投稿元:
レビューを見る
「縄田一男」編集による秋をテーマにした時代小説のアンソロジー作品『秋びより 時代小説アンソロジー』を読みました。
「鈴木英治」の『父子十手捕物日記 門出の陽射し』に続き時代小説です。
-----story-------------
「池波正太郎」、「藤原緋沙子」、「岡本綺堂」、「岩井三四二」、「佐江衆一」……江戸の「秋」をテーマに、人気作家の時代小説短篇を集めました。
「縄田一男さん」を編者とした大好評時代小説アンソロジー第3弾!
-----------------------
「秋」に関する、以下の5篇が収録されています。
■池波正太郎/市松小僧始末
■藤原緋沙子/秋つばめ――逢坂・秋
■岡本綺堂/菊人形の昔
■佐江衆一/蛍と呼ぶな
■岩井三四二/解錠綺譚
■解説 縄田一男
どの作品もクオリティが高く、時代小説を堪能できましたね… そんな中でも面白かったのは、「池波正太郎」の『市松小僧始末』と「岡本綺堂」の『菊人形の昔』でしたね。
「池波正太郎」の『市松小僧始末』は、テレビドラマの『鬼平犯科帳』で観たことのある作品でしたね、、、
妻「おまゆ」との誓いを破り、再び掏摸に手を染めた「又吉」に対して、「おまゆ」は「又吉」を愛するが故に厳しい対応をします… ショッキングですが、「又吉」を更生させるための最善の措置だったんでしょうね。
「岡本綺堂」の『菊人形の昔』は、『半七捕物帳』からの一篇、、、
団子坂の菊人形を見物にきた異人たちが女掏摸「蟹のお角」のために思わぬ奇禍に遭う話と、市子の「おころ」殺しの二本立て… ミステリ作品として愉しめました。
その他の三篇も、
これまでの展開と全く違う別な光景が見えるエンディングが素晴らしい「藤原緋沙子」の『秋つばめ――逢坂・秋』、
自分の力量ではなく、姉や妻、そして上役の力によって生き延びることの滑稽さや情けなさを抜群の筆致で描いた「佐江衆一」の『蛍と呼ぶな』、
江戸開城前夜、自らが時代の鍵となってしまった錠前師の姿を物語性豊かに描いた「岩井三四二」の『解錠綺譚』、
と秀作揃いで、飽きずに愉しめる一冊でした。