紙の本
物語は佳境へ。
2016/02/17 10:19
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投稿者:きん☆ぎん☆すなご - この投稿者のレビュー一覧を見る
カイさんが絡んだテロの話はいい。民族、宗教、思想等々対立するものを乗り超えられるものは何なのか。
マリーダが、バナージに言ったセリフ「自分に出来ることを信じて全力でやりなさい」。結果、どうなるのかは、やってみないと分からないなら、力の及ぶ限り。真実は、それぞれのそこにある。
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本作において異質さを放つ前巻からのエピソードに蹴りが付く巻。これまで『ラプラスの箱』を巡る因縁に一切絡んでいなかったカイ・シデン、家族を守るか恨みに従うかを彷徨うジンネマン。そういった人物を中心に据えつつ対立する運命の中で必死に抗い続ける人々の姿が。これはバナージ達が解決しなければならない問題を当事者目線で描いたものだったのかもしれないね
対立に踊らされる人々が描かれるからこそ、対立構造そのものを変える立場に居るバナージやフル・フロンタルの言葉にスポットライトが当たる構図になっていたのかな
器として自分が属する組織が望む形で箱を使うと宣言するフル・フロンタル。所属や生まれに関係なく皆の為に箱を使うと宣言するバナージ
今後を見据えると面白く思えるのは対立構造の上位にいるこの二人もまた対立しているという点
そういった対立構造をあの場面で越えようとしたのがマリーダであるのは本当に良いね
彼女はジオン側でありつつ、実際の行動原理は自身を拾ってくれたジンネマンのため。そのジンネマンがマリーダの反逆を諫める行動に出た。それは彼女が仕えるミネバの意思に反する
そこで生じるジレンマを「わがまま」という子供っぽい言葉で乗り越えてみせたマリーダは対立を超えるだけに留まらず、ジンネマンの心すら救ってみせたかのよう
「偶然関わっただけ」の立場であり対立構造そのものにも関係のないカイ。彼がアーメットを助ける理由として語るのは「責任」
それは宇宙世紀に纏わりつく因縁も『ラプラスの箱』も連邦もジオンも関係なく、人間としてごく当然の感情。でもその当然さを貫くのは実際はとても難しい。そういった意味では自分のスタンスを変えないカイの英雄っぷりが気持ちよく描かれていたね
また、テロリストとのカーチェイスシーンでも、迫り来る銃弾や爆発を物ともせず、撃ち抜くべき相手だけを正確に撃ち抜いたシーンにも痺れてしまうね!
そういう格好良さを見せられたとしても最後には言葉しか役に立たない。対立を対立にしない為には言葉と行動を尽くさなければならない。けど、失った哀しみと植え付けられた憎しみが強すぎるアーメットに必死に語るカイの言葉は簡単には届かない
だからこそアーメットを助けたいという真摯な行動が必要になって、哀しみを打ち消す為の優しさがこの街に残っていると示す必要があって…
言葉と行動によってアーメットを助けてみせたカイはやはり素晴らしい英傑だよ。でも、そんな人物でもアーメットの最後の嘆きには答えられない点からは、人を救えても人が作り出す対立構造の根深さと残忍さは消せないのだという難しさが見えてしまうね……
バナージがマリーダに好物を聞くシーンはどう見ても死亡フラグなんだけれど、その前のシーンと併せる事でバナージが少しでもマリーダが生存する可能性、理由を広げようとしているようにも映る
果たしたいと思うから戦いが終わった後の約束を結ぶ。それは未来への可能性を開く約束になるはずだけど……
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イスラムに関するテロの描写を入れ込むことには、
とても違和感を覚えざるをえない。
かえって、偏見に満ちているようにも思える。
宇宙世紀のリアリティを損なうことにはならないか。