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紙の本
小説宿神の成り立ちを味わう
2016/07/31 22:00
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書はいよいよ結びの巻となる。時代小説で平安時代を描くのは夢枕獏しかいないといっても過言ではない。この時代ほど小説の自由度が高く、また、ある程度の構想を持った作家でない限り、描くことはできないのかもしれない。ほとんどの時代小説は史実に基づいているが、それ以外の部分は作家の才能、構想力、信念、思い入れ、勉強の度合いなどで決まってくる。
この時代についての知識が膨大でなければ読者に馬鹿にされてしまう。なんだ、こんなこともしらないのかと。このシリーズはその点作家の平安時代への思い入れが存分に表現されていると言えよう。ただ、読者が満足するかどうかは分からない。すなわち、史実を如何に色付け、読者を楽しませるかが問われている。
その点、全4巻ではボリュームが不足していると感じた。たとえば、保元の乱、平治の乱一つ描くにしても、その乱の発生原因についてはやや物足りないと感じるのである。それは背景にある各勢力の描写が足りない、あるいは人物の性格ついての記述が足りないなど、色々上げることができよう。
しかし、そういう読者の不満を一々満たしていると、とても4冊には収まらないこともよく分かるし、作家の体力、精神力など年齢的なエネルギー量がむしろものを言ってくるのかもしれない。そこは我儘な読者にはよく分からない部分である。
本書は保元に続く、平治の乱から始まる。源平の戦いを描くような歴史小説ではないので、源氏の統領である義朝が戦死したり、乱後の源平にかかわる勢力争いについては深くは触れていない。一方で、盛遠こと文覚、急死した清盛については時代の動きとは直接関係がなくとも丁寧に描いている。とりわけ、佐藤義清こと西行法師については描写が細かい。
そこを歌で表現するせいか、歌の引用が極めて多い。これは巻を追って多くなる。歌に興味のない私などは取り残されてしまう。この時代の事物や歴史上の人物の行動で名の知れたものは数少ない。それがゆえに平安時代を描く作家は少ないといってもよいのだ。
この時代の登場人物が日々どのような生活を送っていたのかはわからない。また、どのようなことを考えていたのかも分からない。本書に登場する人物の行動や考え方はまさに21世紀を生きている我々とほぼ同じであるが、その時代がどうであったかは全く分からない。しかし、西行、清盛、文覚たちが21世紀の現代に生きていることを感じさせるだけでも本書4巻を読了する意味はある。
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