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家族という物語性の軛を巡る、現代の試練の数々。そうした局面に遭遇した時、もう少し肩の力を抜いても良いのだと、少し気が楽になった気がした。もちろんこの本にあるように、家族が担いきれなくなった機能を肩代わりする公的機関の存在が前提だが。経歴を隠さずさらけ出す著者の態度にも共感。
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大昔に毒になる親、って海外の本がありまして、感覚的にはアレに近いんですけど、一方は心理学、一方は社会規範(日本のイエ制度)から捉えているのでアプローチは異なります。なんで毒親が誕生するのか、に踏み込んでいるのは本書の良い点でもあります。しかし、では紐解いてひきこもりとは、ってところになると、ルポものって意外と結びが弱いイメージがありまして、本書もそこからは脱却しきれず、と思いました。意図的でしょうけどキレるケースを頭に持ってきたのは誤解を呼ぶ気もするし。ナイーブなだけに構成むつかしいですね。
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ひきこもり に焦点を当てて,数多くインタビューをまとめている.世の中の規範に入り込めないことに不安を感じ,自分の中に閉じこもる事例があふれている.親や周囲の人がどのように対処したらよいのか,模範解答はないだろう.p199の「我が子に他者性を持つことは,実は,現代の新しい規範なのではないか.」は一つの答えかもしれない.著者を知っているので,第3章は複雑な気持ちで読んだ.
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著者の生い立ちも書かれているので、本人を知っている身としては不思議な感じだった。
精神科医が精神病にかかりやすい、ということと共通する部分があるのではないかと思った。
ひきこもりを病気として捉えているけれども、自分を差し置いて何かに怒ったり、「いけなくな」ったりと、惰弱との線引きはとても難しい。
今、高校一年生の息子も一つボタンを掛け違えば、ひきこもりとかニートとか、そういう状況になりかねないと思うと少し怖い感じがした。
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P20 世間一般の価値観を内面化し、自己責任として受け入れている。〜親の願い、そして社会の願いを内面化し、その価値観に合わせられない自分を責め続けていた。
ひきこもりの家族との関わりを紹介して公的な支援も提示する。
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「ひきこもり」から問う「家族幻想」、家族の絆への疑問ということだけれど、ここが一番散漫な気がしました。取材が長期間に及ぶため、まわりの状況が変わってしまい、ひとまとめにするのは難しい。第三章「私の中の引きこもり」はご自身のことで、他の章とは少し趣が違います。次男が多少「ひきこもり」で(今もまだ少し引きずっている気がします)、私自身も高校時代苦しんだので(当時は「ひきこもり」ではなく「不登校」と言われました)、これを序章にした方が入り込みやすいと思います。
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平成28年7月12日読了。
杉山氏のルポ『虐待』は凄まじい筆致のドキュメンタリーだった。
今回の著作にもそれを期待したが、いまいち中途半端なルポに終始し、期待していた内容では無かった。
ただひきこもりの経験者に対する丁寧な取材から浮き彫りになった「ひきこもり像」は、自分に厳しすぎるが故に、自分以外の他者を許せない、寛容になれない姿だということが良く分かり、勉強にはなった。
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共同体と呼ばれていたものが形を失う時、家族が孤立すれば、家庭内の規範は偏り、次世代を苦しめる。次世代が生活する社会の在り方が、親世代の規範とは大きくずれる場合もある。次世代に前の世代が与えるべきものは、まず、この社会は自分自身のいための場所だ、という確信だ。そして、命が本来持っている成長する力を尊重すること。ひきこもりとは、自分が生きられない規範で自分をジャッジして自分を切り刻んでしまうこと。家族が基盤になって作られてきた規範がときに子供や若い世代を痛めつける。社会の中にこそ多様な受け皿が作られるべき。
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当事者へのインタビューを通じて、「ひきこもり」の意味を考えた良書。ひきこもる人がはけっして自由気ままな暮らしを謳歌しているわけではなく、既存の価値観を内面化しすぎて自己点検を繰り返し、自分をダメだと決めて「自分自身が社会に漏れ出すことを必死になって防いでいる」など鋭い指摘が多い。一方で、やや近代以降の「家族」観がやや一面的な気も。
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家族は人を追い詰める力も大きい。スペースの力を言うけれど、どうやって家族以外につてを求めるかがこの時代ずいぶん大きいのだろうなあ。
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引きこもりにはあまり関心がなかった。
心のどこかで、親に甘え、自尊心が高く、周囲を見下している人だと思っていたからかも知れない。
確かにそういう人もいるだろう。
しかしそれが全てではない。
狭く、密室である、家族という中で苦しむ人は一定程度いる。
その苦しみに想いを馳せなければ、思い込みで語ってしまう危険性がある。
「存在の肯定」が引きこもりからの回復に欠かせないと著者は言う。
それは口で言うほど簡単なことではない。
近すぎる関係がもたらしたこの問題は、本人だけでも、家族だけを支援するのも、不十分だからだ。
双方に適切な方向転換を求めて、助けをもたらさなければ、事態は動かない。
親の苦悩もわかる(と言っていいものかどうか、疑問はあるが)。
傷つきやすすぎる心と、暴力によってしか自己表現できない子供を保護し、育てる心労は如何程のものか。
と、まるで私は良き理解者のようだが、どうしたって芯の部分で理解し難い点は多くある。
あまりに複雑に絡み合った問題で、家族という興味のあるテーマであっても、避けがちな問題のひとつだ。
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引きこもっている人々へのインタビューを本にまとめている。引きこもりは、それぞれのイエの規範に縛られているのでなかなか抜け出せない。イエの規範から、抜け出すことが解決の糸口だが、どう抜け出せばよいのかは明かでない。
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ひきこもり70万人、子どもを所有感覚・抱え込む親、イエが自分に課す規範から自由になれず、自分を空想上の「他人のまなざし」でチェックし、不十分と評価し、外に出られなくなる。
ひきこもっていても生活や仕事もできるようになってきているし、それも生き方のひとつとしてノウハウが共有されるようになれば、悪いことじゃなくなるのに。
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家族やイエ制度とは何か?を考えさせられる本。
個別の事例が紹介されているが、明確な解決策がないため解決するための指南書として読まれる方は物足りないかも。
問題の本質を考えるための本。
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なんというか全体にまとまりがない。1〜3章までで個別のひきこもり事例から家族の価値観に問題を見出しつつ、自分の親との体験、親としての体験を綴ったとこまではとても良かったけど、それ以降また個別の事例の紹介に戻っていて、散漫な構成になっていて残念。朝ドラの後の番組でコロナ後の虐待について話してて面白そうな人だったから読んでみた。