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紙の本
姉・鶴見和子とのとの愛情溢れる心の交流
2017/01/31 19:04
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投稿者:親譲りの無鉄砲 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、鶴見俊輔の死去に伴って急遽編まれたアンソロジーである。鶴見の場合、自身および他者により生前より多くのアンソロジーが編まれているが、本書は、故人と縁の深かった藤原書店(本書の出版社)の季刊誌「環」等に寄稿されたエッセイを中心に集められているのが特徴である。当然ながら他書のエッセイとの重複も少なくない。が、本書は一種の追悼文集であり、それなりの趣と特徴がある。鶴見ファンには、個別の既読のエッセイばかりだから読む必要なし、と早計されることなく、ぜひ一読されることをおすすめする。必見は、巻頭の「話の好きな姉をもって―「山百合忌」へのメッセージ」(山百合忌は鶴見和子の命日であり、同文は鶴見の死の約1週間前のまさに絶筆だった)と「跋にかえて」として掲載された鶴見和子による「おなじ母のもとで」(鶴見俊輔全集の月報に寄稿されたもの)である。特に、後者は、読む者の胸を打つ珠玉のエッセイである。
鶴見は、自身の少年期を振り返るとき、「不良少年」をキーワードとすることが多かったが、それには多分の誇張があったのではないか、と私などは疑念を挟んだものだ。しかし、実母からの多大な精神的な圧迫を受けたことは事実で、これにより少年の鶴見は何度か自殺未遂をしている。なぜ母は鶴見を折檻したのか、その動機に対する解釈については、姉と弟で若干ニュアンスが違うように思われるが、それでも実の姉である和子がその事実を認めていることは、やはり衝撃であった。もうひとつ、鶴見は、18歳でハーバード大を卒業している。極めて異例で、並大抵の努力ではなかったことは忍ばれるが、日本に居場所を無くしている鶴見のその時の決死の勉強の様子は、同時期にやはりアメリカのコロンビア大に学んでいた和子自身の目で確認していることを、この姉はやはり証言しているのである。このことが、姉にして弟に対し心から尊敬の念を抱かしめた大きな理由なのであろう。
極めて知性レベルの高い姉弟が終生をかけて尊敬しあい、啓発し合い続けた、この奇跡のような姉弟愛を読者は大いにうらやむべきであろう。
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