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紙の本
肉欲に堕ちても屈しない逞しさと矜持
2015/09/06 17:50
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投稿者:DSK - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルを見るにつけCA(キャビン・アテンダント)との呼び方は決して悪くはないものの、色気がないというか味気ないというか……官能小説のヒロインとしては席を失いつつある現状を鑑みるに、男女同権の主張は理解するものの呼称における女性らしさという長所を同時に失っているようにも思えてくる。「看護婦」と同様にむしろ女性の特権的呼称だったのでは?と思いたい、男からも女からも(意味合いは若干異なるが)憧れの職業としての地位を謳歌していた「スチュワーデス」が拉致監禁の末に無残な凌辱を繰り返される中で存外な逞しさも垣間見せる作品である。
本巻は1985年に出た作者の「黒本」デビュー作(通算では3作目)の再販本であり、加筆・修正の有無は不明ながらも10年の時を経て再販されるだけの内容ではあったと思う。
拉致監禁された国際線スチュワーデスへの色責めが続く凌辱の展開だが、肉欲に堕ちるのは早い。それこそ快楽の欲に目が眩んだかのような早堕ちである。だが、早堕ちでオンナのいやらしさを序盤から醸しながら、持ちかけられる取引には職業的矜持から頑として拒むことで色責めは延々と続くことになる。ここに本作の良さがある。玩具で弄ばれ、あれやこれやの責めに翻弄され、遂にはお尻まで貫かれても国際線を預かる23歳のスチュワーデスとして悪事には加担しない、決して屈しない逞しさが描かれている。心までは奪われないのである。
焦った悪漢どもは妹まで攫ってきて責め立て始める。ここで黒幕の存在も明かす遠回しな演出には小説らしい良さもあったのだが、さすがに妹まで毒牙にかかる段になるとピンチの色合いは濃くなり、とうとう……というところで場所を空の上(飛行中の機内)に移しても官能的な場面を盛り込むのは抜かりの無いところである。
様子がおかしいと気づいた彼氏の存在があっけない結末を呼ぶのだが、寝取られてもなお愛情が揺るがないどころか却って強くなっている彼氏もまたなかなかどうして逞しかったりする。こうした正義の強さが最後に報われる読後感の良さは痛快でもあるし、途中では悪漢どものパシリ役のごとき未成年者との刹那的な慈しみのある情交が盛り込まれたりもしており、単調な凌辱劇に陥らないドラマ性もしっかりある作品だったと感じた……その未成年者の末路は哀れだったが。
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