紙の本
大人のウルトラマン
2016/01/29 06:24
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:amazon02 - この投稿者のレビュー一覧を見る
まだ読了していないですが、設定と、三島氏というポイントで購入。
仮面ライダー、戦隊シリーズが平成に入って子供向けにも成功し、かつ昔子供だった世代にも広く支持層を拡げているのに対し、ウルトラマンは、遅れを取っていると言える。
それはおそらくこの作品のようにウルトラマン自体の内包するテーマ性が、非常にハードで複雑なものだからなのだと思う。
商業的に子供と玩具を意識した時に、ネクサスが失敗したのは、まさにこのウルトラマンデュアルがベースにしている、種族間の対立と、その種族内での抗争を描こうとしたこと。
ビジュアルと、毎週20分足らずの時間に毎回重い話では、子供はついてこられない。逆に子供を意識しすぎればハードな設定が生かせない。「巨人」という要素がそれを阻害しているのは明らかだが、このデュアルという作品は冒頭で人間サイズの光の国の住人が登場する。それがこの先どう生きて話を引っ張っるファクターとなるのか、楽しみながら読んでみたい。
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ツブラヤ+ハヤカワ・コラボの2冊目。三島浩二によるウルトラマン長編。
地球に定期的に怪獣が現れ、それをウルトラマンが迎撃するというクリシェを三島はいかに小説として設定したか。
宇宙にはギャラフィアンという侵略的な奴らがいて、その一角を担うのがヴェンダリスタ星人。要するに悪い宇宙人だ。地球を占領しにきたヴェンダリスタに、もう屈するしかないというときに、彼らと敵対する勢力、光の国の艦隊がやってきて、地球近傍宇宙空間で激しく交戦、双方壊滅的な被害を受ける。光の国の聖女を乗せた戦艦はヴェンダリスタによって廃墟にされた東京の一角に墜落。戦闘員は全滅している。かたやヴェンダリスタも生き残りは数人。双方の援軍がやってくるまでしばしのモラトリアムが生まれる。
人類はそこで一計を案じて、中立を宣言。光の国が東京の一角に侵略してきたとヴェンダリスタに保護を求めることでヴェンダリスタの顔を立てる。光の国は侵略者の汚名を着ることでヴェンダリスタから人類への攻撃をとりあえず抑止するという外交。光の国の領域には壁が築かれる。
しかし人類の味方は光の国だ。有志が壁の向こうの飛び地、光の国の応援にはいる。それには人類であることを捨て、ウルトラ化の処置を受けねばならない。そうすると人間から等身大ウルトラマンへの変身能力を得て、光の国の装備を使うことができるようになる。その中のごく少数が戦闘型の能力を持ち、さらに選ばれた者だけが巨大化して戦うデュアル変身が可能である。光の国の輸送艦にはギャラフィアンから保護した宇宙の生物たち、つまり怪獣を格納していたが、いまやヴェンダリスタの手に落ちており、ヴェンダリスタはその怪獣を凶暴化して飛び地に送り込んでくる。一代目のウルトラマン・デュアルはヴェンダリスタの卑劣な策謀により命を落としている。主人公・二柳日々輝は飛び地にはいり、2代目のデュアルになる。実はデュアル変身するからデュアルなのではなく、別の意味があるのだが。
他方、地球に残った3人のヴェンダリスタ星人は自分の宿体を世界各地の多数の人間に寄生させて、人類を監視している。反乱分子をブラックリストに載せ、ヴェンダリスタの侵略が成功した曉には処刑するとしている。しかしヴェンダリスタは大人の身体にとりつくことはできない。密かに飛び地を支援する組織〈序の口〉に属する高校生・三矢がもうひとりの主人公。ドラマの半分は飛び地の外で進む。
この設定に作者が凝らした意匠は相撲である。飛び地が土俵。ウルトラマンと怪獣との相撲はこの土俵を割ってはならない取り決めになっている。ウルトラマン・デュアルは別称シラヌイ。だから後でもうひとりのウルトラマン、ウンリュウも出てくる。
それから重要なモティーフが涙。光の国の聖女は〈涙を語り継ぐ者〉という意味の名前を持ち、それゆえティアと呼ばれている。墜落した宇宙船はいまや砦であり、ティアズ・スタンドと呼ばれる。そしてウルトラ化を受けた人間は、人であることを捨て、もう涙が流れない。
背後にあるテーマはやはりモラールなものである。ヴェンダリスタに中立を唱える地球の諸国政府は命のため��正義を引っ込めた形だ。しかしどうしても正義を立てたい人は飛び地に渡る。それによって人類は分断されることになる。光の国の社会にもヴェンダリスタの社会にも分断がある。
主人公とはいったものの、それぞれ心意気を持った個性的な登場人物の織りなす群像劇である。絶望的な展開はこれまでの三島作品を思って悲劇的な結末を覚悟しつつ、ウルトラマンゆえにハッピーエンドがあるのではないかと期待しながら、読む。
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下書きのまま出版してしまったのかと思うほど、文章が物語文としてこなれていない。同じ言い回しをわずか3行でもう一度使ってしまっている箇所もあるので、推敲する時間がなかったのかもしれない。
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帯に「人類よ、いつまでも光の巨人に甘えるな」とある。
「光の国の飛び地」で、地球人であることを捨て、ウルトラマンとなって侵略者と戦う。
これだけで、胸熱くなる。
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【由来】
・amazonでたまたま
【期待したもの】
・プロメテウス?
【要約】
・
【ノート】
・札幌図書館一番ノリで読んだ。円谷プロのウルトラマンワールド多角化の尖兵と言える、老舗早川書房とのコラボ企画第2弾。短編集だった前作とは違い、本書は読み応えのある書き下ろし長編。
・地球に侵略し、「他の宇宙人よりも侵略のプロ」を自認するヴェンダリスタ星人。狡猾に地球人類を恫喝し、光の国からのウルトラマン陣営をも自分達と同じ「侵略者」として位置づけさせる。その結果、活動範囲が限定され、その東京の一角は、建前上は「光の国の侵略エリア」という位置づけになる。「ウルトラマン陣営」と言ったが、オリジナルは光の国の聖女とピグモン型怪獣(?)の2体のみ。日本人を主として、光の国を目指すものも多かったが、政府は立場上、その関所をくぐり抜ける者達に対しては国籍を剥奪する。それどころか、光の国に入った地球人はウルトラマン化し、地球人でもなくなってしまう。「ウルトラマン化」と言っても、誰もが戦闘可能な巨体になるわけではなく、砦となった光の国の宇宙船の中で各種作業に従事している。怪獣との戦闘が可能なウルトラマンは「デュアル」一体だけだった。
・「宇宙人って、何で『星人』と言いつつも1人なの?」という疑問に対しても新しいパラダイムを提示しており、それがきちんと物語で重要な機能を果たしているのも面白い。
・金子監督の平成ガメラが成功をおさめたのは、それが単なる怪獣パニック映画だったのではなく、自衛隊を中心に、人間社会の反応をシミュレーション的に描いて見せたのが大きな要因の一つだと言われている。「デュアル」もそれに近い。苦悩しつつギリギリの妥結点を探る官僚級のやり取り。簡単になびく国民感情やレジスタンス。「いじめ」のメタファーでもあるヴェンダリスタ星人の地球人支配。「飛び地」を一歩でも出たらウルトラマンでも自衛隊は攻撃するという切なさ。この辺りの重たい政治シミュレーションを読んでいると、脳天気なTV版ウルトラマンのストーリー展開がありがたく思えてきて戸惑った(苦笑)。
・主人公が「仮面ライダーフォーゼ」の如月弦太朗のノリというところから、あまりブラックなエンドではないことを予期してはいたが(何といっても「ウルトラQ」や「怪奇大作戦」と違って「ウルトラマン」なのだから)、少しラストが物足りない。何といっても400ページ中、最後のカタルシスはたった8ページしかない!それまでがあまりにも重たい展開だったのだから、こんなに急いで畳む必要はなかったのではないだろうか。もっとカタルシスと涙あふれるラストを期待してたのに〜!!それとも何か、読者にもウルトラ化して、泣きたいけど泣きたい、を疑似体験させたかったとでも言うつもりか!?(笑)
・それにしても第1弾に引き続き本書でも登場、そして、結構重要な役どころを担ったピグモン。ゼロ様もぞっこんラブだったし(見た人にしか分からんネタ)、もうウルトラワールドのマスコット、決定やな。
【目次】
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ばーっと飛んできてばーっと怪獣倒してばーっと飛んでって人々がわーっと喜ぶ…なんて単純な話にならない現代のウルトラマンは大変ですね。
人々の応援がエネルギーになるのに、そこに複雑な政治的思惑が入り込んじゃうと非常に厳しい。
人心掌握手段には欠ける正義の味方です。
相手が墓穴掘るの待つしかないというのは本当に厳しいですね。
最後はちょっと駆け足。
ゆっくり読まないと何がどうなったか分からなくなります。