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自閉症っていまいちどういうことかわからなかったのだがわかった。世界には色々なひとがいるということが。
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作者の文章が明晰で訳者の文章もわかりやすいため、とてもするすると気持ちよく読めるノンフィクション。
「自閉症スペクトラム」という言葉だけは知っていて、おおまかなイメージはもっていたけど、自閉症者が言葉ではなくイメージでとらえること、感覚がものすごく鋭敏なので騒音や触感が苦痛になってしまうことなどが、あらためてよくわかった。グランディンさんが、ほかの人も同じようにイメージで理解しているものだと思っていて、そうじゃないことを知ったのは40代になってから、とか、すごくおもしろい。一般の人々の行うような、抽象化された全体像をイメージする、あいまいな思考法は、彼女から見れば「障害」だというのは、ほんとにそうなのかもね~。見方が変わるわ。
そして、彼女が家畜の生育環境や、食肉にするために家畜を殺すときできるだけ苦痛のない方法をとる、という方面でものすごくいろいろな業績をあげた人なのだということをはじめて知った。それというのも、彼女自身が動物の思考方法がよくわかるから。反面、人間の感情を察することはいまだに苦手で、そこから『火星の人類学者』という言葉が出てきたんですね。ていうか、オリバー・サックスの同名の著書は彼女のことだったんだ。
ほんとにいろいろ知らないことが多くて、とてもおもしろかったし、「売り込みファイルをつくろう」の項(p.175)などは、わたし自身参考になった。
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テンプル・グランディンの伝記。
彼女が生まれたのは1947年。まだ自閉症が「知恵遅れ」や「統合失調症」や「親の愛情不足」ととらえられていた時代。
逆境にあって、彼女が得意分野を伸ばすことができたのは、母の存在がおおきかった。親が、子どもの個性を殺さず、能力を発揮できる場を与えることがいかに重要かということは障がいのあるなしに関係な
テンプル・グランディンのもつ能力は、文字がなく、捕食される可能性と隣り合わせだった時代には、非常に貴重な能力であったに違いなく、その能力は人類にとってなくてはならない能力だったからこそ受け継がれてきたのではないか。読み書きが重要な社会になってから、口を利くのも字を書くのも難しい自閉症の人たちの中にある優れた資質を、人類は自ら捨ててきたのだと思った。
この本は、人類が自閉症をどうとらえてきたかという歴史に着目し、自閉症の人が幸せを感じ、能力を生かすためにはどうしたらいいかということを考えさせる。
障がい者=福祉、なにかをしてあげる、弱者だから守ってやる、というのではなく、違う能力を持つ人たちととらえれば、世の中はもっと豊かで、可能性に満ちたものになるだろう。
本文の間に挟まれている解説が、わかりやすく非常にためになる。子ども向けの本だが、大人が読んでも示唆に満ちた素晴らしい本だと感じられると思う。
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自閉症ということがまだ一般に認知されていないころだったというのもあるけど,基本的には,「普通」という錯覚を持った人がマイノリティを苦しめる構造は今も変わっていないと思う。
児童書なんだけど,こういう本に接触できる子どもがどれだけいるのか。。。
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学校にもどったテンプルは,寮の自分の部屋で,廃材をつかって“締めつけ機”をつくり始めました。友だちのジャッキーは,そのときのことをよくおぼえています。「こんな妙ちきりんなもの,見たことないと思いました。ベニヤ板をV字形に組みたててあって,そこに頭から入っていくんです。テンプルはその“締めつけ機”で自分をはさんでくれとわたしに言い,三十分か四十五分したらまたもどってきてそこから出してほしい,と頼みました。『ほんとにひとりにしてだいじょうぶ?』ってきいたんですけど,『だいじょうぶ,だいじょうぶ!』って答えるんですよ。だから,言われたとおり,しばらくたってからもどって,出してあげました」
学校心理学者の先生も,テンプルがつくった機械のことを耳にしましたが,どういうことかまったく理解できませんでした。おかしな装置だと思い,これは“病んだ心”が生みだしたものに違いない,と考えました。先生の部屋でかわした会話は,テンプルの脳裏に焼きついています。自分のほうがよくわかっていると言わんばかりの,ひとを見くだしたような声で,先生はこう切り出したのです。「アイデンティティ(自分は何者であるか,ということ)の問題というわけではないだろう? 違うかね? つまり,わたしたちは自分を牛とか,なにかそういう動物だと思ったりはしていな。そうじゃないかな?」
「わたしはもちろん,自分を牛だともほかの動物だとも思っちゃいません! 先生は自分を牛だと思ってらっしゃるんですか?」テンプルは思いました。ほんとうに先生が牛だったらいいのに! なにしろ,心理学者より牛のほうがよっぽど,テンプルの役にたっていましたから。
心理学者の先生は,テンプルから“締めつけ機”をとりあげようとしました。お母さんに連絡して,あれは娘さんにとってよくない,と説得しようとさえしました。でも,この装置のことでテンプルの味方になってくれた大人がいました。テンプルにとって,とても重要な人物――大好きな教師,科学を教えていたカーロック先生です。
カーロック先生はロケットの模型をつくるクラブの顧問をしていて,テンプルもそのクラブに入っていました。青い目をした,おだやかな話しかたをする先生で,しんぼう強く,親切でした。先生は,テンプルがすばらしい頭脳をもっていることに気づきました。そして,これはその頭脳を生かすチャンスだと思ったのです。
「もっといい“締めつけ機”をつくってみよう」カーロック先生は,そう提案しました。「それで科学実験をおこなうんだ。“締めつけ機”をほかのひとに使ってもらうんだよ。きみ以外の人間が使っても同じように緊張がほぐれるかどうか,試してごらん!」
それがテンプル・グランディンの,科学者としての第一歩でした。(pp.107-109)
テンプルの画期的なデザインの多くは,その中心に牛たちへの理解がありました。牛はどこへ行きたがるのか? 牛たちは,家へ帰りたがるのです。円を描くように動こうとし,仲間の牛たちと一緒にいたがります。いちばん好むのは,一列になってカーブした道を歩くことです。そこで,牛をスクイーズシュートや薬浴槽,肥育用の囲いに入れたいときには,牛の自然な習性にしたがって,一列に並んで歩かせればよいわけです。テンプルは,その通路の両側に壁をつくりました。牛たちを不安にさせるものが目に入らないようにするためです。動くものや,べつの方向に向かって歩く牛たち,人間。そういうもののかわりに見えるのは,牛たちがいちばん安心できるもの,つまり自分のすぐ前を行く二頭か三頭の仲間です。そしてその仲間は,カーブした道を不安のない場所に向かって進んでいるのです。(pp.152-153)
あるひとは,集中力が違うと言い,あるひとはスタミナが違うと言います。自閉症者特有の“こだわり”だと言うひともいます。高校の学校心理学者がなんとか捨てさせようとした,あの“こだわり”です。それをなんと呼ぶにしろ,ひとつだけたしかなことがあります。とことんまでのめりこみ,惜しみなく情熱を傾けるテンプルは,動物のためならおよそどんなことにでも,すすんで立ちむかいました。(p.154)
「子ども時代に,心理学者じゃなく,スピーチセラピストともっと多くの時間をすごしていればよかった,と思いますよ」と,テンプルはふりかえります。(p.200)
「ひとはたいてい,ごくあいまいにものを考えています」四十代になって初めて,ほかのひとたちが頭に描いているのは一般化した考えだということに気づき,テンプルは仰天しました。ひとびとが思いうかべているのは教会の尖塔や犬や靴といったものの一般的なイメージであって,テンプルがなにかを考えるときのように,特定のものがあれこれと細部までははっきり脳裏に映し出されているわけではないのです。テンプルからすれば,それは“障害”です。はっきりものを見たり,音を聞きとったりできないのと同じようなものですから。「わたしは,自分の思考方法を気に入っています」と,テンプルは言います。自閉症はテンプルに「究極のバーチャルリアリティ・システム」を授けてくれたのです。鮮明で正確な“絵”を思いうかべ,心の目で見ることのできる力,それを頭の中で自在に操作できる力。自閉症のおかげで,牛や馬,豚の感情や感覚のシステムに身をおくことができ,動物たちの世界に暮らし,動物と同じように考え,同じように感じるという,とてもめずらしい能力をもつこともできました。自閉症が,こうしたとくべつな力をくれたのです。「自閉症はわたしの一部」と,テンプルは言います。(pp.201-202)
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この人は才能のある自閉症者で、こういう幸福な人が話題になるのは一種の生存者バイアスなのかもしれないとも思った。また、両親が離婚していると言うのも気になった。確かに障害を持ったお子さんの両親が離婚をされていると言う話をよく聞く。
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自閉症といっても、人それぞれですが、著者の場合、学校の鐘が、頭が割れそうに響いて感じられたり、それなのに、人の言葉はぼんやりとして良く聞き取れなかったりまた、皮膚への刺激がとても辛く感じたそうです。生きる事が苦痛だらけだった彼女を、父親は施設に入れてしまえと思っていたそうですが、母親は彼女に適した物を捜そうと様々な事を試し、ある日、彼女の持つ特性がはっきりとわかったのです。
そのこだわりについて、また、ある医師はやめさせようとしましたが、別のある医師はモチベーションにできるように考えてくれたと。こうした出会いがあって、自分の才能を生かし、世界に2人とない素晴らしい仕事ができるまでになった実在の人物の話です。
学校にも障害と呼ばれるものを持つ子どもは6%いると言われていましたが、最近では調べが進んだ為か、もう少し多くなっているようです。
現状では、親が子どもの特性を認めない、受け入れない場合も多く見られます。
どんな子どもも、1人1人に向き合い、どんな特性があるのかをわかり、モチベーションにつなげる事ができたら、素晴らしい仕事が生まれるかもしれないのに。と、残念に思います。
多くの人がこの本を読むことを願います。
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自閉症という特性を生かして自立し、社会貢献している姿に感銘を受けた。
テンプルさんの人生に大切なもの、それは有意義で充実した生活。
「動物たちの扱いを改善しようと行動を起こすとき、自閉症の子どもを持つお母さんの力になろうとするとき、学生たちがよい仕事につけるよう手助けするとき・・・それがわたしの生きがいです。じつにシンプルな話です。」
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https://opac.nittai.ac.jp/carinopaclink.htm?OAL=SB00543801