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書店で脳科学と仏教を結び付けた内容の本をよく見かけるようになりました。最近の潮流のようです。
何冊か読んでみましたが、科学者が書いたものは、理系知識がベースで内容的に理解しづらかったため、仏教徒側の本を手に取りました。
スリランカ上座仏教長老であるスマナサーラ氏がこの現代的なテーマをどう語るのかにも興味があります。
講演内容を文字に起こしたものということで、師は聴衆を前にして、わかりやすくユーモアたっぷりに語っています。
サブタイトルは"悩みを生み出す「大脳」と「原始脳」のメカニズム"。
大脳はわかるけれど、原始脳とは?と思ったら、原始人や動物の持つ、生命維持のためだけに用いられる脳を指すそうです。
「原始脳」は、生存欲に根差したもので、生命を脅かされる恐怖心からの怒りや嫉妬、憎しみなどを引き起こすもの。
それは現在の人間の頭にもあり、サイズも変わっていないのだそう。
そうした、生きていくうえでの本質的な怖れや不安を、抑えるのが、「大脳」の出すシグナル。
こちらは自己鍛錬で磨くことができ、原始脳をなだめる力がある、つまりは自分の負の感情をコントロールできるということです。
その解消法として、8つのプログラムが紹介されていました。
1. 鵜呑みにする癖を止める。
2. 思考妄想を管理する。
3. 言葉を管理する。
4. 行為を管理する。
5. 仕事を選ぶ。
6. 努力する。
7. 目覚める。
8. 集中力をつける。
これで確かに、脳の話が仏教の内容に即してきました。
ブッダは、心について明確に説いており、それは脳科学ではないものの、心の化学だと師は言います。逆に現代科学では、心の存在が語られないとのこと。
仏教を宗教ではなく、智慧だとする見地からすると、たしかに科学への結びつきにも納得がいきます。
「学問と違っていつでも人生から離れないのが智慧」とする師。
原始脳の持つ存在欲を「執着」とみなし、そこからの脱し方を考えるに至っては、脳科学と仏教がぴったりと合わさることになります。
「死んでしまうのではないか」という見えない怯えにとらわれない、つまり未来のことを気にすることなく、今という瞬間を充実して過ごすことに、仏教の教えがあるということです。
8つのプログラムの具体的な方法も語られました。
1. 鵜呑みにする癖を止める。→データを集め調べて、自分で考える。
2. 思考妄想を管理する。→悪い考え・想像・妄想を止めるように努力。
3. 言葉を管理する。→悪い言葉ではなく、美しい言葉を使う。
4. 行為を管理する。→自分の行動を省みる。
5. 仕事を選ぶ。→仕事の内容を取捨選択する。
6. 努力する。→趣味になるくらいに努力する。
7. 目覚める。→今を大事にする。
8. 集中力をつける。→心の喜びとして。
どれもさほど難しくないものばかり。やれる範囲で改善していけそうです。