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企業の犯した失敗を後知恵で一刀両断するスタンスではないのがいい(その分打ち込みの甘さに不満足な人もいるだろうけど)。
マーケティングからコミュニケーション、行動経済学など幅広い観点で戦略の誤りやその対策について考えてるきっかけをくれるという意味で自分自身のチェックリストとして活かせそう。
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ビジネス上の重要な決定は論理的思考だけでは決められておらず、過去の様々な経験が却って合理的な判断を鈍らせる。それが企業が失敗する真の要因であることを、様々な事例を挙げながら解説した1冊。行動経済学の内容が色濃い印象かな。ビジネスの世界で常套句として使われている言葉やそれに関する考え方を、違った観点から論じている点は、自分の視野を広げるのに参考になりました。
以下、参考になった点、引用、自己解釈を含む。
●エビスビール。プレモルの猛烈な追撃があったことに加えて、リーマンショックの不況の煽りを受け、なんとなく贅沢が許されにくいという『お客様の心情に寄り添う』形で何か手を打たなければならないという判断。『ちょっと贅沢なビール』という謳い文句から『エビスは時間をおいしくします』というコピーに変更した。長年かけて、お客様の中に築き上げたブランドを手放した結果、プレモルとの差は拡大してしまった。
●コーラは、ペプシチャレンジの猛烈な追撃を受けており、何か手を打たなければならない状態だった。そこで膨大なお客様調査をした上で、味覚を変更した。既存客が一斉に離れてしまい、すぐに元の味に戻した。
●いずれも、後知恵の話ではあるが、お客様に寄り添うための行動、お客様への膨大な調査結果に基づいたお客様に寄り添うために行ったことだが、調査と実態の結果は全く異なることを示す。
●馬車かしかない時代に「どんな馬車が欲しいか」とお客様に尋ねても「もっと遠くまで早く走れる【馬車】が欲しい」としか答えない。お客様は自分でイメージが出来ることの範囲でしか応えられない。この声を拾っていっても、イノベーティブな製品は作れない。
●逆にこのような声を丹念に広い続けていく結果、実態の購買ではあまり重視されないオーバースペックな製品となり、顧客の値頃を超えた製品となり、結果無理な値下げをしなくれはならず、利益が出ない製品となってしまう。お客様の声を聴いたがために、自ら製品価値を貶める結果は多々あるもの。
●真の顧客志向とはお客様の声に耳を傾けることではない。お客様は神様ではあるが、神様のお告げは戯言であることも多々あることを知りながら、戯言の中から声なき声を見抜くこと。
●アメリカでは、リーマンショック後に購入意欲が大きく減退し、自動車販売は前年▲20%と大きくダウン。そんな中ヒュンダイ自動車のみ前年超の好結果となった。何故か?多くの販売会社は『不況⇒売れない⇒値下げ⇒売れない⇒利益大幅悪化』のスパイラル。ヒュンダイは『不況⇒売れない⇒もし失業したら購入から1年以内は返品OK!(値下げしない)⇒お客様の不安払拭⇒購入増&ブランド価値増。不況で売れない状況でお客様調査をしても、安くして欲しい、という声しか出てこない。正直に安くした企業と、その裏の心理を読み解いた企では、天と地の差が生まれる。
●羽の無い扇風機も、自動お掃除ロボットも日本のメーカーは十分作れる技術がありながら、現状のお客様の声を真摯に聞いた結果「需要無し」という判断でお蔵入りさせてしまっていた。羽無し扇風機は「音がうるさく」お客様���静かさを求める声に反する。自動掃除ロボットは、日本のように一間一間が狭い家では使いにくい、1部屋が大きい海外向けである。もし仏壇にあたって、ろうそくが倒れて火事になったら・・・。チャレンジする「リスク」を取りたくないがために、お客様の声を表層的に取ったほうが『都合がよい』ことも多い。新しいことを行う時には「リスク」を議論するが、何もしないことに対する「リスク」は取り上げられないのが日本。
●『利益=価格ーコスト』。この価格は価値に置き換えられる。価格を単純に下げるのは、ブランドの価値が無いor低いということを自ら対外的に示しているようなもの。知恵が無いから値下げに走る、逃げる。価格を下げるということは、自身の無知を対外的に示していることでもある。そのことをわかって値下げしてますか?
●日本は「コスト」を下げて、利益を高めることについては、世界に誇れる技術や執念がある。が、価格を上げることについては、非常に稚拙。価格=価値と置き換えられるから、価値を伝えるのが非常に下手ということ。
●パッと見た時の間隔でお答えください。いくらになりますか?また①と②どちらが大きくなりましたか?『①:1×2×3×4×5×6×7×8×9』『②:9×8×7×6×5×4×3×2×1』。答えは同じになるが、②は①の実に8倍も平均値が高くなったとか。人間の心理は、左側の桁数が大きい方が数字が大きいと錯覚してしまう。
●「3000円」と「2980円」とでは?わずか20円でも、左端の数字が異なるため、20円以上の価格差を感じてしまう。結果、売場は末尾を8や9にして、左端の桁数が1ケタ小さくなるように値付けをしてきた。長いことがそれが続いたため、この桁落としに値頃を感じるように刷り込まれている。ジーンズで3900円と、3400円とあったらが、3900円の方が何故かお買い得感があると、人は答える。
●顧客に共感するのではなく、顧客に共感させる。
●相手が自分のことを理解してくれなくても良いという「あきらめ」がややもすると「いさぎよい」と思ってしまう。
●大きくて無骨な石をドラム缶に入れて、研磨剤を入れてスイッチを入れる。ドラム缶の中の石がガンガンぶつかり合い、削れていき、1晩経つと、綺麗に磨き上げられた石になる。これが良いチームのイメージ。ぶつかり合うことを恐れず、互いに刺激を与えながら磨き上げて行く。ジョブズ。
●ホンダがアメリカに工場を作った時、本田宗一郎は、従業員と同じつなぎを着て、工場員1人1人と握手をして回った。アメリカはブルー・ホワイトカラーの格差が大きい社会。雲の上の存在である創業者が同じ格好をして激励をしてくれる。これがどれだけの感動を与えたか。また、本田宗一郎は勲一等の授賞式に、技術者の正装は白いつなぎだといって、つなぎで出席しようとした。さすがに天皇の前でつなぎはマズいと周囲に止められたとか。ホンダの社史を作るときに、何年に何が発売とか書いても記憶に残らないが、こういう話は語り継がれる。人はストーリーが好き。
●その事業に現在関わってないとして、あなたはその事業を新しく始めますか?
●選択と集中は、リストラの変わ���に使われたワード。会社の規模を適正に管理できるサイズに組み替える作業と捉えるとわかりやすい。
●改革というのは長くやってはいけない、せいぜい2年まで。そして人員削減していいのは1回まで。2回目は経営者の責任。そうでなければ先行き不安で従業員は仕事に専念できないし、社内の空気は暗くなるばかり。新浪剛史
●危機を前に改革や投資を小出しにする経営者は少なくない。しかし、一気に処理をしなかったために傷が深くなることはおうおうにしてある。『戦略の逐次投入』がタブーとされていることは皆知りながらも、それでもそのタブーに陥るのはリーダーにリスクを取る勇気が無いから。いくら優れた戦略を立てても実行されなければ意味が無い。古森重隆、富士フィルム社長。
●リーダの器以上の組織にはならない。
●人間は基本的に変化を嫌う。口ではイノベーションと唱えながらも、人間の脳は変化を避けたがる。なぜなら、長い歴史の中で、よほどの変化が無い限り現状を維持したほうが生存率が高いということが、脳に刷り込まれている。
●「マックの中のネジをもっと美しいものにしたい。」「パソコンの中のネジなんか誰もみないよ。」「いや我々はそれを見ている。僕たちは細部にも拘るアーティストでなければならない。」
●何をしないかを決めることは、何をするかを決めることよりも重要である。
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有名企業の実例に基づき、合理的な思考の末に不合理な決定が下される状況を分析。顧客も企業側も、理性的な原因以外で振り回されている実態が多数描かれている。
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大企業の社長にまでのぼりつめた人間は、成功者であり、凡人より優れた資質、能力を持っていることは間違いない。が、そんな優れた人間が、あとで振り返ってみると、誰からも指摘される単純な間違いを犯していることがよくある。優れた経営書を読み、多くの人が体験したことのないような経験を持ち、過酷な競争を生き抜いたはずの彼らがなぜ失敗をし、会社を経営難にしてしまうのか。マーケティング論者である著者は、多くの日本企業の失敗を取り上げ、その原因を経営者の思考分析によって解明しようとする。
吉野家とすき家の牛丼戦争、ソニーや松下・シャープ・日立などの家電メーカーの逆境からの脱出などなど、大企業の失敗の歴史書としてもおもしろい。
経営者も人間だ。合理的な判断による戦略をとったつもりが、過去のしがらみにこだわっていたり、人情をはさんでいたり、顧客の声を重視しすぎたりといった明らかな失敗の要素が含まれている。後になって言うのは簡単だ、と批判されそうな本ではあるが、大企業経営者であれば、そんな批判も受け入れるべきだろう。
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「いろいろと経営や戦略について勉強している経営者が、なぜ失敗するのだろう?」的な本。
結局は、人間的な部分での間違いなどが原因になることが往々にしてあるので、気を付けましょう、といった感じか。
読みやすくはあるが、「んー、それは論理的につながりがわからないなぁ」と思うところもちらほら。
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「後知恵」っぽい感じもしないではないが、おおむね納得できる。「過ぎたるは猶及ばざるが如し」と同じことが現代社会でも起きているのだと思う。
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合理的(論理的)に思考すればするほど、予定調和に陥りやすく、非連続な変化を起こせないことがよくわかる。牛丼戦争のケースは当時のことをよく知らなかったので参考になった。
様々な文献を参考に幅広くカバーされている一方、その文献を直接読めば、事足りる感もあり。
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学説の見本市と言った様相で、いろんな話が脈絡なく散りばめられている。経営判断は感情に左右されることは解った。じゃあどうしたら良いの?と言う疑問に対する筋の通った結論は最後まで出てこない。最終章にようやく著者の主張らしきものが出てくるが、それが「中小企業で働こう」と言うのは本書の主題と何の関係があるのか?
こういう断片的な後知恵の解析からは何も生まれない。どの経営者も判断した時はそれが合理的だと信じていたはずだ。判断のまさにその時に正誤が判別できる指針でなければ何の役にもたたない。
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市場は合理的ではなく、人間は頑固に人間であり続ける。過去の事例や引用が多く、それらを引き合いに著者の考える「愚かさ」を導く。
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顧客志向、ブランディング、プライシング、など、マーケティングの教科書に載っているようなセオリーを、表面的に鵜呑みにせず本質を考えてみよう、というのが趣旨。
あまり論理的に説明するテイストではなく、著者独自の考え方というよりドラッカーやポーターなど著名な経営学者の教えを引用し組み合わせながら辛口に日本企業の経営戦略を切り刻んでいく、どちらかというとエッセイに近いような印象である。
いろいろと面白いことが書いてあるのだが、日本企業・日本人のコミュニケーションの下手さ、というかコミュニケーションをサボる悪癖を指摘したあたりは的を射ていると感じた。
自社が提供する製品・サービスの価値を伝えることができない、或いは伝えることをサボっているがため、安易に低価格化で競争に勝とうとする企業。
自社のブランド価値を直接消費者に訴えることができない、或いは訴えることをサボっているがため、大量のTVCM投入や系列小売店・代理店向けの営業に注力してしまう企業。
なんだか耳が痛い。
しがらみ=インセンティブ構造(どようにすれば他人が思うように動いてくれるかが解るからこそ、自分も他人の期待に合わせた言動をとってしまう)という捉え方も興味深い(これも著者オリジナルのアイデアではなく紹介だけど)。
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日本の大企業病=官僚主義 「情熱」が希薄化
日本社会の問題でもある 都会の偏差値秀才育成による
答えのあるモノしか許容しない リスク挑戦を忌避
1.「認知活動」だけでは社会発展はない
知識・記憶・学習・思考
2.リスクを取って「Action」
「感情」情熱が必要→「決断」→「行動」
3.大企業病がまん延
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合理的をいっているのは、これまでの通説をいっています。
通説を覆す、真の法則が、”逆説”です。
クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」に代表される、通説の裏にある、一見、非合理的にみえるルール、それを、”逆説”として紹介しています。
第1章 顧客志向と、従業員思考
第2章 牛丼戦争、プライシングの逆説
第3章 ブランド戦略、企業ブランドか、商品ブランドか
第4章 日本人のコミュニケーション下手
第5章 企業には、大きさの限界がある
第6章 中小企業で働く幸福感
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今の若者が地元志向で家族や友人との関係を重要視するのは、グローバルな時代にそった賢い選択=地方の再生につなげられる。
ほとんどの企業は価格競争をしていると考えている。ほとんどは仕掛けられたと考えている。自分が値引きしたときの相手の反応を考えていない。
本田宗一郎は、叙勲のとき技術者の正装は白のつなぎ、といってツナギを着ていこうとした。アメリカでツナギを着て社員の前に立ち感動を呼んだ。
人間の脳はストーリー好き。
選択と集中=ドラッカーとジャックウエルチ。
リストラの代わりに使われた。実際には会社の規模を小さくすること。
集中と単純化、で普通の規模の会社に戻ること。
大企業ほど規模の不経済が働く。
大企業病は人間の脳の仕組みに原因がある=変化を嫌い現状を維持したがる。
イノベーションのジレンマ=過去を否定しないところには革新は生まれない。大企業は合理的にダメになり、小さなベンチャー企業にとって代わられる。
選択の本質は、何かを選ばないこと。何をやるか、を考えるとうまくいかない。日本企業には戦略がない、とは捨てる勇気がない、という意味。
JPモルガンは、報酬ギャップが高いほど業績がよくないことを発見した。ドラッカーは、経営者と一般従業員の差を、20対1までと考えた。
大企業は上り詰めたところで新興企業に代わられる確率が高い。
人数は100~150人まで。ダンバー数。それ以上になるとより多くの規則が必要になる。
スティーブジョブス「ネットワーク世代は、アイデアはEメールや、iチャットで生まれると考えがちだが、それはばかげている」
糸井重里事務所「ほぼ日手帳」ポーター賞を受賞した
ダニエルコーエン「快感は成長が加速するときに得られるだけだ。だから大きな幸福感を得るときは、戦争によって破壊された後だ。高度成長時代の幸福感を味わえる」成長がストップすると快感もなくなる。もっともっと、という感覚が、報酬系の快感をもたらす。経済成長の麻薬。
新しい世代は、報酬系の刹那的な幸福感ではなく安定した持続する幸福を求めている。これが内向きになった要因。=地元志向。自己実現できる仕事を見つけられれば多くの人が幸福になれる。
『希望学』『希望のつくり方』など。希望を持つことは現在の幸福とつながっている。