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2015/1/10 メトロ書店御影クラッセ店にて購入。
2017/2/28〜3/8
居酒屋本でお馴染みの太田和彦さんの、古い映画を題材にした連作短編集。初出は舞台となった古い名作映画館にちなんだ「黄金座の物語」という書名であったようだが、文庫化に伴い、太田さんといえば居酒屋、ということで、もう一つの舞台であった居酒屋吟月にちなんだ書名に。
これまでお酒に関するエッセイしか読んでいなかったが、なかなかどうして、太田さん小説も上手いではないですか。(単行本は全く売れなかった、とあとがきに書いておられたが)良い小説が必ずしもうれる訳ではない好例であろう。
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主人公は、安定しているもののどこかつまらない日々を送っていた小さな役所の職員だった。そんな彼が、たまたま黄金座という小さな映画館で古い1930~40年代の映画を観て、その後に吟月というこれまた小さな居酒屋に向かった。その空間を中心に、ストーリーが展開して行く。主人公の抱いたある女性への淡い恋とも思われる感情が明確に書かれておらず、その点では極めて小説的である。吟月での交友関係が物語の最後にはまるで夢だったかのように雲散霧消してしまう所に無常を感じた。読後感としてはそんなに疲れた感覚もなく、読みやすい小説だ。
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ふと、自転車で橋を渡って足を踏み入れたその町、黄金町には、古びた映画館があった。
その名も『黄金座』
そこは何故か、戦前戦後の、昭和の古い映画ばかりがかかる。
主人公は毎月一度、そこで映画を観て、帰りに“吟月”という居酒屋による。
そこでふと知り合った大学教授と映画の話をして、だんだんと知り合いも増えて…
何故かその街には昭和の商店街が残り、知り合いになる人々は昔の映画スターに似ている。
一章ごとに、古い映画が紹介されている。
私は1本も観たことはないが、出演していたスターの名前は少し知っている。
毎回、映画の解説と、主人公が帰りに立ち寄る吟月での、主人公と先生との感想。
先生はどの映画も観たことがあるようだ。
勤め先の役所も5時きっかりに上がり、人づきあいと言うものはあまりしない主人公も、黄金町では、先生とお嬢さん、編集者、居酒屋のマスター、わけありのヤクザ、わけありのバーのマスターなどと、次々と知り合いが出来る。
しかし、黄金町は実在する町なのだろうか?
吟月マスターの何気ない一言…
「私がシベリヤから帰ったのを知って呼んでくれたんですよ」
……いつの話だーーーー!?(笑)
日本映画の良さ、日本映画が残した日本の良さを、たくさん知ることが出来ました。
今度、観てみたいなあ…
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作者は居酒屋関係のエッセイが多いのだけれどこれは一風変わった古い邦画の解説。
そこに居酒屋を囲む人間関係のドラマを織り交ぜている。
決して幸せな終章ではないけれど読んでいてほのぼのする場面があり楽しめた。