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霜の降りる前に 下 みんなのレビュー
- ヘニング・マンケル (著), 柳沢 由実子 (訳)
- 税込価格:1,210円(11pt)
- 出版社:東京創元社
- 発売日:2016/01/21
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文庫
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紙の本
リンダの今後はいかに?
2023/05/20 16:53
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投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
久しぶりに再会した友人アンナが失踪したことで独自の調査をしていたリンダ。
謎の人物の住所らしきものを見つけたところ、ふいに襲われる。このシーンが何気に戦慄を起こす。昔は先進的な高層住宅だったが、今は裏ぶれ、住人も誰が住んでいるのやらわからない。麻薬の売買も行われている気配があるのに、住人は関りを恐れて放置している。そんななか当初からの住人で、今も自分の住み家の実態に目を光らせているアンデルセン夫人、こういう人がまだいることにほっとさせられること自体が、他人との関係が全くなくなった最近の状況をよく表していると思う。
さらに認知症を発症した老ピアノ教師のアパートに、本人も気づかない誰かが居住しているというのが、この作品全編を通じてもっとも恐怖を覚えた。動物への火を使った虐殺行為や森の小屋でのバラバラ殺人などよりも、静かだがそれゆえに何とも言えない底知れなさを感じさせるシーンだった。
物語はこれらの事件とアンナ失踪という二つのラインが並行して進む。
そのなかで、正体を現しつつあるアンナの父親とその帰還を待ち望んでいたアンナとのいびつな関係と、同じ職業を選んだことでようやく接点を持つに至ったヴァランダーとリンダという二組の親子関係を対比させているのが興味ぶかい。
それぞれの父親が娘の頬をなでるというシーンがあるが、全くちがった印象を与えている。片方は自分に絶対の自信をもち、娘と言えども自分の意思を遂行するための道具としてしか見ていない。一方のヴァランダーはといえば、仕事に信念は持ちながらもすべての状況をコントロールできないという限界を知っており、娘の無謀な行動が不安の種となる。子供は親にどういう存在であってほしいのか?とても考えさせられる問題だ。
ラストでかつての自分を思い出させるような追い詰められた少女に手を差し伸べるリンダが描かれる。このシーンも秀逸だ。ひとは自分の痛みを認識し、そのとき適切な助けを得られたからこそ、他人にも手を差し伸べられる。これこそがこの作品の最大のメッセージではないだろうか。リンダの警官人生もスタートしたがこのことを常に忘れないでいてほしい。
紙の本
女ヴァランダー
2017/09/27 11:38
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投稿者:バニー - この投稿者のレビュー一覧を見る
今まで通り、父ヴァランダーを主役に、娘のリンダの話が展開するのかと思っていたのに、完全にリンダ主役の話だった。なーんだ。
でも、いつもヴァランダー視点で描かれていたから、ヴァランダーが他の人からどう見られているのかが知れたのが、面白かった。
美女に出会った時のヴァランダーの毎度の反応が笑ける。
それにしてもこのシリーズに出てくる登場人物に性格のいい人がいない。
みんな自己主張が激しすぎて衝突ばかりしているような。
ステファン・リンドマンが一番マシか。
紙の本
主役はヴァランダーの娘
2017/05/16 22:18
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投稿者:J・P・フリーマン - この投稿者のレビュー一覧を見る
主役はヴァランダーの一人娘のリンダですが、ヴァランダーシリーズの雰囲気はそのまま受け継いでおり、犯人がなぜ凶行を繰り返すのかが、じわりじわりと明かされていくシーンは読み応えがあります。リンダは警察官になったばかりで、事件のことで手一杯という感じがしますね。小説のテーマは宗教で、それほど目新しいものではないのですが、自分が特別な存在と信じた瞬間から、人は人の道を外れるのだなというのがわかります。
紙の本
マンケルさん大丈夫?
2016/03/30 09:51
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投稿者:よしおくん - この投稿者のレビュー一覧を見る
マンケルさん、亡くなってしまったのでしたね。あと、何作残っているのかなぁ。とても残念です。この本はヴァランダーシリーズではなくて、娘のリンダが主人公と聞いていましたが、まるでヴァランダーシリーズの一作と言ってもよいほどです。
マンケルがまだ50代前半の時の作品のはずですが、この方、どんどんミステリーを書く気持ちが薄くなっていったのではないか。この作品もクライムノベルというより、リンダ自身と親子、家族(アンナの家族も含む)を書こうとしたのではないだろうか。
だが、終盤に驚きもなくミステリーとしてもイマイチだった。リンダを描くことにも成功したとは言い難い。ラストシーンがあまりに見え透いていて、ありきたりなので逆に驚いたほどだ。つまり、マンケル作品は質が落ちていっている気がする。
とはいえ、残っている作品は全部、読むつもりですけど。
紙の本
シリーズ屈指の恐ろしい事件
2016/02/27 07:20
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投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヘニング・マンケル現時点での邦訳最新刊。
いくら柳沢由実子さんが他の作品を鋭意翻訳中と言ったって、そうすぐに出るわけじゃない。 読み終わりたくなかったが・・・読み終わってしまった。
帯によると<刑事ヴァランダーシリーズ最新刊>ということになっておりますが、主役はヴァランダーの娘・リンダなので“特別編”という位置づけだろうか。 ヴァランダーをはじめレギュラーメンバーがほとんど登場するし(そもそも30歳になったリンダは新米警官としてイースタ署で働く予定である)、シリーズ“番外編”たる『タンゴステップ』の主役ステファン・リンドマンもイースタ署に転任してくるというサービスぶりについニヤリとしてしまう。
しかし起こる事件はシリーズ屈指の恐ろしさである。
リンダの幼馴染アンナが不意に失踪する。 白鳥に火をつけて焼き殺した者がいる。
まったく関連のないように見えた出来事が実は恐るべき力によってつながっている・・・という話。
事件も恐ろしいのであるが、リンダが改めてアンナのことを思うとき、自分はどれだけ彼女のことを知っているのか?、と自問する場面。 知っているはずの人がまったく知らない人に思える恐怖。 そして従来のヴァランダーシリーズは三人称なので特に気にしていなかったんだけど、その描写はヴァランダーの見方が多分に入っていたこと。
今回、リンダからの視点がいつも以上に強調されて書きこまれてあるので、レギュラーメンバーに対してこちらが抱いていたイメージをことごとくリンダによって破壊された(つまりリンダにはそう見えるということなのだが)。 それもまた、怖かった。
自分が信じているものを、粉々にされる恐怖。
くしくもそれはテーマと繋がっていて・・・ヘニング・マンケル、どんだけ構成うまいんだよと泣きたくなる。
が、リンダも大概である。 不安定な関係の両親の間に育ったことは同情に値するが、もう30歳なんだからいい加減ふっきろうぜ! しかも父への怒りの大半は、せっかちで短気で怒りっぽい父親に自分が似てるから、ということに起因する。 ヴァランダーが怒りの発作を抑えられないように、リンダもまた瞬間的に沸騰する自分の感情を抑えることができないし、他人を気遣う言葉がいえない(そんな自分を肯定する手段として恋人を欲しがるっていうのがなんとも・・・父親とは違う意味で「大丈夫か、リンダ」と思ってしまう)。
家族って、大変。
そして内容や背景について多く割かれるはずの<訳者あとがき>は、ほぼ柳沢由実子さんによる「ヘニング・マンケルへの追悼文」になっており・・・淡々と事実を述べられているのだが読んでいて涙を禁じえない。 死を前にした彼の最後のエッセイ集『流砂』が今秋発売予定とのことなので、今はただそれを待ちたい、と思う。
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