紙の本
読み心地が悪く、痛々しい気がした。
2015/09/06 13:48
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投稿者:紗螺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルの「しょっぱい」は「イタイ」と訳してもいいような気がする。
四十八歳の年女、年男を主人公にした話が五つ入っているのだが、そのどれもが微妙に痛々しい。わずかの希望を盛り込んだりはしているものの、全体的にそういう感じが強くてあまり楽しめなかった。
暗い雰囲気の小説ではなく軽く読めるのに、イタイ。この感じは、暗いよりも読んでいて厭かもしれない。例えば最後の話で、自分は女子たちにモテていると勘違いしている男性教師が出てくる。その勘違いぶりが読んでて「うわ~」と引く感じ。作者はそういうところにおもしろさを感じさせるのを狙っているのかもしれないが、私には笑いの方向性が合わなかった。
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同世代を描いた物語で、大いに頷きながら読み進めました。
講談と云うものをイメージでしか知らいないのですが、真打の講談師さんらしい軽妙な文章で、ぐいぐいと力業で読ませられるように一息に読み終えました。
女性を描いた二作『肉巻き』と『もえぎ』は秀逸。
どちらも我々中年の男から見えそうで見えなかった女性の暗所をいきなり目の前に晒され、分かってはいたんだけど分かりたくはなかった・・、怖いもの見たさの結果の様な妙な読後感が新鮮でした。
『肉巻き』や『バナナ』は、神田茜さんご自身が思い切り楽しみながら書いている様子が目に浮かび、その楽しさが読み手であるこちら側にも感染ってくるようでした。
二年後には作中の登場人物と同じ年齢になる同級生達に読ませ、誰がカピバラハゲなのか、誰がもえぎなのか、酒を呑みながら話してみたくなりました。
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しょっぱい夕陽 丁寧な作り、読後に心温まる
2014/12/24付日本経済新聞 夕刊
48歳の年女、年男たちの奮闘を軽妙に描く作品集だが、今回も読ませる。たとえば「肉巻きの力」という短編を見る。
この作品のヒロインは結婚16年。高齢出産で産んだ息子はまだ小学生だ。育児と家事、さらに保険会社でフルタイム勤務と彼女は忙しい。夫は家電量販店に勤めていて、土日や祝日の休みはなく、息子のサッカーには彼女が付き合わなければならない。そのコーチがただいまの心の恋人なので、ヒロインはせっかくの休日の朝、まだ寝ていたい気持ちをエネルギーに変えて跳び起きる。心の恋人は数週間で替わることもあれば数日で替わることもある。一人の異性をずっと思いつづけているわけではないから、これは不倫ではないと彼女は考えている。
ヒロインのただいまの悩みは、サッカー・チームを仕切る花田さんだ。コーチと保護者の取り持ち役であり、まとめ役、世話役で、とにかく逆らえない。威張っている。
というところから始まる短編だが、読み終えると温かなものがこみ上げてくる。それは作者がここから丁寧に物語を作り上げているからだ。鮮やかな風景が現出するのはそのためだ。
(北上次郎)
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40代後半の男女を主人公とした短編5つ。どの主人公もどこかでコンプレックスなり、人生への葛藤なりを抱えながら、満足できていない日常を送る。その中で起こる、小さな荒波をうけて、今の自分を受け入れ前向きに頑張ろうと決意して終わる。決してハッピーエンドではないのだが、読者に安堵感を与える終わり方をする不思議な短編ばかり。今40になったばかりで、それなりに人生をこなしてきた自分だが、もっと不器用な自分と向き合ってもいいかもと感じた。
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48歳ってなんて世知辛いんだと切なくなった短編集。若さと言う武器はないし、人生経験を積んだ分、純粋にもなれないし。かと言って老いにはまだ早い。もがきながらも自分の居場所を何とか作って生きている姿がどの話からもひしひしと伝わってきて、笑えるのに切なくなる、そして頑張れ!と言いたくなる一冊だった。
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48歳の男と女が主人公の短編集。
しょっぱい…そうですね、甘辛いというか人生の悲哀を感じましたが、どのストーリーも最後は気持ちが暖かく前向きになるような終わり方で好きでした。
サッカーママの女の対決を描いた「肉巻きの力」が印象に残りました。
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それぞれのチャプターの登場人物が、絡み合っていくタイプと思いきや、全て短編なので読みやすい。
物語の主人公は、どこにでもいるような人たちで、みんなそれぞれちょっとだけ思い込みが激しい。
思い込みというのは、人の心の中で考えられるものなので、実際我々も、ここまでではない…とか思いつつ、実は人のことを疑ったり誤解したり、どう思われているか考えて悶々としたり、、という部分を少なからずもっているのかもしれない。
だから主人公が、恥や汗をかきながらも、他人とコミュニケーションをとってよくない思い込みが良い方向で誤解とわかったらなんだかホッとするのかも。読みやすい内容でした。
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48歳の男女を主人公にした短編集。
若者ではないけど熟年ってわけでもない。そして本人は未熟さゆえに、自分の見た目や精神が、社会が抱く48歳のイメージより「若い」と勘違いしている。社会人経験も20年以上だが、「成功者」ってわけではなく、特に秀でたところはなくてもそこそこ頑張ってやっているうちにここまで来てしまった。
つまり日本の大部分の48歳がこの短編に集約されているともいえる。
といっても深く考えさせられるような重さはなく、さくさく読めるので、まあほんの息抜きに読む感じ。読み返さないし、5年も経たないうちに内容も忘れてしまいそうな気がする。
でも、時間つぶしとしては悪くない。特に女生徒に「モテる」と勘違いしたオヤジ教師の話が面白かった。ほんとにいそうな感じ。「ちょっとズレてるけどそんなに悪くない先生だよね」と生徒に評価されているような教師。
独身の保育士の話は、本人は正しいことを言っているのに職場の人間も子どもの親も誰一人認めないというのはちょっと可哀想だったな。こういう人は田舎に帰っても上手くはいかんと思うよ。
ちょっと無理のある設定の話もあったが概ね楽しめた。
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48歳の男女それぞれの、悲喜こもごもな日々。
#エフの壁
妻の浮気を知りながら追求できない公務員。
居酒屋で、かつての同級生たちの集まりに遭遇。
声をかけられなかった事に落ち込むが…(良かったね~忘れられてたんじゃなくて!)
#肉巻きの力
結婚16年目の主婦、いつも心には好きな男性がいる。でもそれは夫ではない(笑)
ひとりをずっと想いつづけているわけじゃないので罪の意識は今のところ無い。
現在の憧れの人は、息子のサッカー教室のコーチ。
そのコーチに会えるなら、保護者委員も嫌だけどがんばれる。
食べてもらえることを願っておにぎりをにぎる。
でもなかなか思い通りにはいかなくて…(あはは~愉快なママ♪)
#バナナの印
離婚して、左遷され、目つきの悪さをカバーするためにダジャレを言い続ける会社員。(上司にはちょっと遠慮したいが、嫌いじゃないです)
#もえぎの恋
更年期と言われる年齢になり、正職員でないため将来の不安を抱える独身保育士。唯一の楽しみは年下の落語家に会いに行くこと。(保育士として間違ったことは言ってないはずなのに…)
#かみふぶきの空
かつての教え子と結婚していることで、今でも自分が生徒たちからモテていると勘違いしている教師。(フフッ)
全部面白かったです!
特に好きだったのは、肉巻きとバナナ!
みんな一生懸命生きていて、ちょっぴり笑えて、どこかせつなくて。
ほんと『しょっぱい夕陽』ってかんじですね~
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泣けました。
すごくいい。
また読み返したい。
読み終わってからも、刹那さがのこり、
それでももう少しだけ頑張ろうと思える本。
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小説祭り!小説が読みたい!小説解禁!
ってことで、初めての作家さんだけどタイトルで借りてみた。
主人公みんな48歳!自分的にはちょっと先なんだけど、なんだかその年齢から来る閉塞感みたいなものが身に沁みた…。
ココロのヒダヒダへの切り込み方が好きな書き方だな。
個人的には元生徒と結婚した先生の話が特に好きだった。
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48歳。
同世代ではあるけど、そうそうっていう共感はなかった。さらさら読めたけどするする忘れそう。
バナナの印はせつないけどよかった。
バーコード検索したら違う本になった。
ISBNはあってるのにな…。
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すべて48歳が主人公の短編集。人生折り返しを過ぎて、思うようにいかない、辛いことやしんどいことを抱えて生きている姿を描いている。離婚して離れて暮らす娘に会いたいと思う男が主人公の話が良かったな。
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「たいがいのことは、笑っていればごまかせる。[...] 笑ってさえいれば、誰かに助けてもらえるんだ。許してもらえるんだ。卑怯でもなんでもない。社会に出るということは理不尽なことを受け入れることだ。ときには自分をごまかさないと、生きているのがつら過ぎる。[...] お願いだから笑っていてくれ。笑ってごまかすことを学んでくれ。」(124ページ)
思い描ていた未来になっていなかったとき、どうするか。
崩れ落ちて絶望する以外の道を模索して、足掻く中年男女たち。
苦しくても、悲しくても、前に進めるはずだと思い出させてくれる物語り。