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日本SF大賞受賞作。文庫化により再読。
矢張り語彙のセンスとバランス感覚が目を惹く。2度目のせいか、単行本版では強かったグロテスクさは余り感じなかった。逆に異形の登場人物(人物?)のふとした言動や心理描写に惹かれた。
解説は単行本版に加筆、また、文庫版では挿絵が追加されているのも嬉しい。基本的に小説に挿絵は要らないと思うが、これに関してはあった方が良いと思う。
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果てしなき、あまりに果てしなき、切なさの旅路。
第34回日本SF大賞受賞の本作、いろんなところで数々のレビューがなされていますので、今さら鴨ごときが紹介するまでもないでしょう。
円城塔氏の文庫版帯の紹介文「人類にはまだ早い系」がものすごくしっくりくる、認識のパラダイム・シフトを前提として構築された圧倒的な世界観。「冥刺(めいし)」だの「遮断胞人(しゃだんほうじん)」だのといった言葉遣いがただのジョークじゃないの?という論評も少なからずありますが、そうしたユーモラスな言葉遣いが表現する世界の骨組みを朧げながらも読み取ると、全身に鳥肌が立つ空前絶後の言語SFでもあります。
この余りの異形ぶりに訳が分からないまま読み進めて、読み進めてもやっぱり訳が分からないんですがヽ( ´ー`)ノ、歯を食いしばって読み進めるうちに何となく物語の背景が、どうやらこの世界に登場する異形の民は地球人類の成れの果てらしいということが薄らとわかってきます。
この時点で、この作品の骨格の大半はまだ理解できていないのですが、それでも鴨的に強烈に感じ取れたのは、物語全体を通低音のように流れる、切々とした哀感。
この作品世界において、現代の我々が認識できる普通の「人類」は最早登場しないのですが、それでも肌感覚で理解できる「滅びゆくもの」の切なさ。
地球に残った人類は緩やかに死滅して行き、宇宙への潘種を目指して自らをデジタル化した人類もやがて否応なく異形の環境へと適応せざるを得なくなる・・・そして未来史の最後(この作品では最初に収録されている作品で!)において、情報から再構築された最後の人類は、新たな生命の種が地球に降り立つ様を目撃することになる。
読み終えて本を閉じた時に感じる壮絶な虚無感、そこに至るまでの登場人物たち(その大半は人間の姿をしていないわけですがヽ( ´ー`)ノ)の愛おしさ。
ぱっと見の印象はものすごく変態チックでものすごく読む人を選ぶ作品ではありますが、鴨はそこに優れた日本的美意識を、万物への温かい(そして厳しい)眼差しを感じます。現代日本SFが世界に誇れる、実に日本的な傑作だと思います。
・・・と、偉そうにレビュー書いてますけど、これも大森望氏の懇切丁寧な巻末解説があってこそ。途中で投げ出しそうになった方、大森氏の解説を読んでから再挑戦しても良いと思いますよ!
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とてもとても面白かったのだけれど、自分の想像力の浅さでは3割くらいしか理解できなかった。しかし面白かった。なんだこれ。でろっでろでずるっずるでぐっちゃぐちゃのスプラッタっぽい謎生物たちの跋扈する圧倒的な世界観。確かに円城さんが帯でいう“人類にはまだ早い系作家”だった。
収録4編中では「洞の街」が一番好み。最後の「百々似隊商」はナウシカの蟲使いをイメージしていた。
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これ、すげーみんな褒めてて、おもしろい文章とか雰囲気はあるんだけれども、みんなストーリー追えてるのかな?ごめん、オイラ読み方が雑なせいなんだろうけど、追いきれんかった。2回読んで2回目に腑に落ちるところも多かったから次読んだらまた何かあるんかも知れんけど、たぶん5割もわかってなさそうだ。
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●円城塔氏推薦――「地球ではあまり見かけない、人類にはまだ早い系作家」
【第34回日本SF大賞受賞】
巨大な鉄柱が支える甲板の上に、その“会社”は建っていた。語り手はそこで日々、異様な有機生命体を素材に商品を作る。社長は“人間”と呼ばれる不定形の大型生物だ。甲板上と、その周りの泥土の海だけが語り手の世界であり、日々の勤めは平穏ではない──第2回創元SF短編賞受賞の表題作に始まる全4編。文庫化に際し、著者によるイラストを5点追加。本文イラスト=酉島伝法/解説=大森望
*第1位『SFが読みたい!2014年版』ベストSF2013国内篇
*第1位「闘うベストテン場外乱闘篇 ROUND2」国内篇(2014年1月13日、於・新宿ロフトプラスワン)
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開幕でラスボスに殺されるRPGみたいな構成になっているけど、最初の一篇をなんとか読み切った後はグロテスクで切ない物語の世界にひたすら身を委ねることができた。ただ一本筋の通った本格SFというよりは、たまたま筋の通っちゃった幻想小説と言われた方がしっくりくるような、それくらい作者の想像力の果てのなさを叩き付けられた感じ。あと「遮断胞人」の字面が最高。
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サイバーパンクの直系でかつ極北。異質過ぎてどんな世界か脳内にうまく立ち上げられなかったけど手探りで面白かった。言葉や単語のずらし感がとても楽しい。
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さっぱり意味が分からなかった。
分からないなりにも読み続ければどこかでブレイクスルーが訪れるはずだ、そう期待してページを捲るも、その瞬間は訪れず。しかしそれでもページを捲ってしまうというこの不思議。
主人公(がそもそも誰なのかさえよく分からない)に感情移入して物語に没入してしまう、というよりも、
この世界は何なのか? 何が起きているのか? 何が描かれているのか? という、いわば「知的好奇心」によってページを捲っていたように思う。
分かんなさすぎて面白い、というか。
それだけ世界観が緻密で、盤石で、何よりも魅力的だったということだろう。
円城塔氏が激賞なのだそうだけれど、氏の近著『エピローグ』を読んだときに思ったのと同じで、
「次の文明を担う知性体がこれを読んだとして、どう思うのだろう?」と感じた。
ただの「おとぎ話だった」で終わるのか。それとも「予言の書であった」、とされるのか。
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初伝法。読み終わるのに一ヶ月くらいかかってしまった・・。造語ばかりで取っ付き難く、映像を上手く脳内変換が出来なかったため少しも面白くない。円城塔氏に“人類には早すぎた作品(のようなこと)”と言わしめただけはある。どうやら私にも早すぎたようだ…
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筒井風ダジャレ落語かと読み始めたら、噂どおりハードSFの設定がチラリと目をかすめた瞬間から怒涛の迷宮が浮かびあがる。吾妻ひでお描く異星のぬるぬるぐちぐちょ生物が、カフカ的な生真面目な不条理世界を徘徊する様に驚く。(非)日常のルーチン描写かとみせかけて、世界のひみつを覗き見させるポリティカルスリラーっぽい展開もすごい。それにしても、あとがき解説のおかげでやっとわかった描写がいくつもw 噂どおりの傑作だった。
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ひとつの物語、一行の文章に情報がぎっちり詰め込まれていて、それを想像しきれないほど、補う挿画があってもまだ足りない想像力で物語世界を思い描いているうちに読み終えました。
時間をかけ、また読み返したいグロテスクだけど情の移る“人間”のSFです。
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とても有機的に絡み合った気味の悪いSF。言葉の羅列に留まらず、ちゃんと世界が作り込まれているのが凄いと思う。言語表現の極限に挑戦しているよう。(解説を読むまで…どんな世界と時系列なのか全然わからなかった…)
最後まで流し読むと、なんとなーくわかってきます。
P15「…殆どが干涸びていたが、並びの右端にある閨胞だけは熟れた無花果の膨らみを保っていた。その頂に隆起した筋肉質の搾門から、従業者のやや間延びした頭が芽吹きだした。内膜に繁る繊舌に送り出され、痩せた裸身が分泌液の糸を引いて、搾門の輪からづるりと甲板上に吐き出される。」
冒頭の、「従業者」が起きる場面。肉に溢れていて粘質で、気持ちワルイ。感覚に訴えてぞわぞわギトギトする。無機質で寒々しいSFに慣れた物語とは正反対。言葉の多くは意味不明だし、「食餌」は拳大の孕虫に、大小の蝓布、腐敗しかけた皿管(けっかんもどき)など、もはや生理的に受付けない。
世界観が精密に作りこまれていて、どこかで聞いたような、でも全然わからないような漢字が並んでいる。時折混じる現代社会の言葉(ラザニア、湖畔など)を懐かしく感じる。
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2017/6/14
SFを読みなれていない私。最初は造語とおどろおどろしい世界に頭が疲れる。そのうち世界に慣れてくると物語が入ってくる。面白いのは面白いのだが疲れる。想像力をフル回転させるために頭が疲れるのだ。楽しめる人に楽しんでもらえばいいやという感じなのかなー。
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創元SF版がタダだったのでおもわずダウンロードしてしまった.書評が絶賛で,ただなのでもったいないので頑張って読んだがちょっとグロすぎる.後書きを読んで初めて壮大な物語が構成されていたことに気付いたが,それでもグロすぎ.でもこんな言葉の使い方とか見たことない.確かにこの作者の方は天才かも.
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異形の生物が続々と登場、有機物が畝り、ぞわぞわと増殖し…。奇怪なイメージの奔流に翻弄されるだけだった表題作。
連作を読み進めるうちに、人類文明は衰退して異形の進化をしているらしいとか、人類の記憶がデータ化されているらしいとか少しずつ分かってくるけど、解説を読まないと全部は理解できないな。
人類社会を模している、でもグロテスクにズレている異形の生物たちの生態が面白く、背景設定がわからなくても結構楽しめます。