紙の本
新聞連載を基にまとめた一冊
2024/01/18 18:50
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦時中の北海道綴方教育連盟事件。子どもに暮らしをありのままに描写させる作文(綴方)指導をしていた教員たちが治安維持法違反容疑に問われ、捜査で「共産主義者」に仕立て上げられた。三浦綾子さん著「銃口」の題材にもなったこの事件について、勾留されていた元教員の「獄中メモ」を発見した北海道新聞の記者が、過酷な取り調べや調書のでっち上げなど全容を丹念に掘り起こした良作だ。
当事者や家族の苦しみはもちろん、治安維持法というものが、いかになし崩し的に拡大解釈され、あらゆる活動を危険視していったか、その怖さがよく分かる。
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http://blog.goo.ne.jp/abcde1944/e/7bfcc397e488e30468123d22ec711743
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「警察・検察が一方的に犯罪行為を認定して取り締まるというよう
なことはない」
大正末期に治安維持法が制定された時、政府はこのように布告し
た。だが、この鬼子のような法は徐々に拡大解釈をされるようになり、
遂には改正により「目的遂行罪」が導入された。
この治安維持法違反に問われた教師たちがいた。「北海道綴方教育
連盟事件」は、作家・三浦綾子の最後の長編となった『銃口』のモデル
でもある。
生徒に作文の指導をする。どこが罪なのかと思う。治安維持法違反に
問われ、身柄を拘束され、でっち上げの調書を作られた人たちは皆、
教育熱心で生徒たちに慕われていた教師だった。
本書は2013年に元教師の遺品から発見された獄中で記されたメモが
発見されたのをきっかけに、遺族や元教え子たちを訪ね、地道な取材
を積み重ねて書かれた渾身のノンフィクションだ。
長期間に渡る拘禁、取り調べでの脅しや暴力、共産主義者でもない
のに生徒への作文指導が共産主義に基づいたものだとの問い詰め
られる。
特高の悪行は小林多喜二の壮絶な拷問死に象徴されるだろう。それ
は当時の皇国史観を信じ、生徒たちに良き少国民になれと教えていた
教師たちにまで及んでいた。
どれほど無念だったかと思う。貧しい生活でも、その生活をありのまま
に作文に綴ること。みなと助け合って生きること。そんなことを教えるこ
とさえ、思想犯とされたのだ。こんなバカな話はない。
生徒たちが書いた作文のどこにも、共産主義の芽さえいなのだ。何もな
いところに煙を立てるどころか、大火災にして、教師たちの一生を潰した、
思想統制の時代があった。
終戦後、日本の官庁は都合の悪い書類は焼却処分にした。この事件の
公判記録も同様に焼却処分されたが、教師たちを担当した弁護士が
命令に背いて古い記録を保管していたことと、獄中から密かにメモが
持ち出されていたことで、事件の概要を現在でも掴むことができる。
本書は特定秘密保護法の成立前後に北海道新聞に連載された記事の
書籍化なので治安維持法と特定秘密保護法を絡めている。だが、現在
は特定秘密保護法よりも危険な「テロ等準備罪」という名の共謀罪が成
立している。しかも「治安維持法は適法」と言い切った法務大臣の下で
だ。
再び、何の罪も犯していない人たちが、この時の教師たちのように罪
に問われないとは言い切れないのだ。
信奉したはずもない思想で裁かれた教師たちの多くは、治安維持法違反
で逮捕された過去について、生前は家族にさえ語らなかったと言う。
「取り調べの実態を後世の人に知ってもらうことは、メモを残した父の
望むことでしょう。読んでくれた人たちに、私は問い掛けたい。私の父
を罪人だと思いますか、と」
著者が探し当てた、獄中メモを残した元教師の遺族は言う。断言できる。
「あなたのお父様をはじめとした人たちは、罪人などではありません」と。
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三浦綾子「銃口」の元になった、綴方教育連盟事件についての本。
治安維持法と、思想弾圧について調べたことが書いてある。
秘密保護法施行との関わりもあって、興味深い本だった。
ただ、内容があちこちに跳ぶために、若干読みにくい。
「銃口」を読んでいなかったら、私には読み通すことができなかったかもしれない。
FBでの紹介を見て、購入した本。