から消えてしまったらどうしよう、と突拍子のないことを考えてしまった。
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歩き方、座り方などの身体技法を、三つの文化間で比較し、さらに道具を用いる運び方の比較に至る。
以前から、歩き方や座り方の文化について興味があったし、本書はたくさんの写真も載っていて、面白いかと期待していた。
が...。
なぜだろう。
ページは進んでいくのに、なかなか入り込めなかった。
最後の方はグローバル化社会とエスニックなものとの関係を考察していて、これも興味深いはずだけど、あまり響いてこなかった。
もう一度読み直すべきかな?
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西アフリカの友達のところに
寄せてもらった時に
頭に水壺を載せている女性を何人も見た
頭に山のような洗濯物を載せて歩いている女の子を何人も見た
先ず日本では見かけることのない「運び方」をたくさん見た
その行為に人類学の視点を入れて見ていくと
こんなふうに読み解ける
「運ぶ」という何気ない行為に
こんなにも 興味深い設問が立てられることが
とても楽しい
さりげない行為の中に
「ヒト」の文化が見えてくる
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文化の三角測量と称して,西アフリカのモシの文化,日本の文化,西欧の文化を比較しながら,特異な視点でものを見ることを実践している好著だ.それぞれの文化の特徴を人間の道具化,道具の人間化,道具の脱人間化に類別して,それぞれの事例を列挙している.フランスの農業資料館で牛馬にひかせる荷車にブレーキがついていることに驚いたエピソードで(p144),日本では考えられないことに気づいた件を吐露しているのが,とても素晴らしいと感じた.
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道具の人間化かあ。
運搬方法を題材に、文化の三角測量。
西洋が、道具の脱人間化、非人間化を指向するのに対し、日本は、人間化しちゃうと。この指向がいわゆる日本の技なのかもだが、一方で、人間を過酷なまで道具に合わせると。
人の力をいかに使わないかを指向する、非人間化。
これからの働き方を考える上でも、僕らの伝統的な生き方が邪魔してる側面あるようなので、思い切りいかないと。
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「〈運ぶヒト〉の人類学」川田順造著、岩波新書、2014.09.19
176p ¥778 C0239 (2020.01.13読了)(2020.01.04借入)
ホモ・サピエンス 賢い人間
ホモ・ルーデンス 遊ぶ人 (ホイジンガ)
ホモ・ロクエンス 話す人
ホモ・ヒエラルキクス 階層化好きの人 (ルイ・デュモン)
ホモ・ポルターンス 運ぶヒト (川田順造)
ホモ・モーベンス 動く人 (黒川紀章)
現生人類は、ホモ・サピエンスという種に分類されます。「賢い人」という意味だそうです。
人類の遊ぶ側面に注目してホモ・ルーデンスと呼んでみたり、話す側面に注目してホモ・ロクエンスと呼んだりもします。
この本は、物を運ぶという側面に注目して、人類を考察してみたものです。
「ホモ・サピエンスが現在まで、世界に拡散して生きてこられたのも、アフリカを出るとき、立って歩き、自由になった両手も使って、最低限のものだったにせよ、新しい土地で生きてゆくのに必要な道具を、運ぶことができたからだ。」(3頁)
「世界のいろいろな運搬法の中で、女性の頭上運搬は、原初のころ、ヒトの間で、最もひろく行われていたのではないか」(5頁)
【目次】
1 なぜ、「運ぶヒト」か?
2 文化の三角測量
3 「身体技法」としての運び方
4 「技術文化」と運搬法
5 「運ぶヒト」のゆくえ
参考文献
図版出展一覧
●最古の猿人(8頁)
2001年、熱帯アフリカ、サハラ砂漠中部の南縁にあたるチャドで、立って二本足で歩いた可能性がある最も古い、700万年前の猿人の頭蓋骨が発見された。
●ヒトの祖先が直立二足歩行によって得たもの(16頁)
・大きな脳を支えることが可能になった
・分節された発声が可能になった
・直立した歩行と、自由になった前肢とによって、相当の嵩と重さのものを、長い距離運べるようになった
●轆轤の伝播(24頁)
焼きものを成型するときに使う轆轤が、大陸から日本にもたらされたことは歴史上明らかだ。けれども、日本では受け入れてから、回転の向きを逆に、時計回りにして使うようになった。
●フランス語にないもの(29頁)
フランスは、日本的感覚からすると、「いただきます」も、「ご馳走さま」も、「行ってらっしゃい」も、「ただいま」も言わない、ぶっきらぼうな国でもある。
フランス語には、日本語の「ご苦労さま」にあたる、労をねぎらう言葉がない。
●アフリカの鉄鉱石(43頁)
アフリカ大陸は、鉄鉱石はいたるところ地表で取れたのだから、サハラ以南アフリカの多くの地域で、石器時代のあとすぐ、鉄器時代になった。
●西アフリカの運搬法(87頁)
西アフリカ内陸の黒人では、運搬具と言えるようなものをほとんど必要としないくらい、頭上運搬が発達、普及している。
●白人の運搬法(87頁)
人間の巧みさに依存せず、誰がやっても同じように良い結果が得られるように道具を工夫する
●日本人の運搬法(88頁)
トネリコなどあえてしなやかな木を好んで用いる両天秤運搬に見られる、人体への着脱が自在・容易で、物的装置として単純な道具を、使う人間の「巧みさ」で上手に使いこなすという、箸や艪の使用とも共通する指向性を指摘できる。
●荷車にブレーキ(143頁)フランスのノルマンディーの農村や農業資料館で、牛馬に引かせる荷車に、ブレーキがついている
☆関連図書(既読)
「マグレブ紀行」川田順造著、中公新書、1971.03.25
「曠野から」川田順造著、中公文庫、1976.08.10
「無文字社会の歴史」川田順造著、岩波書店、1976.12.15
「音・ことば・人間」武満徹・川田順造著、岩波書店、1980.01.22
「アフリカ史の曙」Roland Oliver著・川田順造訳、岩波新書、1962.09.28
(2020年1月18日・記)
内容紹介(amazon)
アフリカで生まれ、二足歩行を始めた人類は、空いた手で荷物を運び、世界にちらばっていった。この〈運ぶ〉という能力こそが、ヒトをヒトたらしめたのではないか? アフリカ、ヨーロッパ、東アジアの三つの地点を比較対照し、〈運ぶ〉文化の展開と身体との関係を探る。人類学に新たな光を当てる冒険の書。
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三角評価。◆黒人「人体の道具化」(例:長い腕を鍬のように使う)、頭部。◆白人「道具の脱人間化」(巧みさを必要とせず、人力をできるだけ省く)、肩。◆黄人「道具の人間化」(巧みさを重視する)、腰。◆◆だから、おんぶの高さが西洋人と違うのだな。
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人類の祖先が二足歩行で世界中に散らばったとき、その人々は子供や食料、基礎的な道具などを何らかの方法で「運んでいた」はずである。著者のこの視点自体が非常に興味深く感じました。そして運ぶスタイルは、人類の祖先が世界中に散らばるにつれて、現地の環境(気候や植生等)にあわせて変化しているはずであり、また人間の体型も地域によって変化してきますし、文化的な要素や価値観にも影響を受けるはずです。そしてこの違いをわかりやすく例示するために、著者が「文化の三角測量」と呼ぶところの、フランス、日本、西アフリカ(モシ王国)の違いを非常に端的にまとめている本になります。本書に掲載されている「技術文化」という概念ですが、これは本書以外で触れていましたが、さらに理解が深まりました。余談ですが、サイバーダイン(筑波大学発ベンチャー)が開発した装着型ロボスーツについて、まさに川田氏が本書で日本の特徴として述べている「道具の人間化」だと思いました。使い手の習熟によってパフォーマンスが変わる、人間の労力を省くのではなく投入するという文化です。
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昨今話題の宅配便などに関する本かと思ったら、タイトル通り人類学の本だった。原始時代より遥か昔、人類が進化する過程で「物を運ぶ」ことがどう発達していったかを追っている。
現代や中世における各国の物の運びかたとその文化など、なかなかマニアックな視点で分析している。人類学の中から人力をなるべく使って「運ぶ」ことにこれだけ焦点を当てる本というのも珍しいのではないか。