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酒場訪問記的な著作は世の中に数多く存在するが、本書のように社会学的な見地から書かれたものは他に類をみないのではないだろうか。ロジカルな内容に感銘を受けた。読んだ後に、著者が大学の先生であることを知った。
しかし、表題は「大衆酒場の戦後史」としたほうがよりフィット感があるのではないだろうか。居酒屋というと、どうしてもあのブラック企業に代表されるチェーン系を想起してしまうからだ。いや、大衆酒場というのが既に死語なのかもしれない。
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確かにそうだったと頷いてしまう(もっとも知らない時代もあるのだけれど)。自分が社会人になった頃はまだ日本酒はだめだったもんなあと思い出したり、バブル景気がなければ今の日本酒はなかっただろうなあと思ったり。何よりも著者が日本の酒環境によくなってもらいたいと思っているのがよくわかる。
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西荻にはまだ闇市時代の建物が残る居酒屋がある。たしかにあった、汚かったがいい雰囲気でした。
焼きトンを焼き鳥と呼んでいる肉を串に刺して焼く事を焼き鳥という言う。
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前半は、戦後のカストリ、バクダンなど大衆酒の変遷から、坂口安吾、高見順、内田百閒ら酒豪文士の伝説トリビアよせあつめ。
後半に社会階層研究者としての本分(?)をおもいだし、社会階層と酒消費量による現代日本の「酒格差」分析へ。もう本領がどっちかわからないけど、酒飲みには面白いと思います。
社会階層によって「何を飲むか」の飲酒文化が異なっていた時代から、「貧乏はどの酒も飲まず、金持ちはなんでも飲む(大意)」の一元傾向への変化。
新書なのでざっくりしすぎなとこはありますが、日本のヘンテコな酒税制度がもたらす逆進性への指摘は鋭いです。 (小林)
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実感していた事象もかなり出てきており,楽しく読めた.焼き鳥の名前の由来は納得できるものだ.最後に出てくる酒に対する税制の不合理な問題は,ぜひ解決して欲しいものだ.格差の是正を解消する非常に良い視点だと感じている.
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もう読み手からいったら「史」に興味を示すよりもはるかに、紹介されているもろもろの店やメニューに「行ってみたーい」「飲んでみたーい」と、そんな欲求ばっか感じるのではなかろうか。呑み助にとってはほんとに良書。
あと、僕が(やや)ひいきにしている天狗が好意的に紹介されててよかった。
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橋本健二 著「居酒屋の戦後史」、2015.12発行。居酒屋が好きで、お酒が好きですから、楽しく読みました。でも、内容的には、総花的な感じでまとまりはなく、読後に何も残っていない感じです。失礼しました。もっと捉える軸をしっかり決めて記述されたらいいと思いました。
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おもしろかった・・・
著者自身が飲むのが好きじゃないと書けない本だと思う。トピックとしては、戦争中のお酒事情/日本人へのビールの広まり/居酒屋チェーン創業/酒格差社会・酒税法。
【戦中戦後のお酒事情】戦中戦後の話は、「とにかく飲んで酔うためのもの」という志向や、合法だった覚せい剤とお酒を併用して仕事する坂口安吾のエピソードや、闇市や密造酒といった隠れて飲むイメージからか、アルコールが違法薬物と紙一重って気持ちになった。
思い出横丁は、闇市時代のバラック飲食店街が原形のまま残されている場所らしい。そう思って思い出横丁を思い返すと感慨深い。狭いお寿司屋さんいい感じでおいしかったなー。
【日本人へのビールの広まり】戦中の配給制度で全階級にビールが広まり、また、その際、食料統制下で大麦や、米・ホップなどの副原料も一元的に管理されて各社に決まった比率で配分され、大きな工場で三社寡占により作られたことで、三社とも相対的にかなり近い、こんにちの「日本のビールの味」になったとのこと。なるほどと。
【居酒屋チェーン店】創業者たちの話もおもしろかった。「天狗」「養老乃瀧」とか「つぼ八」とか→「ワタミ」が革新を起こしていったので、今日の居酒屋があるんですね。「飯田四兄弟」ってすごい。
ちなみに著者はチェーン居酒屋の飲み放題制に苦言を呈していて、飲み放題コースじゃないと予約受付てくれなかったり露骨に誘導されたりするけど、そのせいで若者が酎ハイ・カクテルほか限られた種類のお酒しか飲めず、自分で居酒屋料理を選ぶこともできない、若者は酒文化の担い手であることを忘れるなと。たしかに自分で選んだほうが楽しいよね。
最後は、【「酒格差社会」と「酒税法」の問題】。日本社会の格差の広がりが直撃して飲酒文化にも格差が広がっていること、酒税法の逆進性について、著者の専門だからか論拠に基づいていて説得的。
ワインの話ももっと読みたいなー。
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酒という日常に深く入り込んでいるもの。
その歴史を知ることができて面白かった。
覚えているポイントをいくつか。
・戦時中、駅は主要建築物のため爆撃を避けなければならず、駅前の建物は疎開させられた。そうやって今日の駅前の大きな広場はできた。そして新宿のようなバラックでできた闇市が誕生した。これは吉祥寺、西荻窪にも見られる。
・戦時中、戦後当時はウイスキーはとても高く、ウイスキー原液1~3%とアルコール、といったものもあった。
・バクダン=燃料用アルコールを薄めたもの、カストリ=清酒の粕を蒸留して作った米焼酎(芋、麦、粗雑な米)
・女性の飲酒に使う金額は男性と比較して少なく、特に戦後の1954年は極端に差があった。女性が男性と同じように、女性だけで飲むようになったのはつい最近のこと。女性が酔態を晒すのは恥だとされていた。
・ビールは配給により庶民にも広まった。
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昨夜は酔っ払って新山口にたどり着いたら、駅前に山頭火の像が立っていた。飲まない日は淋しい、と山頭火は語る。そうだよね。
居酒屋は江戸の煮売屋がやがて酒を出すようになって生まれた、とされていることが多いが、本書はそれ以外にも、より昔から料理屋でも酒を出したようだし、そして何より居酒屋のルーツはヤミ市ではないか、と語る。多くは立ち退きを余儀なくされたが、いまでも各地にいくつかはヤミ市由来の「横丁」が残っている。そういうところでかつて出されていたものは、豚の臓物なのにやきとり(ブロイラー以前は鳥が高かった)、メチルアルコール、密造酒粕取り。メチルはともかく、どれも憧れる。
だが現代の密造酒、ではないけれど租税回避のための発泡酒や第三のビールというやつはどうにも飲む気がしない。この違いはどこからあらわれるのだろうか。(ホッピーならよい。つまるところ歴史のないもの、自分がよくわからないものは遠ざけているだけなのかな)
文士と酒。坂口安吾は、ヒロポンで文章を書き上げる。書き上げても覚醒してしまっているので酒を飲んで寝ようとするが、ウイスキーをストレートで飲み、胃壁を傷めて血を吐いたりする。で、カストリにシフトするが、だからといってたくさん飲んでいいわけではなかろうに…。
安吾はそれで、ウイスキーは水か炭酸水で割るべし、と述べるのだが、ハイボールは近年まで駆逐された状態だった。炭酸水が高かったし、食中酒なら水のほうがあっただろうし。そこからウイスキー階級社会、見せびらかし社会の話にも入っていく。
最後は酒格差社会。また格差か。ビールの酒税が高いのはかつて高級酒であったからであって、そしていままた大衆酒から高級酒へとその座をシフトしている。庶民たる僕はやはり偽ビールとしての第三のビールを飲むべきだろうか。
たまたま、自分の生まれ〜育ち〜今住んでいる所の居酒屋状態が比較されていたところもあったりして、自分の飲酒姿勢を改めて問われるよい本だったし、酒と酒飲みと酒場の歴史としてもよい。