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「山師M Mの旋律」
我々がお互いに憎しみ合い、罵り合うことで得をする誰かがいるとすれば、本当に憎むべきはその誰かであって、踊らされるピエロはあらかじめ用意されたシナリオをトレースする役者の一人に過ぎない・・・。
「山師M」の主題は「分断統治された日本人の悲哀を描く」ことらしいです。
主人公:M
職業:経営コンサルタント
特技:アジ演説
嫌いなもの:平和主義者のヒューマニズム
影響された人物:ニーチェ
性格:自分に酔う
Mは2011年初頭よりベーシック・インカム(BI)を主張しだします。BIとは「日本国民全員に一定の流通貨幣を給付する」ものであり、Mはこの政策は国民が思っている以上に実現可能なもので且つ国の財政にとって効果的なものであると主張しています。またMの強みとして彼は自分の主張について必ずリスクとウィークポイントの存在を説明するというのがあります。この巧みな戦略によって、Mは演説者であり続けれるということです。
物語は基本的にMが事務所を始めとする場所で誰かに彼の主張、もしくは相手の相談に乗る形で進行していきます。様々なビジネス対策や言葉が出てきます。フィクションですけど何か不思議な感じです。またこの政策は実際出来るだろうか?とか考えながらこのMのアジ演説を読むと違った感想を覚えるかもしれません。
しかし私はこの本を読み終えてもイマイチしっくりきませんでした。Mが「この国は今大変だ。だからこの策を実行するべきだ」と演説し、それを聴く人々が居る。それが最後まで続いたという感じです。なので面白さを感じる作品ではありませんでした。どちらかと言うと私は一人の演説を聞く者としてそこに居たという感じです。
ですが、著者のあとがきにあった「我々がお互いに憎しみ合い、罵り合うことで得をする誰かがいるとすれば、本当に憎むべきはその誰かであって、踊らされるピエロはあらかじめ用意されたシナリオをトレースする役者の一人に過ぎない・・・」という文章を読んで、Mの役割を自分なりに解釈出来ました。
Mはピエロなのかそれとも得をする誰かなのか。国民はピエロなのかそれとも得をする誰かなのか。
うーーむ。