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再読でも面白かったです。
自分の恋愛観にしっくりくる恋愛小説は川上弘美さんのものだな、と思っていたのですが、千早茜さんのものもかなりしっくりくることに気付きました。
千早さんの恋愛小説は、表面は冷淡なくらい淡泊なのに、底の方では温度の高い青い炎が揺らめいている印象です。
空虚感を持っていても、それでも、誰かと一緒に生きていこうとか、傷付いても人と関わっていこう、という思いも抱きます。
それでもいいよ、という赦しというか、こんな自分でも生きていてもいいかも、と思います。
お話は「やけど」「うろこ」が好きです。藤森と松本のこれからは明るい気がして。
千影さんも好き。皆さん幸せになれたらいいなと思いました。
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結婚を前にしながら浮気をしている女性たちの短編集。若干いびつな心情が丁寧に語られていて、共感しながら読み進めることができました。特に『ほむら』が好きです。 またそれぞれの作品から他の作品の後日談的なものが語られ、不意に嬉しくなったり悲しくなったり、単純に読みきれない本作に翻弄をされてしまいました。ふとしたときに読み返したくなるような、複雑な読後感でした。
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恋愛において人それぞれの内面的な視点が描かれていて面白かった。私が実際に出会ったことがなくても、励まされることばが確かにある
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あとかた
千早茜さん。
第二十回島清恋愛文学賞受賞
登場人物が次々に物語の主役になる短編集。
それぞれの気持ちが、伝わった 。
おもしろかった。
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1行目からすっと引き込まれました。
日常をつつがなく生きるために言いたいことに蓋をしたり、本心から目を背けたり、欲しいものを欲しがることをやめているのかもしれない。
人の決して表に出さない部分や自分でも気づいていない本心や欲望が、生々しくて読んでいてヒリヒリしました。
サキちゃんと松本くんの話がとてもよかった。
それぞれの人物のことをあまり描き過ぎず曖昧なままで、その後どうなったかも描かれていない。
個人的にはストレスになる種類の短編集なのですが、だからこそぬるぬるとした余韻が残る1冊でした。
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低温火傷。
そんな言葉がしっくりくる温度。
千早さんの綴る世界はそんな感じ。
ふわふわと漂っているように見えて
時にとても冷たく、時に燃えるように熱い。
現代人の微妙にアンバランスな心理の表裏を巧みに描く人だ。
短編集だが、終始 人との繋がりに形を持たせたいのに形にしてしまうのが怖かったり、はたまたどう遺せば最善なのか、曖昧な形ないものに翻弄されながら日々を送る主人公たちの話。
ゆらゆら不安定な心情描写がどこかリアル。なんだよなぁ。
収録タイトル
ほむら / てがた / ゆびわ / やけど / うろこ / ねいろ
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千早茜さんは最初に読んだ「魚神」が何とも不思議な味わいだったが、2冊目に読んだ本作は、現実にありそうな設定の連作短編で、こっちの方が好きかもしれない。
最初の「ほむら」に出てくる飄々とした「男」がとても魅力的だった。次の「てがた」では語り手の上司である黒崎として登場したので、この時点でこの短編集はこの男を取りまく人物たちが、だんだんと男の輪郭を作っていく構成なのかなと思った。川上弘美の「ニシノユキヒコ」みたいな。
が、全然違って、「ゆびわ」「やけど」「うろこ」と話の中心は別の人物たちに移っていき、結局、このかなり特異な存在の黒崎については、それ以上のことは語られないまま終わる。
何だか釈然としない。
「ゆびわ」以降も悪くはなかったけど、今風のふつうの恋愛短編になってしまった。一人だけ異世界に住んでいるような黒崎の話をもっと読みたかった。
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著者の恋愛観は一貫している。果たしてそれが愛と呼べるのか不確かなものの中にこそ本質が潜んでおり、暴力すらも愛との境界は曖昧だということを。
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傷だらけの登場人物たち。
この本は恐らく出会うべき時というものがある本なのだろうと思う。
どれもこれも痛々しく生々しい物語であって、なかなか感想が湧きにくい。
傷だらけであるからこそ、愛してくれる他者を深く激しく求めてしまうのだろう。
そのあり様は極めて暴力的であって、本来欲しいはずの共感や理解、愛情とは正反対にも映る。
他者と交流すること、会話をすること、愛することはひょっとしたらどこか互いに傷を付け合うことなのかもしれない。
この痛々しい、生々しい物語に言葉がなかなか出てこない。
ひょっとしたら、出会うべき時に出会わなかった本だったのかもしれない。
こういう本は恐らく、出会うべきタイミングがあるのだろう。
時間を置いてまた再読したいし、出会うべき人もきっといる本だと思う。
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「恋愛連作短編集」とあり、ある短編に登場した人物が別の短編で他の形で登場する。とりわけ、1編目に出てくる男はあちこちに出てくる。物語に登場した時はそんな気配もなく、川上弘美の『ニシノユキヒコの冒険』の主人公のような、太宰治のような、女性の間をゆらりとするような人物に感じたのが、ページが進むごとにそれだけではない面が見える。ふわりふわりとした印象だった男性はその自死ゆえに、意外なほど人々にその影響を残す。ほんの一文、一言出てきただけの人物が、別の章では語り手として登場する。
同じ作者の『西洋菓子店プティ・フール』とは雰囲気も読後感もまるで異なる。他の作品ももう少し読んでみよう。
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連続して千早作品を読んでみた。 短編集だが一つ一つの物語がリンクしてる感じは湊かなえの「告白」や伊坂作品に近い感じ。 女性作家が書くこの手の作品は女性特有の価値観で書かれてるものが多くて好きではないが、この作品は男性目線での感情や心情がとても繊細に描かれてて共感が持てる。 決してハッピーエンドではないが読後感がとても良く穏やかな清らかな気持ちになる。 他作品もとても楽しみ❗
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全て良かったけど、『てがた』が一番好きだった。屋上に座って、ひょいっと飛び降りられるような人が現実で自殺の実行力なり衝動性があるのかどうかは微妙なところだけど、人は見かけによらないというショックを受ける美しい設定だと感じた。『ねいろ』で「はじまりに戻りたかったのだろう」みたいな描写があり、その解釈自体はかなりしっくりきた。
『やけど』と『うろこ』はきゅんきゅんできる良いセット。サキと松本、それを見守る千影さんや啓介のいる世界が温かかった。
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黒崎という男に関わった人達と、その配偶者・同居人・知り合いの話。
『ほむら』…主人公の女が性交中、黒崎に放った言葉が気になる。結局明かされることはなく。
『てがた』…仕事にかまけて子供のことは放りっぱなしの洋平。黒崎の部下。仕事頑張るのは良いことやけど…ねえ?
『ゆびわ』…洋平の妻・明美。こいつが1番いい性格してると思う(笑)
『やけど』…黒崎に囲われていたサキ。色々と暗い過去を背負って生きている。この子は幸せになってほしい。
『うろこ』…サキの同居人・松本。この子も色々大変な人生を送ってる。幸せになってほしいパート2。
『ねいろ』…サキがパブで知り合ったフィルド弾きの女性・千影。幸せになってほしいパート3。
明美のセフレ・イナダ、千影の恋人・立川、黒崎の話も読んでみたい。
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「わるい…」シリーズから流れて著者の小説を手に取った。
単純に6編の短編集ではない。
不思議と登場人物の存在感に空虚さや希薄さを感じる小説だ。もちろん現実の世界にいてもおかしくない登場人物をしっかり描いているのになぜだろう。読み手の問題なのか、著者の表現のしかけなのか。他の小説も読んでみたい。
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千早茜の描く物語は、救いだ、といつも思う。
彼女の物語に登場する人々は絶望的なくらい不安定で脆いのに、つよい。駄目になってしまわない、救いがある。
決して堕ちない救いがそこにあるから、嬉しくてほっとして、どこか羨ましくてつらい。
孤独と愛と向き合う、6話の連作短編集。
愛と、「何かを遺すこと」はどうしていつも一括りにされるのだろう。何も遺せなくても、そこに愛があったことは真実で、素晴らしいことなんだ、って。
「ゆびわ」のラストが声が出そうになるくらいつらかった。
友達の店を手伝っている、と夫に嘘をつき、子どもを預け、年下の男の部屋に通っている女性。
何も遺せなくても、何も遺してはならなくても。
“まるいあたたかみが胸を締めつけてくる”という表現が秀逸すぎて鳥肌がたつ。決して振り返ってはならない。
あとラストの「ねいろ」がたまらなくよい。
千影さんの愛を全肯定してくれる水草くん。何も遺せなくても、大義名分なんてなくても、ただ愛したい。
“たとえ明日、世界が終わるとしても魚も人もきっと恋をするもの。”