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(2007.03.10読了)(2005.11.25購入)
「禁断の科学 軍事・遺伝子・コンピューター」池内了著、NHK知るを楽しむ、
宇宙論が専門のはずなのですが、この本では、科学者の社会的責任というような辺りの問題について論じています。人間が地球上にあふれて、人間のなすことが、地球生命全体にとって少なからぬ影響を与える時代になった現在、科学技術を野放しにしておく事は非常に危険です。科学研究に携わる人は、自分の研究の及ぼす影響について、無関心では困る時代であることを是非自覚して、責任を持って取り組んでほしいということになります。
興味に任せて突き進むのではなく、時には、自制が必要です。
軍事技術、原子力、遺伝子操作、IT技術、等、禁断の科学について論じています。あまりこの種の本にお目にかかったことがなかったので、興味深く読めました。
●予防原則(22頁)
「一般公衆の健康や環境に悪影響を与える可能性がある問題について、それを警告するものには立証責任はなく、それを実施しようとするものが全責任を負う」
●科学者は錠前屋(26頁)
科学者は鍵をなくした箱の錠を開けようとする錠前屋に似ている。錠前屋は、錠を開けることに熱心になればなるほど、鍵を開けることのみが目標となってしまい、開けた結果その箱から何が飛び出すかについて想像しなくなってしまう。
☆関連図書
「731部隊」常石敬一著、講談社現代新書、1995.07.20
「月をめざした二人の科学者」的川泰宣著、中公新書、2000.12.20
「アインシュタイン伝」矢野健太郎著、新潮文庫、1997.06.01
「朽ちていった命」岩本裕著、新潮文庫、2006.10.01
「原発列島を行く」鎌田慧著、集英社新書、2001.11.21
著者 池内 了(いけうち さとる)
1944年 兵庫県生まれ
京都大学理学部物理学科卒業
京都大学大学院理学研究科物理学専攻博士課程修了
宇宙論、銀河物理学を専攻
国立天文台教授、大阪大学理学部教授、名古屋大学大学院理学研究科教授、
早稲田大学国際教養学部教授
(2007年3月13日・記)
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NHK、ETV「この人この世界」の2005年12月は、池内了著『禁断の科学』。科学の倫理、技術社会のモラルを整理する。
科学の倫理と言えば、かつてはキリスト教の権威に抗するかどうかの時代があった。近代においてはなにより、軍事か平和かの論点が不可欠であった。
そこのところを「接近する軍事と科学」で明確にするが、近年の科学はロケット、原子力、情報化(ウィルス開発など)、遺伝子組み換えなど、「神の代役をする科学者」(最終回)とする、指摘される。
広島・長崎の原爆。科学者は原爆のデモンストレーションをどこかで行い「日本人やジャーナリストに見せる」案を提案する。この件で意見がわかれたが、「科学者が道義的に振る舞ったことを示すためのアリバイつくり」(48p)と、見る。
宇宙開発。人類が手軽に旅行すること。「限られたエリートが危険を承知の上で冒険する価値はあると思う」とする一方で、誰もが体験できるようにするために多額の経費(20億とも110億円とも)をかけて、「誰でもが体験できるわけでは(する必要も)ないのである」(78p)と、述べる。
アインシュタインは水爆実験の現実化を前に、「人類の破滅を避ける目標はほかのいろいろな目標に優先すべき」と訴えていると見解を明らかにする。
むすびに遺伝子組み換えを、「人体に悪影響を与えないか」「生態系の破壊に導かないか」などなど、「時間の審判というハードルを遵守する慎重さが求められる」とする。
報道に、書いてよいことと、書かない方がよいことがあるように思える。同じことは、科学にも。要は真理と倫理の間に、人間たる科学者の人類への貢献は≪何か≫の、「時間の審判」は常に意識されねばなるまい。
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[講師] 池内了「禁断の科学~軍事・遺伝子・コンピューター」
本書の説明
本書は8章で構成されており、科学と軍事の繋がりや、科学の進歩による危険性、そして科学者のあり方などを筆者の考えを交えながら書かれている。
興味を持ったこと
私が特に興味を持った話は、第8章神の代役をする科学者の遺伝子組み換えによりクローンの羊が誕生したということである。もし、この技術が進化すれば、クローンの人間も誕生してしまうのではないかと危機感を感じた。本書も優秀な遺伝子に改変し、「人の品種改良」が行われてしまうのではないかと危惧している。
本書の感想
現在、科学が進化し私たちの日常をより良くしているが、それが良い影響だけでなく戦争や核兵器など悪い影響もどんどん進化しているということに危機を感じた。実際、科学が急激に進歩したのは、戦争がきっかけであり、残虐な人体実験も行われた。このようにとめどなく進化していく中で何かしらの「規則」を作ることは必要であると感じた。本書にも遺伝子組み換えが成功した時、自体の重大性を考え、一時的に研究を中断する「モラトリアム」も呼びかけ、自主規制を基本としてガイドラインにしたがって実験をするようにしたという記載がある。しかし、あまり危険ではないと科学者が判断し、規制をどんどん緩め実験を進めているということから、事故や不具合が生じた時の色々な危険を見出し禁忌に触れぬよう進めていく必要があるのではないかと考えた。
この本を読んで 原子力や核兵器など私自身があまり知らなかったことを知ることができた。直接的に、人生に結びつけることは難しいが、このような歴史があるからこそ、現在の世界があるということを心に刻みたいと思う。(『NHK知るを楽しむ この人この世界 2005年12・1月』)(220004 2100115)。