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「バンクーバー朝日」の後日談。
野球選手を引退し、太平洋戦争直前の日本にやってきたテディが日本軍の意向でアメリカ向けの短波放送ラジオの仕事に関わっていく。
軍に利用されている自分に対してのテディの苦悩が伝わり、また戦争の愚かさも再認識できた作品だった。
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20141229
バンクーバー朝日に感動した。登場人物の中でも好きになったテディのその後の話ということで、早速買って読んでみた。
カナダでは人種差別と闘い、白人と野球で闘ってきたテディが、今度は戦争と闘うという、テディの激動の人生を通して、当時の日本、アメリカ、カナダのことを知ることが出来た。
作者がテディの子どもだったという最後の記述に静かな感動を覚えた。
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カナダ・バンクーバーで日系人だけで組織された野球チーム「バンクー
バー朝日」。その初代エースピッチャーであり、若くして引退したテディ
古本は日本の真珠湾攻撃の数か月前にはるばる日本へやって来た。
「古本」は養家の姓だ。テディには養父母のほかに実の両親がいる。
体を壊し、自ら動くことのできない実父からテディは頼みごとをされる。
長男が出征し、経済的に困窮しているテディの祖父母が熊本県にいる。
祖父母を説得し、カナダへ連れて来てくれないか。テディに断る理由も
ない。まだ見ぬ日本も見てみたい。長い船旅の果て、テディは横浜港へ
上陸する。
この日本への旅が、その後のテディの運命を大きく変えることになる。
前作『バンクーバー朝日 日系人野球チームの奇跡』の続編となる
事実をベースにした小説だが、前作を読んでいないくても楽しめる
のではないかな。
大西洋戦争中に対外宣伝放送として有名なのは「東京ローズ」の「ゼロ・
アワー」だろう。「東京ローズ」を扱った書籍もあるし、テレビ番組で取り
上げるられることもあったので知ってはいた。
しかし、「テディーズ・アワー」については全く知らなかった。日本に帰国
したテディ古本が日本放送協会の短波放送で北米向けに反戦放送を
行い、日米が開戦してからは東京・大森にあった俘虜収容所のアメリカ
人捕虜を出演させ、その消息を北米に伝えていた。
勿論、人道的な思惑で始められた放送ではない。放送を主導していたの
は軍部であるし、アメリカ国内の戦意高揚をくじくのが狙いだった。
だが、ある時を境にテディは出演する捕虜との会話のなかで暗号を使い
始める。それは、日本とカナダ、そしてアメリカの大学で学んだテディが
どうにかして日本と北米の間をつなぎ、少しでも戦火をおさめたいとの
想いがあったのではないか。
前作同様、どこまでが史実でどこからが著者の創作であるか判断が
難しい。それでも、東京ローズ同様に海外向けの放送に協力させられ
た人の人生の一端が垣間見られる。
「テディーズ・アワー」についてはノンフィクション作家に掘り起してもらい
たい題材だな。誰か、調べて書いてくれないだろうか。
尚、テディ古本は戦中に出会った女性と結婚し、1974年にバンクーバー
へ一時帰国。その時に、戦中に強制収容所で亡くなった日系人の慰霊碑
を訪れている。カナダへの一時帰国から5年後に日本で亡くなり、奥様と
共に横浜港の見える墓地に眠っているという。