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古典新訳版の第4巻。
同時期に刊行が始まった岩波文庫版が随分と先に進んでしまったが、こちらはずっと新刊が出なかった……。岩波文庫版で読んではいるので、一種の再読になると思うのだが、訳文はやはりこちらの方が好み。
ところで、巻末の『読書ガイド』に、『筋だけ追って読むのはあまりに近視眼的』という一文があるのだが、『失われた時を求めて』をストーリーだけ追う読者はいないと思うw 筋だけ追ってたら飽きるって、絶対w
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原書名:À la recherche du temps perdu
著者:マルセル・プルースト(Proust, Marcel, 1871-1922、フランス、小説家)
訳者:高遠弘美(1952-、長野県、フランス文学)
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「私」は、バルベックでアルベルチーヌと「花咲く乙女たち」に出会う。
この物語を読んでいると、走馬灯のように人生の様々な出来事が思い出される。
そして、読むほどに自分の姿が露わになってくる。
もちろん、思い出すのは楽しい思い出ばかりではない、それどころか、むしろ「苦しきことのみ多かりき」なのだが、僕にとってはこの物語自体が紅茶に浸したマドレーヌの働きをしている様なのだ。/
加えて、言うまでもなくプルーストの見事なまでに精緻な恋愛心理の分析を辿っていくことには、無類の楽しさがある。
呆れるほど息の長い彼の文体にしても、一度慣れてしまえば心地良い旋律となって、ハンモックの様にそれに身を委ねることができるのではないだろうか。
いやむしろ、この物語を読み込むほどに僕が感じるのは、冬場に車を運転していて曇ってしまったフロントガラスに、デフロスター(霜取り装置)をかけた途端にみるみる視界が開けていくときの爽快感なのだ。/
《私が彼女のことをこれほど美しいと思うのは、彼女の姿をちらりと見たにすぎないからだろうか。恐らくそうであろう。まず第一に女の傍らで足を止めることができず、別の日にはもう会えないかもしれないとすれば、女は俄然魅力的になる。
ー中略ー
もし馬車から降りて娘に話しかけることができたとしても、きっと私は馬車からは気がつかなかった娘の肌の何らかの欠点を見つけて幻滅したことだろう(略)。
だが、一人の娘が私の目の前をまた通りかかった、
ー中略ー
私の思うに、このような出会いは世界をもっと美しく感じさせてくれるものであり、その世界ではあらゆる田舎道に、ほかとは異なっていながら同じでもある花々ーーその日だけで消えてゆくはかない宝であって散歩で出会う望外の贈り物というべき花々、(略)ーーが咲き誇り、人生に新たな魅力を与えているのである。》/
この部分を読んで、ある映画のセリフを思い出した。
《「あなたにとって、生き甲斐とは何でしょうか?」》
と聞かれた寅さんが答える。
《「そうさなあ、旅先でふるいつきたくなるような、いい女とめぐり合う事さ」》
(山田洋次監督『男はつらいよ 寅次郎心の旅路』より。)/
♫〜岬めぐりの〜バスは〜走る〜♫
そういえば、僕の出先めぐりの職業人生も、そんなものだったかも知れない。/
まず、シャルリュスの言葉を引こう。
《「(略)まあ、いずれにしても彼女は娘のそばに行きました。ラ・ブリュイエールはこれが一番大切なことだと言っていますね、『愛する人のそばにいること。何か話そうが話すまいが、それはどうでもよい』。その言葉は正しいでしょう。それがただひとつの幸福ですよ」。》/
《というのも、私たちが作品を作り出すのを可能にするのは有名になりたいという欲求ではなくて、たゆまず努力を続ける習慣であり、私たちが未来を守ろうとするとき助けとなるのは、現在の瞬間に味わう歓喜ではなく、過去に関する賢���な反省だからである。》/
《さらに、果たしてその日に彼女たちに会えるのか会えないのかという最初の不安に、この先いつか会えるのだろうかというもっと深刻な不安がつけ加わる。彼女たちがアメリカに出立するのかパリへ帰るのか、結局のところ私にはわからないからだ。彼女たちを愛し始めるにはそれだけで足りた。(略)しかし、恋愛の前段階となるあの悲しみや、取り返しがつかないという気持ちや苦悩を誘発するためには、不可能という危険がーーおそらくこの危険こそ相手の人間以上に、情熱が不安のなかで抱きしめようとする対象そのものなのだろうーー欠かせない。》
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語り手は祖母と避暑地バルベックで過ごす中でヴィルパリジ夫人、サン・ルーそして花咲く乙女たちの一人アルベルチーヌと出会う。
乙女たちに心惹かれる語り手がそりゃあもう思春期、青春真っただ中という感じでサン・ルーよりも乙女たちのそばにいたいという長々長々と言い訳めいた語りが続いたときには「男子ってやつは…」と微笑ましかった。
そんなに長い登場ではなかった悪友・ブロックの台詞がいちいち可笑しいので印象に残ってしまった。姉妹に「雌犬たちよ」(125/358)と呼びかける兄は嫌だ(笑