紙の本
イスラム教の考え方を知るのに極めて有用
2015/09/02 11:48
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:osarusan - この投稿者のレビュー一覧を見る
一言で言えばすさまじい本だと言ってよい。著者の中田考氏は非常に頭脳明晰なイスラム法学者だが、この本では完全に一イスラム教徒としてイスラム教徒の立場からものを書いている。そのため、例えば政教分離のように現代人にとって或る種常識化していると思われる事柄を簡単に否定するような記述が、こともなげに記されたりしている。そして、そういったことを目にすることができる、という点にこそ本書の価値はあり、それゆえに(また、著者の頭脳明晰さと相俟って)本書は凡百のイスラム教概説から区別されると言える。
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イスラームは神が一人、法がひとつ、人間は法に従う。だから領域国家や統治機構は必要ない。異教徒からの攻撃にあった場合、イスラーム社会を守るための防衛がジハード。昨晩観た大河ドラマ花燃ゆで、吉田松蔭は、開国を迫る異国から日本国の独立を守りたいがために開国をすすめる老中の殺計画を企ててしまうほどの焦り高まる気持ち(至誠)が誰にも届かないことを野山獄で悲しみまだ自分の努力が足りないと叫ぶ…ドラマと本の印象がかぶっているように感じました。
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中田考氏の純粋でかつ平易で分かりやすいイスラームの世界観の解説。これがムスリムの一般的な解釈と一致しているか分かりませんが、イスラームが目指す理想も理解できるし、理想が引き起こす危険性も理解しました。
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今起きていることをイスラームの側から理解したいと思い読んでみたが、今ひとつ釈然としない。
“異教徒”の思考に毒されているからなのか。
50頁に以下の記述があった。
原理原則としては反論のしようがないが、如何様にも自身の行為を正当化できるという点では非常に都合がいい考え方だと思う。
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そもそもイスラームは解釈に開かれた宗教であって、法源はシャーリアだけですから、信者一人ひとりが『クルアーン』と『ハディース』を読んで、そこから自分自身で判断していくのが望ましい。イスラームとは本来そういうものなのです。
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本当にイスラムを知らない初心者に向けて、且つ最近のニュースの過剰報道によりイスラムに対する先入観や偏見を持っている方へ書かれた本。超基本的事項をかなりわかりやすく簡潔にまとめられているので抵抗感は薄れるが、ほとんど踏み込んだ話はないのでもっと詳しく知りたい場合は物足りないと思う。この本を足がかりとして更に別の書物で知識を補っていきたい。
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単純にイスラームの世界のことを知ってみたいという気軽な気持ちで読んだので、ショックを受けました。多くの日本人が持っているであろうイスラームに対するステレオタイプが捨て切れず、理解し難い内容でした。
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2016.2.3
この本を読んで、イスラム教って意外とざっくりした寛容な宗教なんだなと思ったけど、ジハードとかISがクローズアップされすぎてるのかな。
世界には色んな宗教があって、全く価値観が違う人が居るということをちゃんと理解することが大事ですね。
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イスラームの論理を内在化させた中田考さんがイスラームについて書いた本なんだけど、今まで読んだ彼の本の中で一番わかりやすくまとまっている。
イスラームの大事なのは法だって話とか、カリフ制は独裁制じゃないとか。今の領域国民国家の問題は人間の移動が自由でないことって指摘は目を開かされた感じ。イスラームが共産主義に並ぶような理想を目指す宗教と捉えるようになった。
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イスラーム 生と死と聖戦
イスラーム神学が、世界五分前創造仮説や多世界解釈を用いていることは面白かった。現に、今の量子力学では、多世界解釈も考えられるもので、このようにイスラームも
そのような世界観を創出していたと知り、驚いた。
全般的に、イスラームのゆるいつながりの観点から見ると、現在の国民国家というものがいかに厳しい縛りであり、人々が知らず知らずのうちのリヴァイアサンに服従していることがわかる。イスラームについては世界史でかじった程度で、あまりわからなかったが、中田さんの記述はとても分かりやすく、入門書として適していた。
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ムスリムの死生観の解説本。ISによるテロが世界中で頻発している昨今をイスラムの歴史やコーランの解説を通して考える。イスラムの考えではすべての人間が法に従うものであるという。ここでいう法とは国家の法律ではなくコーランのこと。また著者は最後のカリフが1924年に退位したことで、90年にもわたってカリフが崩壊したことについても指摘する。カリフとは預言者ムハンマドの代理人でイスラムの中で正当性のある唯一の政治的指導者。その不在が今の混沌をもたらしている。
以下個人的感想。今の混沌は指導者不在の中でイスラム原理主義者がコーランを勝手に解釈してドンパチやっているものと理解した。解決の糸口が見えない複雑な世界情勢に置かれていると感じる。だからといって極端な話に向かってはいけない。差別を受けて死に場所を求めている輩に対してトランプ氏の排他主義は解決どころか情勢を泥沼にしてしまうのではなかろうか。
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2015年刊行。著者は元同志社大学神学部教授。イスラム教徒。
本書は、市井・日常・一般的という観点からのイスラム教を簡明に開陳しようと試みるものだ。
しかし、そもそも一神教に限らず、崇拝の対象たる「神」が政治「権力」と結合した時の危険性、市井の人々が受ける害悪に余りに牧歌的で、開いた口がふさがらなかった。
また、著者の言う、そして理想とする、カリフ制を含むイスラム教の持つ政治制度の理念形が、過去に存在したことがあるのか、夢物語ではないかとの疑義も多々起きたところ。
しかも、権力作用を誤謬しているとしか思えない論が其処彼処に見える上、男女間のイスラム法的差異も頬っ被りだ。
これでは、イスラム教のマイナス面に目をつぶった解説、すなわち唯の信徒のステルスマーケティング、偶像化・崇拝になってしまい、説得力の欠片もない放談のレベルといわざるを得ない。
百歩譲って、その言がイスラム教の理念・理想であると承認しても、とても賛同できない内実だけが残されている感を強くしてしまう。
ただし、逆に言えば、イスラムの政教一致、あるいは政治の一側面を法と見た場合の、法教一致のあり方、その心性を垣間見せられた書とも言えそう。そういう意味で読む価値がないではない。
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わかりやすくて勉強になりました。
まず、⑴イスラム教の確実は、ムハンマドさんの行動とイスラーム法秩序。
⑵死生観としては、死ぬこと=眠ることで、もうじき訪れる最後の審判(セカイノオワリ)の時に一斉に起床して、地獄か天国またはその間の三つのどこに行くか決まる。
⑶肝心のジハードとは、さきの確実からずれるものに対して戦って死んでしまったらそれは最高の死に方でなんと天国へ直行することができる。
現代世界の一般論なるものは、⑴とは違うから、伝統をふただび呼び起こし、すばらしい世界にしよう!!その意味ではイスラーム国も理解できるっていう感じ。
偉そうに分析した自分が恥ずかしくなった。
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いや~おもしろかったわ。この人のことを知ったのが、3年ほど前のISにより邦人男性が殺害されてしまった時。その時は「なんとも怪しげな人だな」」と思っていたが、どんな人なのか興味が出てきてググったりしてみた。
その後、偶然自分が欠かさず聞いているMBSの「辺境ラジオ」にゲスト出演。その時初めてまとまった話をこの人の口から聞いて、その話し方と内容から「ちゃんとしたクールな学者(ムスリムの)」 とわかり、著書を何冊か日本に行ったときに買ってきた。
カリフ制の再興とかはよくわからないけど、言っていることは筋が通っている。現実的でありつつも理想をちゃんと語れるナイス・ガイだと思う。
人の移動を制限しない、社会が実現されたらなんと素晴らしいだろうか、と思わずにはいられない。
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読み終わった感想は「…よくわからん」でした。
とてもとても噛み砕いて書いているのはわかるんですが、それでも前提から「???」となってしまいました(自分自身の理解力の問題とは思うのですが)。
「西欧的な考え方とは土台からして異なる文化なんだろうな」と、少し踏み込んで実感できたのは大きな収穫でした。
あと、最近見たイスラームの人々のドキュメンタリーで、2人の人物が言い争いをしているシーンがあったのですが、片方が「神の名の下に」と言った途端、もう片方が相手の話を神妙に聞く…といった場面がありました。
この言葉の背後にある意味を考えるとそりゃ黙るな、と思い、少しでも理解できたのかなと感じています。
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北大生のシリア渡航計画、ISIによる湯川遥菜さんと後藤健二さんの
拘束・殺害事件で一躍注目を浴びたのが本書の著者である中田孝氏。
東京大学文学部イスラム学科の一期生であり、そのかなで唯一イスラム
教徒になった人。勿論、日本でも有数のイスラム法学者である。
その中田氏が宗教に対する知識のない人にも分かりやすくイスラム教を
解説している。
日本ではいわゆる「イスラム原理主義者」や「イスラム過激派」と称される
人や組織が報道されることが多いけ。しかし本来、イスラム教徒は寛容の
宗教だと思うんだ。
中世の十字軍だってキリスト教徒側が勝手に「異教徒征伐だぁ」って意気
込んで始めた。イスラム側としては寝耳に水だったはずだよね。だって、
キリスト教と違って宣教活動はしない宗教だから、キリスト教徒を勧誘した
なんて事実はないんだから。
スルタンが君臨したオスマン・トルコだって基本はイスラム教の帝国では
あったが、他の宗教も弾圧はしないとのゆるい姿勢だった。でも、スルタン
直属のイエニチェリ軍団は怖いけど…ボソ。
まぁ、イエニチェリ軍団の話は置いておくとして。だから、原理主義者や
過激派の行動には違和感を覚えていた。いや、それほどイスラム教に
詳しい訳じゃないんだけど、アラーさえ信じていればいいってのが基本
なんじゃないかと思っていた。
本書はそんな私の漠然とした感覚を裏付けてくれた。「剣かコーランか」
は間違いで、「剣か税かコーランか」なのだそうだ。税金さえ払えば異教徒
でも改宗する必要はないのだとか。
「剣かコーランか」じゃ随分とニュアンスが違っちゃうよね。改宗を迫って
いるように聞こえるもの。寛容さまるでなしになっちゃう。
それにジハードの解説。ここだけでも読む価値あり。原理主義者や過激
派の口にするジハードが、本来のジハードといかにかけ離れているか
が分かる。
「ジハードとは、イスラム教徒一人ひとりの心の戦いなのだ。イスラム教徒
でも誘惑に駆られることはある。たとえば、酒を飲みたいとか、たまには
羽目を外してみたいとか。そんなとき、堕落しそうになる自分を諌める心の
戦いが本当の”ジハード”だという。己との戦いなのだ。銃で撃ちあい、自爆
テロで敵を倒す戦いなど、決して聖戦と呼ばれるものではない。」
既に亡くなって久しいが、アフガニスタン北部同盟の最高指導者だった
マスードもジハードに関してこんなことを言っていたんだよな。
尚、本書ではISに対する見解も掲載されている。ISとのパイプを持っている
中田氏だが、あの組織に対してはかなり否定的な評価をしている。
一部の暴走したテロリストたちと、一般のイスラム教徒の方々を混同しない
為にもイスラム教の基本を知る為に押さえておきたい1冊だ。