紙の本
願わくば名作のオコボレを少しでも長く頂戴できますように。
2016/01/31 09:39
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:朝に道を聞かば夕に死すとも。かなり。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
↑これが文庫版の結尾です。
名作のお尻の部分から見開き1ページで終わる書評を書かれています。「きのうきょう出た新刊書じゃないのである。やや強引に定義し直せば、人々がある程度内容を共有している作品、「お尻」を出しても問題のない作品が「古典」であり、「名作」なのだ。」と「はじめに」で書いています。
カフカの『変身』は主人公が虫になる話ですが、斎藤さんは介護者と被介護者の現場だと印象を持ち、『変身』の解説を書いた有村隆広さんは「登校拒否児」「ノイローゼになった猛烈社員」を連想させると述べていたそうでして、ここらへんが風雪に耐えた古典の「読み」なんだと思います。時を超えて新しい解釈が生まれる。
昔の恋愛小説も今の価値観で読んだら「何?これ、ひどい」とか思うわけです。そうした柔軟な思考が生き生きと書かれているんですが、読後感はそんなに名作を「ひどい」と思わせないのが不思議な感覚です。
132冊の名作の解説がだだっ広く続くのかと思いきや「あの作品とあの作品は系統がある」みたいな繋がりを意識させることができる部分もあります。
で、名作のエンディングは一件落着といった閉じた結末と、作中の人が泣いたり歩いたり物語は終わるけど、「中の人」の人生は続くという開いた結末。
で、文庫版のあとがきで、お尻を取り扱ってきたから「罰が当たった」と述べています。何が書いているのかはここでは書きません。ただお尻の部分は「斎藤がそれなりに頭を悩ませたのも事実である」とします。
「願わくば名作のオコボレを少しでも長く頂戴できますように。」をじゃどう解釈したらいいの?素直に読んだら「続刊のCMかい!」ですが、途上感は確かに感じます。何だろね?これ。そしたら、ご本人が書いていました。
「読者への挨拶で終わる本は、ちょっと見素朴に思えるが、気取りを捨てた本ともいえる。言い訳も自己主張もえらそうな箴言も、著者の情熱に免じて許してやろう。」
一般人の書評で、斎藤さんのスタイルを丸パクリしていいのかって?いいんですよ。名作なんだから。
紙の本
文芸評論家の斎藤美奈子氏による文豪たちの意外なエンディングのセンスを知りながら内容全体を把握する分かりやすい文学案内書です!
2020/09/08 10:51
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、『妊娠小説』をはじめ、『紅一点論 - アニメ・特撮・伝記のヒロイン像』、『読者は踊る - タレント本から聖書まで。話題の本253冊の読み方』、『あほらし屋の鐘が鳴る』、『モダンガール論 - 女の子には出世の道が二つある』などの話題作を発表されている文芸評論家の斎藤美奈子氏の作品です。同書は、『雪国』や『ゼロの焦点』から『赤毛のアン』といった古今東西の名作132冊を最後の一文から読み解く、これまでになく分かりやすい文学案内書です。文豪たちの意外なエンディングのセンスが分れば、内容もおのずと読めてきます!
投稿元:
レビューを見る
半分くらいは既読。だからこそ贅沢で楽しい本。
それにしても、
ここは輝くほど明るい闇の国家である。
決まりすぎでクラクラ。
投稿元:
レビューを見る
数年前、女優でエッセイストの中江有里さんがテレビ番組の中で紹介していたので、気になっていた本書。
当時は単行本だったので買うか買うまいか悩んでいた。結局、買わずに年月が過ぎた。
いつものように、書店を眺めていると、文庫本化されているではないですか!
そっと手に取りレジへ向かい、ようやく手に入れたのであります。
著者の斎藤美奈子さんのプロフィールを見ると、児童書等の編集者を経て、文芸評論家としてデビューとある。余談だが、児童書の編集者というとどこの出版社だったのだろう、と思いを募られてしまう。
さて、古今東西の名作と言われる作品の書評とあらすじ、冒頭の一文を紹介する本は数あれど、エンディングから紹介するのは珍しいのではないか? そこに興味を持ったわけです。
1青春の群像
2女子の選択
3男子の生き方
4不思議な物語
5子どもの時間
6風土の研究
7家族の行方
七つの分類から見る物語のエンディング数々。最初の一文も大事だけど、最後の一文も大切なんだと思った。
編集者出身とあり、見るところも違うような気がする。
小説家になりたい人にも、これは勉強になるのではないかと個人的には思うのでありました。
投稿元:
レビューを見る
名作文学作品の書き出しは、試験にあるいはクイズにも出るほどであるが、ラストの一文は、あまり注目も集めてない。そこに、着眼した著者のユニークな書評集。
1青春の群像、2女子の選択、3男子の生き方、4不思議な物語、5子供の時間、6風土の研究、7家族の行方、と分類され、その数132作品。
未読の作品は読んでみたい気持ちを起こさせ、既読でも再度読みたくなる、そんな書評集。
投稿元:
レビューを見る
単行本で読んだあと「あれも読もう」「これも読まねば」と思いつつ、結局あんまり読んでない名作の数々。
またもや「あれも読もう」「これも読まねば」となりました。
投稿元:
レビューを見る
有名な書き出しは数々あれど、さてラストは? 古今東西の名作132冊を斬新な視点で読み解く、楽しくてタメになる丸わかり文学案内
投稿元:
レビューを見る
自身の読書量の少なさを痛感。世の中まだまだ面白そうな本があるではないか。
ビジネス書がどうしても増えていくなかで、過去の名作もしっかり読みながら、人間力を高めなければ。目次コピーして、手帳にしのばせ、紹介されている本を少しずつ、意識的に読み進めよう。著者とは違う感想や視点を持てると尚よい。
投稿元:
レビューを見る
「古今東西の名作132冊をラスト一文から読み解く」
つまり、名作の書き出しの一文は有名になるのが多いですが、作品最後の一文は忘れられてしまうようだ。
例えば超有名な「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」の『雪国』末尾は覚えてない・・・。また、「下痢はとうとう止まらず、汽車に乗ってからも続いていた」というラスト文、わたしは「お見合いに行く令嬢に、これ、ないんじゃないのぉ!」とよく覚えていましたけども、この『細雪』の書き出しは、「はて、何だっけ?」
斎藤さんはほんとにいろいろな切り口を見つけ出しますね。
総数132冊、おもしろい名作案内でした。(続編もある)
このような名作ガイドを読むとき、長年本に親しんでいたわたしは非常に嬉しくなります。
ま、132冊のあれもこれも読んだからこそ、わかる文学論、いえ、高級文学ブログ本です。
新聞連載をされて、まとめてあるものですが、もうブログのように楽しく読める文学案内ですから。
1ページごとに一作品、簡単な作者略歴、時代背景がまとめられていて見やすい。
なお初版発行年数が西暦なのもいい。もう、明治大正昭和では時代がつかめない。あ、それからここには平成の時代に発行された本は取り上げられてないですね。名作は30年かかって出来る!?
ええ、ええ、国語文学史のサブ教科書を読むなら、こちらの方がよほど頭に入りますよ。
投稿元:
レビューを見る
烏兎の庭 第四部 5.18.13
http://www5e.biglobe.ne.jp/~utouto/uto04/diary/d1205.html#0518
投稿元:
レビューを見る
とはいえ、末尾の一文一場面「のみ」に特化して読み解いてゆくということでもなく、粗筋もわかるし冒頭の一文が紹介されているものも数多くあるし、作品によっては発表当時の時代背景などに言及しているところもあって、つまるところが見開き1ページで読める読書案内。
投稿元:
レビューを見る
最初も最後も印象的なのは「走れメロス」でしょうか。名作の最初と最後を書き出して比較するのも面白いかなと思いました。ピリッとした解説が良いですね。