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『おれは清麿』という作品…真っ直ぐに己の仕事を追う主人公に、作者が自身の在り方を重ねているという様な読み方も在るかもしれない。私は寧ろ、「世の中は、思い通りに動かない。しかし、おれだって他人の思い通りには動かない」という想いを抱く主人公の姿を、「読者が追うべき」と感じた。或いは「世の中は、思い通りに動かない。しかし、おれだって他人の思い通りには動かない」を「小説で読んだ」とか「清麿が言った」で留まらせずに、「自身のモノ」に出来た時、「何かが大きく動く?」という気もする…
この作者の“職人”を主人公に据えたシリーズ…何時の間にか何作か読了したが、何れも面白い!!
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全1巻。
「刀剣商ちょうじ屋光三郎シリーズ」にも出てくる
刀鍛冶・源清麿の生涯。
著者の真骨頂、職人もので刀鍛冶。
面白くないはずがない。
いろいろ不明なところがあるらしい清麿を
説得力ある物語で再構築した手腕はさすが。
ただ、なんでだろ、
ちょっとあっさりした印象。
というか、
そもそも清麿が打った代表作ってどれなんだろう。
刀の素人でも名前を知ってるような
有名な刀打ってないのかな。
清麿って名前のメジャーさに比べ、
刀自体はメジャーじゃないのかな。
あっさりした印象の根は
刀自体の印象の少なさな気がしてきた。
最初に打った刀が、
清麿本人にとって重要なのはうなずけるが、
目利き達にも評価され続けるのもちょっと出来過ぎ。
その原因も、
飛び抜けた代表作の不在(物語中で)のせいかも。
著者が清麿を描いたってのは、
個人的には著者が本丸に攻め入ったってイメージだけど、
「いっしん虎徹」の方が好きだったかも。
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2015.6.2
山本兼一二作目。狩野永徳とかぶってしまう。
天才的芸術家は、才能と苦悩との間で揺れ動いているのだろう。破邪顕正。
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近藤勇の『長曽祢虎徹』は本当は『源清麿』だったという逸話がきっかけで手に取ったもの。女から見ると『ダメ男』なんだろうけど、なんだか憎めないのは自身の仕事に愚直なまでに誠実だからか。最後どうするんだろうと思っていたらこうきたか、というラストシーンで物悲しさと同時になにかさっぱりしたものも感じた。
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幕末期に活躍した刀工、源清麿の一生。
刀鍛冶としての信条を貫き、腕を見込んでくれる人たちとの出会いで、どんどん腕を上げ名工となっていく。
鍛刀の描写が詳しくて興味を持った。生まれ持った才能を極めるための生き方はかっこいいが、とことん身勝手だな〜と思ってしまう。
(近藤勇の有名な「虎徹」は実は清麿だという逸話きっかけで本書を手にしたがそれは描かれず。パトロンの意向で偽の銘を入れるエピソードはある。)
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地元の名工について書かれたものだと知り手に取った小説。この他に吉川英治氏の「山浦清麿」を読んでいる。
感動する部分も多く、読了後、自身にとっての大事な1冊に加わった。
何かひとつの事をそれなりに、ではなくとことん突き詰める職人の姿は情熱的で美しいと改めて感じた。なんと言っても鍛刀の描写が鮮明で、眩しく沸いた鉄の色や熱、それを見つめる刀鍛冶の真剣な眼差しが見えてくる。
まるで清麿の隣でその仕事を見ているよう。私は、今まで清麿の刀を苦手だと感じていたが、物語を読むなかで何故苦手だと感じたのかがわかった気がする。
それは、その刀身をみたものが恐怖するほどの気迫を込めて鍛えられた刀だからだ。
また、度々出てくる兄弟のやりとりも私は大好きだ。
経験を積み、技量を上回っても清麿にとって兄の真雄は永遠に刀鍛冶の師なのだと随所で感じた。
真雄の刀に対する姿勢をずっと尊敬していたのだと思うし、彼無くして清麿という名工は生まれなかったのではないかとも思う。
どの物語にも書かれてはいないが、弟の死の知らせを聞いた真雄が何を思ったのか、物語を読んだ後に様々、想像してしまう。
自分勝手とも志を貫き通したともいえる彼の生き方は、人間らしい魅力が詰まっているのだと思う。
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『利休にたずねよ』で直木賞を受賞した小説家、山本兼一。
残念ながら、2014年に亡くなってしまいました。
未読の作品の中から、”職人”を題材にしていると思われるこの作品を、読むことにしました。
江戸後期、19世紀前半の信濃国。
村役人を務める郷士の次男、山浦環正行(清磨)が主人公です。
9歳年上の、作刀を学んでいる兄に教わり、刀鍛冶の楽しさを知った正行。
十代後半の彼は、となり村の同格の家に婿養子に入り、子供も授かります。
しかし、刀鍛冶の魅力にとりつかれた彼は、実家で刀作を続け、その刀は藩の武具奉行の目にとまります。
刀鍛冶を続けたい彼は、チャンスをつかもうと、妻子を置いて江戸へと向かいます。
彼は望む通り、刀鍛冶としての仕事を得られるのか、どのような刀を世に生み出すのか・・・という展開。
徳川により戦国の世が平定され、戦がなくなって200年以上が経った、この時代。
過去の名刀の数々に圧倒されるも、同時代には「これぞ」という刀鍛冶がおらず、自らの力で、精進していかなければならない日々。
武士にとっては、戦いのための道具である刀。
しかし、幕末に近いこの時代には、外国の情報も入り、戦いが大砲・鉄砲中心に変わってきていることも知られていきます。
そんな中、内面の充実がそのまま反映されるような刀鍛冶の仕事にどう、取り組んでいくのか。
理解してくれる人、そして自分自身の心を奮い立たせてくれる場所を求めて、各地を点々とする清磨。
その姿に、孤高の存在であることの難しさ、崇高さを感じました。
鍛冶の現場の描写など、かなり調査や取材を重ねて書いたのだろうな、と感じる部分が多々、ありました。
他の未読の作品も探して、読んでいきたいと思います。
山本兼一の小説;
『夢をまことに(下)』
https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/B06XTM6H28
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