紙の本
6年前の本だが、今もなにも変わらない...いやよけい抜き差しならなくなったか。
2020/04/11 18:15
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投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は、現役官僚で、前作『東京ホワイトアウト』は、“国民不在で再稼働と原発推進に向かう姿をリアルに伝える”ために描いたとか。本作『東京ブラックアウト』は、その続き。原発利権の話は、いかにもありそうな話で恐ろしい。しかし、もっと恐ろしいのは、そうした利権の元「原発」を残しさえすればいいさという、雑な安全対策。国民の生命より、権力が上であるという政府の姿勢。...これもたぶんそのまんまなんだろうなぁと容易に想像できる。その結果、どうなるか...作家によるひとつのシミュレーションではあるが、マジで、背筋が凍るエンディング。本書が出されたのが2014年。あれから6年の間に原発以外に台風や洪水、そしてウイルス禍。その対策の影にも、同じような構造が横たわっているんだなと、これは確信である。
紙の本
衝撃的なフィクション
2015/03/16 21:46
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投稿者:まっしゅ - この投稿者のレビュー一覧を見る
若杉冽というキャリア官僚が書いたリアル告発ノベルの「原発ホワイトアウト」に続く第二弾。前回は新崎県の原発付近の鉄塔がテロによって倒壊し、新崎原発が停電による冷却不能に陥って臨界に達するところまで描かれていたが、今回はその続きの顛末が描かれている。タイトルは前作の「原発ホワイトアウト」と対照的な色彩感を持った「東京ブラックアウト」となっている。タイトルはとても意味深な表現であり、読んでいる途中から「この物語は、物語の中の日本は、いったいどこに行こうとしているのだろうか」と思い末恐ろしくなる。
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コアキャッチャー 原子炉でメルトダウンが発生した場合に備えて、原子炉の格納庫の下部に設置される装置
溶けた核燃料を閉じ込めて冷却し、放射性物質の拡散を抑制 日本にはない
天皇への請願 送付先あり
官報正誤で戒厳令
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原発再稼働にひた走る理由と、その無惨な結末が余りにもリアルに描かれている。現実との境目が分からなくなるほど。
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「原発ホワイトアウト」の続編。
前作では原発への破壊工作が仕掛けられたところで終わっていたが、本作ではその工作の結果、フクシマを超える事故が起こり、関東地方が廃墟と化した世界が描かれる。
にも関わらず、原発利権を死守しようとする勢力に対し、天皇が反対意見を表明する、というのは少しストーリーとしては強引な印象が残った。
法律の条文の細かな表現に込められた霞ヶ関文学の解説など、ディテールがあいかわらず面白かった。
・原発事故の場合の避難計画といっても実際には大渋滞を引き起こして身動きがとれなくなるだけ
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「原発ホワイトアウト」の続編。前著に比べると新鮮さは薄れるが、フクシマ後に安全が確保されていないのに原発の再稼働に突き進む日本という国の病理-電力モンスターシステム-を再びえぐり出している。この本を書かせているのは、いまや絶滅危惧種となった国士型官僚(この定義は私のブログを参照:http://kaz22.blogspot.jp/2012/02/blog-post.html)の義憤であろう。小説という形態をとってはいるが、中身は政官財の癒着構造のリアルな解説書である。やはり著者が法学部出身で実際に運用をしている現役国家官僚だけあり、法制度に関わる記述は勉強になる。
2作目の本書での読みどころは、天皇制との関わるところ(5章、11~12章)と再稼働後の最悪の事態が起こった場合のシミュレーション(7~8章)。再稼働の総無責任体制、住民避難計画の詰めの甘さなどが痛烈に批判されている。私は原発は40年廃炉で段階的廃止、いまある原発は安全が担保されれば稼働させるべきという立場だが、本書を読むにつけフクシマ事故の知見が活かされていない現状の再稼働には反対である。
先の衆院選での与党の圧勝により再稼働へと加速する現実に無力感もあるが、本書の数少ないフィクション(現実とは違う)部分に希望があるとすれば次の2つ。1つは新潟県知事の泉田氏が逮捕されておらず、柏崎刈羽の安全性確保にじっくり取り組んでいること。2つ目は、維新の党の橋下徹大阪市長(一時は大飯原発の再稼働容認で大阪府市エネルギー戦略会議で古賀茂明さんらを失望させた)が原発推進の石原慎太郎氏と決別し、江田憲司氏と組んで党の基本政策に「市場メカニズムを通じた「原発フェードアウト」と「自然エネルギー立国」が入ったこと。
なお、本書は2016年の参院選に衆院選を重ねるダブル選挙を想定して書いていたものと思われるが、今年12月の衆院選を経ても矛盾しないように微修正が入っていて、そこは自然に読み進められる。本書が描いているのは日本がを長く蝕んでいる病理だが、テーマが時事的なので、早めに読んだほうがより興味深く読める作品である。
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原発ホワイトアウトの続編。
フクシマの事故の教訓を活かすことなく、原発再稼働という既定路線へひた進む日本の未来の最悪のシナリオ。政官財の癒着構造を、無責任で詰めの甘い原発再稼働の危険性を、玉虫色の政治的な表現を、小説の体で暴いている。
また、天皇制についての記載や、自衛隊の置かれる法的な立場についての記載が随所にあり、勉強になった。
それにしても、今上陛下の気品と慈悲深さ、御言葉の重みよ。敬愛の念しか抱けない。御親政を行って下さることを期待してしまう。
*以下引用*
*先人から受け継いだ、この美しい我が国の国土がどうなるのかという、国家の存亡に関わる話ですよ。現行法では自衛隊の本務ではない、ということはわかりますが、じゃあ、誰が事故を収束させるのか決まらないまま、それで再稼動をよし、というわけにもいきませんね? (p140)
*本当の保守というのは、原発の再稼動にこだわったり、経済成長を追い求めたり、ということではなくて、我が国の美しい国土や伝統文化を守る、ということではないですかね? (p141)
*原発事故で誰が最後に残るのか。「日本人は要請に従うはずだ」とは誰も保証できないし、するべきでもない。残留する法的責任を負い、事故に対応できる技術と装備を持つ機関は、現在のところ存在しない。 (p145)
*自衛隊法では、自衛隊ができることが限定列挙のポジティブリスト方式になっていて、内閣総理大臣が命令しない限り自衛隊は出動できないし、内閣総理大臣が要請したとしてもその要請に従う保証はない(中略)集団的自衛権の解釈変更を機に、自衛権法を、各国の軍隊並みに、行ってはならない禁止事項のみを列挙するネガティヴリスト方式に変更しなくてはならないのだ。 (p148)
*この国ではつねに、何千人もの記者を擁する大新聞ではなく、数十人規模の週刊誌か、あるいは個人のフリージャーナリストが、権力者の心胆を寒からしめるスクープを放つ。記者クラブ会員社の記者にとっては、大臣のスキャンダルを追及するよりも、大臣の家族の誕生日を知ることのほうが重要な仕事となっている。 (p163)
*政治のいうことに従わないと出世はさせないぞという脅し、それが政治任用なのだ。集団的自衛権容認の閣議決定は、官の最後の砦である内閣法制局が政にひざまずいた瞬間ともいえる。 (p169)
*もし送電線に支障を来し発電した電気を送り出せない、そんな事態に陥れば、エネルギーが蓄積され、原発自体をスクラム(緊急停止)したとしても、外部電源か非常用電源かで冷却し続けない限り、崩壊熱で炉心がメルトダウンする。 (p183)
*原発の再稼動に費やすためのコストを送電網の増強や大型蓄電池の整備、それから揚水発電所の建設に振り向ければ、原発はいらないはずだ。 (p258)
*天皇不親政の原則と巷間いわれてはいるが、あくまでそれは我が国の伝統として不親政の場合が多いということに鑑み、「原則」と称しているに過ぎない。日本国では、伝統的に平時は天皇不親政ではあるが、世が乱れたときには、世を立て直すために、例外的に天皇陛下に治政に登場していただく��合があるのだ。 (p323)
*日本の憲法がいう、いわゆる「象徴天皇」は、単にシンボルなどではなく、日本的な伝統や文化、そして民族の共生さらに統合と融合の象徴としての「霊性」を持った存在として捉えるべきであろう (p324)
*今上陛下への請願の送付先 (p334)
〒100-8968
東京都千代田区永田町1-6-1
内閣官房内閣総務官室
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「原発ホワイトアウト」に続く官僚と電力の闇を扱った小説。なかなか読みごたえがあった。しかし救いがないように思えた。
発送電分離を阻止するために原発再稼働を急ぐこと、現首相のプライオリティーは集団的自衛権関連の法案を通すことなどに付箋を貼った。著者は現行法での望みは天皇陛下への国民の声を届ける方法しかないと主張し、それを本書の望みとしているようだが、そんなことで望みが本当にあるのかが疑問に思えた。
キリスト者的にはやはり「不法のはびこる時代」としての視点が強まり、「目を覚まして祈る」事が望みなのだと思えた。
星四つ。
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原発ホワイトアウトの続編。仕事の関係上、前作が職場でかなり話題になったので、気になって本作を購入。前作は読んでいません。
本作は大きく分けると二部構成。前半は現実に即したノンフィクションちっくなストーリー展開。事実か否か、真偽のほどは確かめようもないですが、現実にこういう話があった、と思わせる力は凄い。後半部分は、完全なるフィクション。正直、後半部分だけなら読む価値は薄いかな。あまりに現実離れしすぎたないようで、真実味を欠いた話かと思いました。
エネルギー産業に携わる人は読む価値あり。
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原発の再稼働へ向けての動きが大きくなっている。
川内原発に続き、福井の高浜原発に対しても規制委はOKを出した。
将来に向けて、地域の人達の安全は保証されるのか?
30キロ圏内の自治体は沢山あるが、この全ての自治体の意見が反映されている訳ではないと思う。
本にあるような事が起きらない内に原発再稼働を諦めて欲しい。
これから日本の人口は減少して行くのに、何故原発再稼働が必要なのか知りたい。
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「脱原発依存」はOKで「原発ゼロ」はNG・・・
同じように聞こえるけど、OKのほうはゼロにするとは言ってないので、結局もとに戻したい人の言い方。
リアリティがあっておもしろいです。
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小説としてよりも、勉強として読んでいた。
勉強と言われたら気が進まない人も、立ち読みでもいいから182ページからを読んでほしい。
身にせまってくる。
川内原発から自宅までの距離を測ってしまった。
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前作ホワイトアウトに続く、作者の力作。福島原発の収束が進まない中、原発再稼働が着々と進む方向の時、柏崎原発が事故で関東一帯が汚染地域となる。関西先頭が進む中、様々な事件が進展する。
避難計画は、住民の安全のためになるかどうか、というところにその本質があるのではなく、原発を再稼働させるため住民との関係でどのように納得感を醸成するのか、そこに本質ある。
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著者は現役キャリア官僚である。日本の原発行政の無謀さを訴える。文章は作家ではないから上手くは無いが、これは(帯にもある通り)95%ノンフィクションなのである。特に天皇と首相夫人との章は良い。著者の正体がばれたら、即クビだろう。それで済めば御の字で、おそらく冤罪で逮捕で社会的に抹殺となろう。
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こりゃ分類が難しい本だな。
小説でもあり、知識本でもあり、ノンフィクションでもあり。その3つがそれぞれ少しずつの要素を持ち合って合わさった感じの本。(そういう意味では、非常に面白いものの、特にストーリー的要素については、どこまで真実なのかは気を付けて読む必要があると思う。)
最後の方の、想定事故ストーリーはなかなか興味深かったです。そこまで、絶対一般の人、想定してなさそうだなと思って。妙に、起こり得そうないろいろな官僚・政界ロジックがちりばめられていて、実際、そんな風になるかも、っていう感じの。皆、それでも原発欲しいかなぁ?
そりゃさー、電力会社の何かとか、実は国家の原子力研究のために、とか、いろいろ理由はあるのかもしれないが。 やっぱ破壊力が半端ないよねぇ。
という考えを思い起こさせるような本です。
裏の、電力会社と政界の話が、なんかなるほどなぁという感じでした。最近、田中角栄の本を読んで、政界と社会の金銭関係みたいなものを垣間見ていたから余計に。
選挙って、お金かからないようにやれないものなのかしら?
脱税疑惑を周りが敢えて落とし込むべく仕掛けられる、っていうのも、ほぉぉという感じであった。