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紙の本
一黙響くこと雷の如しの饒舌家、維摩居士を楽しむ書
2020/03/05 10:54
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投稿者:永遠のチャレンジャー - この投稿者のレビュー一覧を見る
居士(在家信者)ながら、釈尊の主要な弟子たち(舎利弗、目連、摩訶迦葉、阿難ら)を問答で言い負かした維摩詰の存在を知って俄然興味が湧き、本書を手にしました。
本書は、架空なのか実在モデルがいたのかよく判らない維摩居士が活躍する『維摩経』を、碩学の著者が読み解いてゆく全六回の岩波市民セミナー(1983年秋開催)の講義録です。
だから、「お手許のテキストの第〇〇頁にある訳では…」とあるのに戸惑ってしまいます。実際に本文で『維摩経』の漢訳原文や訳文の引用箇所は極めて重要な箇所に限られます。でも、不足するテキスト部分(漢訳原文とその日本語訳)は、ネット公開サイトを参照すれば十分に補えます。
その意味で本書は『維摩経』入門者への手引書たる位置づけになります。著者が講演の初日に持参を忘れた「仏教略年表」(47頁)を眺めると、一目で伝播の歴史を把握できるよう施された創意工夫が楽しめます。
『維摩経』では、「空」に裏付けられた「菩提」(悟り)や「不可思議解脱」(向上向下)が解き明かされます。病気に罹った維摩居士の屋敷を文殊菩薩が見舞いに訪れ、これに釈尊の弟子たちがゾロゾロと付き従う演劇的な舞台設定は面白く、とても視覚的で、斬新です。
講義が進むにつれて、神通力に長けた、一黙響くこと雷の如しと評されたまるで仙人か魔術師みたいな維摩居士が、実はお喋り好きで、無限の慈悲心に満ちた菩薩行を実践する人物だと判ってきます。
説法内容は多分に形而上学(哲学)的で、逆説的な言辞と相俟って本旨が理解しづらいですが、著者は正直に判りづらいと言いながらも理解した処の『維摩経』の世界を読者に現出しています。著者もまた一種の神通力の持ち主かも知れません。
三世紀から七世紀に活躍した翻訳僧の支謙、鳩摩羅什、玄奘らのお蔭で、パーリ語の経典『維摩経』が漢訳され、二十世紀末にチベットで新発見された梵語写本『維摩経』(十二世紀頃の書写らしい)よりも古い時代の訳出テキストが漢訳本で残されたのは、大いなる幸いというべきでしょう。
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