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紙の本
没後100年の今年こそ
2016/03/10 08:15
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
今年(2016年)は夏目漱石の没後100年にあたります。
今年の初めに刊行されたこの本もそういうことを意識して出された一冊ですが、書いているのは文学者でも研究者でもなく政治学者である姜尚中(かんさんじゅん)氏というのがいい。
なぜかというと、姜氏が漱石に強い思い入れを持っているのが、自身の出身地熊本に漱石がかつて高等学校の講師として赴任したことがあるからだとか自身が通った眼科に漱石も通ったことがあったとか、普通の読者が作家を好きになる、そんな気分が姜氏の文章にはあるからだ。
漱石を好きな人から漱石の話を聴く。
これってもっとも理解しやすいかもしれない。
夏目漱石が処女作『吾輩は猫である』を書いたのは1905年(明治38年)で、作家活動は亡くなる1916年(大正5年)までのわずか10年あまりしかない。
たった10年でりっぱな全集や幾多の研究本を生み出す作品を書いたのだから、すごい作家であることは言うまでもない。
それに漱石がすごいのは、それらの作品が今でも読み継がれていることだ。そういう作家は稀有といっていい。
姜氏はそんな漱石の作品群すべてを論じていない。その点もこの新書のいいところだ。
姜氏はこの本の中で『吾輩は猫である』『三四郎』『それから』『門』『こころ』の5編に絞って紹介している。
おそらく『坊っちゃん』がないという人もいるだろうし、『明暗』がないと怒り出す人もいるかもしれない。
しかし、作品を絞り込むことで漱石がうんと身近になっているように感じる。
近寄りがたい作家ではなく、読めそうな気がする作家。
姜氏はこの新書の読者層である中高生には、漱石をそういう作家として接して欲しかったのだと思う。
これら5編の作品の中でも姜氏がもっとも思いを伝えたかったのは『こころ』。
この作品を通じて漱石の思いを的確にまとめている。
すなわち、漱石は「いのち」そのものを伝えたかったということだ。そして、そのことは漱石が亡くなって100年経っても変わらない、人の思いとしてあるということ。
漱石をいま一度読んでみたくなる一冊だ。
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