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私は牛丼が食べられなくなったって一生困りはしません。吉野家は行ったことあるし当然牛丼を食べたこともありますが、牛丼好きというわけではないです。しかし以前見たTV番組で、アメリカ牛肉の買い付けで日本の商社が中国に競り負けているというのを見て気になっていたので、まさにそれを取り上げた本だと手にとりました。
この本はその番組のプロデューサーが書いたものでした。ええ、まさにその番組の本だったわけです。あの番組は本の宣伝だったのか?いや、そんなことはないでしょうけど。その番組自体、片手間に見ていたので、番組全体がこの本に詰め込まれているかどうかまでは私にはわかりません。
前置きが長くなりましたが、牛肉に限らず大豆や羊肉、バター不足といった問題もつながっており、商品市場、金融業界の問題へと、問題の広がり&そもそもどこに問題があるのかと追求していきます。
少なくとも現在、中国が世界の食糧問題でどういうポジションにいるのか、それがそんなに単純な話ではないこと、それらが日本の食糧事情にどういった影響を及ぼすのか、世界の食糧事情との兼ね合い等々、この本一冊でかなりの部分を網羅していると思います。ヨーロッパを除く、かな。
そして里山(と、里海)の話。ざっくり言うと今回の話は食糧問題であり根本的に無関係ではないですし、こじつけとまでは行かないものの、それまでの話を“里山”へ誘導しているかのような印象があります。この方は『里山資本主義』の関係者で、宣伝的なにおいを感じてしまいました。途中まではよかったのに最後の解決方法でそれを出しすぎたためにかえってこの1冊が浅い印象になってしまいました。
ただし、KKRまで取材に行ったのは誉めてあげたいと思います。
全体的な頑張ってる感とがっかり感の兼ね合いで星1つマイナス。がっかり感にはタイトルと装丁のせいで牛丼好きにアピールしているかのような印象があるのを含みます。繰り返しになりますが私が手に取ったのは番組で見ていたからであって、牛丼にさほど興味がない人は手に取らないのではないでしょうか。
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牛肉資本主義 井上恭介著
2016/2/7付日本経済新聞 朝刊
中国の「爆食」が世界の食料事情に及ぼす影響を、各国を取材して検証した。中国の牛肉輸入の急増が日本の商社の買い負けを引き起こし、ニュージーランドでは放牧の対象が羊から牛へと変化。ブラジルでは草原地帯が広大な大豆畑に姿を変える。根底にはサブプライムローン問題と共通なマネーの論理があり、食品価格の高騰を通して低所得層から豊かな食卓を奪いかねないと警鐘を鳴らす。(プレジデント社・1500円)
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リーマンショックの後、息を潜めたかにみえた「マネー資本主義」。このグローバルマネーが次のターゲットに選んだのは「牛肉」だった。
身近な話題をもとに、食糧問題が起こった時に日本はどのように対応すべきか考えさせられる一冊です。
(NDC 648.2)
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牛肉をメインにして、 グローバル資本主義の切り口から、今後を展望批判をし、解決策の糸口を見つけていく趣旨だと思うが、どうも取材及び話の構成があっち飛びこっち飛びで良く解らない上、結論は強引に里山資本主義、里海資本論へと向かう。
理屈ではそうだろうが、何億トンという世界からいきなり里山への帰結はちょっと違和感を覚えてしまう。
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☆本末転倒
・金融商品
移民としてアメリカに渡ってきた人でも家が買えるよう
リスクを分散させるローンの仕組みを作った。それがい
つの間にか、その仕組みのもとでローン債権を組み合わ
せて作り出した金融商品が「利回りが高くていいね」と
となり、投資家が群がり「どんどん住宅ローンを借りて
もらえ」となった。やがて「ローンを組める収入はなく
てもいい」となり、危ないローンを組む方がローンの金
利を高く設定でき、それをもとに作られる金融商品の利
回りがさらに高くなるから好都合。
・牛肉争奪戦
リーマンショックの後、ギリシャ危機による欧州の経済低迷。それまで大量に買っていた機械などの製品輸入をEU諸国が減らした。「世界の工場」である中国はもろにあおりを食った。貿易商が「牛肉輸入業」に転職。儲けを増やすために、もっと牛肉を輸入したいから、どんどん食べさせようとした。マネー資本主義が得意とするある種の「逆回転のサイクル」が加速度的に回り始めた。
牛肉をめぐる争奪戦が世界で激化し値上がりにつながっている。
さらに牛のエサになる大豆の調達も難しくなっている。
味噌や醤油などが将来 充分に確保できなくなる恐れが出ている。もしかしたら当たり前に食べているものが食べられなくなるかもしれない。食をめぐる異変の震源は13億の人口を抱える中国。きっかけは去年1月 中国政府が表明した食料政策の転換である。
人口の増加と経済成長による所得水準の向上から牛肉の消費が拡大。国内の生産だけでは賄いきれず輸入拡大に大きく舵を切った。
牛肉の約6割を輸入に頼る日本。
その確保が難しくなるのではないかという危機感が広がっている。
牛肉を扱う商社 双日食料の池本俊紀部長。
主力商品は脂身の多いばら肉ショートプレートは牛丼やコンビニの弁当などに広く使われている。
これまでは安定して手に入れることが出来たが
中国の輸入拡大に伴い価格が上がり必要な量を確保できない事態に直面している。(双日食料 池本俊紀部長)
「量を満足に買うことができない状況。日に日にひどくなる。」
この日 外食産業向けに牛肉を加工する業者に状況を説明した。
半年前は1キロ760円だったショートプレートが1、155円と5割も値上がりした。(取引先)
「正直びっくりしました。ここまでとは。他国に買い負けて消費者に満足できる量が供給できなくなる時代が本当に来るのではないかと感じている。」
なぜ中国で急激に牛肉の輸入が増えているのか。
去年11月北京で開かれた食の見本市。牛肉などの輸入拡大に政府が方針転換したことをうけ世界中のバイヤーが集まった。
中国の1人あたりのGDPは消費が拡大するといわれる3,000ドルを超え今や7、000ドルに達する勢い。
食の西洋化が進み牛肉の消費が爆発的に増えている。
これまでほとんど牛肉を食べなかった地方都市でも消費は拡大。北京から西へ500キロ 中国内陸部にある山西省の輸入牛肉を扱う加工場。この工場ではオーストラリアから牛肉を輸入。加工が追い付かないため今年さらに施設を拡張する計画。牛肉の輸入で3億円を売り上げるバイヤー。
Q.牛肉がすべて中国に奪われてしまうと日本では心配しています
「それなら私から買えばいいじゃないですか。山西省に来ればいい。いくらでもありますから。」
中国で買い負ける状況が続く日本。
ショートプレートの確保が難しくなるなか商社の池本さんが対策に乗り出した。ショートプレートの代わりにこれまでひき肉用にしていた部位を使おうと考えたのである。(双日食料 池本俊紀部長)
「食べたいものが食べられなくなることは絶対に起こってはいけない。それは非常につらいことだと思うので日本を守っていかなければいけないというのが私たちの使命だと思っている。
・中国の学校で導入されてきている給食制度が食文化を変える。幼稚園から小学校まで給食制度に変わる。幼稚園間で園児の争奪戦が激しくなり、給食の中身が勝敗のカギを握る。ミルク・乳製品・そしてステーキ。
人の数より羊の数が多いといわれるニュージーランド。
羊⇒乳牛。中国行きの牛乳を絞る姿。
乳廃牛:乳量が下がったり、繁殖できなくなった「肉」になる牛。
グローバル化が進み、アメリカ産の穀物を買う国が増え、それなしに生きられなくなった。
大豆
戦後長い間、世界一の輸入国。1990年代、中国が抜き去り、日本の20倍、年間7000万トン。2020年には10000万トンになるとに見方。つまり3000万トンどこかで作らないと足りなくなる。
日本は300万トン、決して小さい数字ではない。
中国の統計に基づくと、
食料の総生産量は11年連続で増産、2014年は6億2000万トン(コメ、小麦、トウモロコシ、大豆・・・・など)コメと小麦は安定して需給バランスが取れている。
・大豆:豆製品用は1500トンすべて自給。油を搾るための遺伝子組み換え大豆も少しは国内栽培
搾油や搾りかすを飼料用に使う大豆輸入の7000万トンのうち、3000万トンを北米から4000万トンを南米から輸入。農業資源化開発を南米でできた
商社マンの「基本のキ」に戻る。現場主義というのは昔も今も変わりなく、見て会って話さないとわからない。
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2.5 中国の爆食により、日本の商社が牛肉や大豆の輸入取引で買い負けている。魚で起こっている現象が他にも拡大しているみたい。近未来、日本の食料事情は大丈夫なのかな?
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牛肉争奪戦の取材をベースにした内容。牛肉だけでなく食料全般で起きている、爆食による市況の激しさがよくわかる。読むと本当に牛肉が食べられなくなるのでは?と思えるほど今そこにある危機と感じる。ただ、水も食料も持続可能な仕組み考えないと、必ずしっぺ返しがくる
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牛丼が値上げされたり値下げされたりすると、なぜか報道で扱われる。かくいう僕も、肉なんかなくても生きていけると思う反面、実は割と牛丼が好きだ。妙に安いな、と思うけれど。
中国の爆食で日本が買い負ける、というのはなんとなく理解していた。けれど中国はアメリカ産の牛肉をBSEを理由に禁輸している。ところが香港なら輸入可なので、そこから陸路で持っていけばOK、らしい。実際に本土の市場にはアメリカ産の名前が堂々と入った箱が取引されている。けれど、それが本物かはわからない…。
日本の牛丼チェーンは、ショートプレートという部位だけが欲しいが、中国では全部の部位を食べるし解体コストも安いから、それもあって買い負けてしまう。
そこで、ああ、もう安い牛丼は食べられないのね…というノスタルジーにひたる本、ではない。
牛肉は儲かるようだ、と「にわか」な人たちが参入する。人より羊が多い、とおぼえていたニュージーランドでも、羊農家は牛にくら替えしている。そっちのほうが儲かるから。どんどん肉をつくり、どんどん多くの人に食わせる。みんなが欲しがると価格があがる。混乱すればするほど儲かる。
食料が投機第一で動くと、出荷して儲かる、ということは優先されるが、たとえば何らかの理由で出荷できない、としても、儲からないだけで責任は問われない。食料危機が起ころうがかまわない、というより、起これば起こったでまた儲ける。
そういう世界を一通り否定的な眼差しでおさらいした後、巻末には「里山資本主義」「里海資本論」的なお話が登場する。マネーの世界のらせん階段を降りろ、と。
牛丼が食べられなくなっても、それはそれでいいや、と思っていたけど、それはたまたま自分が殺されないから人が殺されてもいいや、ということに似ているかもしれない。ただ、憤慨するのは簡単だけど、どうやってらせん階段から降りて、同じ所を回ればいいのか。それが実に難しいのだ。
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少し前の本だが世界的なインフレが起きている今読んでもおもしろい。著者ら取材チームのフットワークの軽さが背景にあり、エピソードから別のエピソードを楽しめた。
マネーが世界を支配する新自由主義を是正すべきタイミングなのだろう。国や国際機関が価格変動の幅を一定に抑えるなどの施策が必要かもしれない。
ただ里山資本主義が答えなのかについてはわたしは懐疑的。こういうところで育った肉を購入できるのは富裕層に限られて庶民には高嶺の花だろう。牛肉を角に食べなくてもよいような意識の変革などはできないものだろうか。