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帯によれば「生命の瑞々しさに溢れた育児小説」。まさにその通りです。イクメンという言葉では伝えきれない何かに溢れた小説です。
自宅が育児と仕事の両方を行う場であり、近隣の住民との触れ合いが公私の両面において描かれています。「育児小説」でもあり「仕事小説」でもある稀有な一冊。
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押しつけがましくなく、ふわりとした空気がただよっているような本。育児ネタはあるあるで同意を求めすぎたり、逆に現実味に欠けたりするけど、自然に読めたのは、切り取り方の妙なんだと思う。
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http://kumamoto-pharmacist.cocolog-nifty.com/blog/2015/01/post-cda2.html
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物語はアップダウンすることなく淡々と進んでいくのですが、じんわりと沁みてきます。
叔父と姪っ子の関係でこんなにも愛情あふれる絆があったでしょうか?子育ての大変さが、苦しみではなく慈しみで綴られています。
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弟夫婦の生後間もない赤ちゃん・なずなを預かることになった主人公。日々成長していくなずなちゃんの様子がとてもリアルに描かれていて、文章からあの赤ちゃん独特の甘ったるい匂いが香ってくるような錯覚を覚えました。
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図書館にて。
今まさに生後2ヶ月の子供を育てているところだったので、その描写に共感したり、はっとしたり、貴重なものとしてありがたがる思いを呼んでもらったような。
途中で出てくる、コオロギの詩がよかった。
『くさのなかで コオロギがないている
こんこんと わきつづけるいずみのように
ああ 手にすくいたい
そのまま 手にたたえていたい
小さな空が おりてきて
ほほずりするのを まって
それからそっと もとにかえしたい』
そして、吉野弘の『生命は』の
『私も あるとき
誰かのための虻だったろう
あなたも あるとき
私のための風だったかもしれない』が。
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新刊で出たときにけっこう話題になって、読んでみたいとずっと思っていたんだけど、月日が流れてようやく今ごろ。
刊行当時の批評か感想に、でもきれいごと、甘い、みたいなものもあったような記憶もあったんだけど、そんなふうには感じなかった。(まあわたしに子育て経験がないからかもしれないけど)。今にも消えそうなはかなくて小さな命を預かる重圧とか不安とかがものすごく伝わってきた。そして喜びももちろん。
ときどき詩の引用があったりもして、全体的に詩的で、哲学的な感じ。
とりたてて大きなできごとがあるわけじゃなくて、淡々としていて、まわりの人々との会話が、どうでもいいような話をそんなに細かく書く?ってのも少々あって、ずんずん読み進めるとかいう感じではないんだけど、それもまた味があって。そうした会話のなかで、声高ではなく、環境の問題とか地域の問題とかも語られて、ちょっと池澤夏樹を思い出したり。
読んでいると心落ち着く感じ。そして、だんだん登場人物がみんな実在するような、この小説のなかの世界が本当にあるような気がしてきて。読み終わって寂しくなったくらい。
もしかすると以下ネタバレなのかも?
主人公が赤ちゃんをやむを得ず預かることになって、っていう理由が、なにか恐ろしい理由(赤ちゃんの両親が死んじゃったとか、逃亡とか、犯罪がらみとか)だったらちょっといやだなあとか思っていたんだけど(神経質か)、そんな事情ではなくて、それもとってもよかった。
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結婚歴も無く、もちろん子育て経験も無い秀一が、ちょっと神経質になりながらも愛情を持ってなずなに接する姿が描かれます。
機嫌良く寝、お腹を空かして泣き出し、哺乳瓶が凹む様な勢いで飲み、抱き上げればミルクと甘い汗の匂いを発し、爆裂音とともに排泄するなずな。主人公は秀一ですが、物語の中心には常に生後二か月のなずなが居ます。
それまで町の新聞記者として動き回っていた秀一が、なずなを預かることで在宅勤務に変わり、なずなを介して身近な人々との交流を深め、秀一も、そして周りの人々も少しずつ変化して行く話です。
堀江さんの小説は、天気に例えれば明るめの曇天の雰囲気があります。僅かな明暗の変化はあっても、雲がさっと切れて日差しが覗く事も、雨になることも無い。どこか静謐感の漂う世界。そんな世界の隅々まで丹念に描いて行く作家さんです。
この作品は450ページのやや長めの長編。丹念過ぎて読み進めるのには少々苦労しました。でも堀江作品らしく、その場より、ジワリと後に残る読後感がある作品の様です。
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「なずな」堀江敏幸
地方の小さな新聞社で記者をする「私」がやむない事情から弟夫婦の生後2ヶ月の赤ん坊なずなを預かる事になり、ミルクを与えるのも、オムツを替えることも満足にできない40代独身男が周囲の助けを借りつつ子育てに奔走する。
一人で生きていた「私」が、なずなを介してこれまでは接することのない周囲の人と新しい関係を築いてゆく。
なずなと「私」の成長物語。
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主人公によって語られる赤ん坊の様子が、毎回、何一つ見逃すまいとするかのように仔細で丁寧。同じ丁寧さでこの人たちの日々を追っていこうという気持ちになる。
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自分の子供が赤ちゃんの時のことを思い出した。赤ちゃんがいるだけで周りがふっと優しくなる瞬間、赤ちゃんに振り回され自分の時間がなくなってクタクタになる瞬間、どれも覚えのあることばかり。そして、目にはしてたけど言葉で表現したことがなかったことも書かれていて、「あ、それそれ!あったあった!」と再度自分の経験を追体験したり・・・。ほんとうに子供を育てたことのある人だけが知る瞬間が書かれているようで、これは是非ともいろんな人に読んでもらいたいと思った。赤ちゃんを神聖化するでもなく、大変なものだと恐れるのでもなく、ただただ成長する生命として大事にすること。家族でもない人が助け合う、優しい時間が終わりそうなところで小説が終わるのも、とてもよかった。
子供のことだけではなく、町の再開発のことなども出てきて、もっと事件が起こるのかとおもいきや、そういうこともなく、ほどよいスパイス程度で話が収束していく。大きな事件にならないことが現実的でもあるし、でも、現実よりもずっと優しい気もする。
続編が読みたいような、あとはそっと胸にしまっておきたいような、佳編でした。
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弟夫婦の赤ちゃんを一時育てることになった主人公がおっかなびっくりで無我夢中に子育てする様子が,周りの静かな温かい眼差しの中でゆっくりと語られている.天使のようななずなを介して,周囲の人々と新たな関係性を築いていく様子,何でもない日常のそこ彼処にきらめくような新たなる気付き,少し田舎風の町の様子とともにほっこりさせられました.
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菱山は、弟夫婦の赤ちゃん「なずな」を数ヶ月預かることになった。赤ちゃんが側にいると、視点が変わる。世界が変わる。みんなが少しずつ優しくなる。まど・みちおの詩がたくさん引用されていて、それが本の雰囲気にぴったりだった。「ああ このちきゅうの うえでは こんなに だいじに まもられているのだ どんなものが どんなところに いるときも」
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育児中心の物語かと思ったら少し違った。
育てられているはずのなずなによって大人の方が変化している。
私も日々の生活でささくれだった心を平に整備してもらったようで読後とても気分が良い。
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赤ん坊そのものを描写するというより、赤ん坊に接している側のおとなの心理を見事に掬い取っている。赤ん坊の重さであるとか、部屋の空気を変えてしまうとか、わが子の小さいときを本当に思い出す。子供を持つと、自分の子供以外の子供への視線も変わってくるのだよね。
赤ん坊自身はなにをするわけでもないのだけれど、周りのおとなたちに影響を及ぼす。
筋らしい筋もない小説だが読み応えあり。