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これから始まる「新しい世界経済」の教科書 ジョセフ・E・スティグリッツ著 中間層を成長させる政策主張
2016/3/13付日本経済新聞 朝刊
世界中で貧富の格差が拡大している。米国では全体の1%の超富裕層が国の富の大部分を独占しているという話はすっかり有名だ。日本はそこまでではないが、正規労働者と非正規労働者の所得の違いが問題視されるなど、格差は拡大傾向。どの国も経済の成長軌道を描けないでいる。
本書によると、このような問題が生まれたのはこれまでの経済理論が間違っていたからだ。経済の供給側(サプライサイド)を重視し、規制緩和や減税などで事業を進めやすい環境をつくっていけば、生み出された富は最上層からあふれ出し国民全体が豊かになるはずだった。ところがそんな効果は表れなかった。
現在、こうした供給側重視の理論には多くの経済学者が否定的だ。にもかかわらず、実際の政策の場では依然として幅を利かせているという。
そこで、本書は従来の考え方と決別し、分厚い中間層を育てることこそが重要と指摘する。そのためには最低賃金の引き上げなど労働者を守る政策、労働者がお金の心配をせずに医療が受けられる公的制度の拡充などが必要とする。富裕層には課税強化などを求める。
著者の従来の主張のまとめではあるが、いまだになんでも規制緩和でうまくいくといった主張がある中で、読まれるべき一冊だ。桐谷知未訳。(徳間書店・1600円)
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経済が衰えているのは富裕層の富独占ににありと説き、その原因は、ピケティの「r>g 資本収益は経済全体の成長率よりも大きい」では説明が十分では無いとして、金融の規制緩和や知的財産権、証券取引法、連邦所得税法、などの法的問題そしてFRBのインフレ抑制政策、労働組合の弱体化、各種差別など格差問題の元凶に鋭く切り込み、貧困は固定化すると憂う。
対策としては、知的財産権や貿易協定のバランスを取り戻し、金融セクターやFRBのガバナンス、そして税制の改革を行い、短期主義を抑制するなど、富裕層を制御し、公共投資の復活や労働者への権限付与を行うなどで中間層を成長を図ると提言している。
TPPにおいても製薬業界やハリウッド映画などを利する知的財産権などに反対しているのはグルーグマン氏と同様、ハリウッド映画などはどうでもよいが、病気での死活問題となる製薬関連で日本からは堤未果氏が声を上げているだけで、あまり騒がれていないのはなぜだろうか。
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20160512
過去40年で、アメリカの総生産は向上しているが、労働者の賃金はほとんど増えてはいない。
こういった、格差を無くすために経済のルールそのものを変えるべきだという主張。
いまのアメリカの法律などは、ごく一部の富裕層に有利なあり方になっている。
また、格差を埋めることが難しい、低所得層に生まれたこどもが、その所得層から抜け出すことが困難無くなったのかよになっている。
新しい世界経済と銘打ってはいるが、アメリカの現状を分析した本。
日本にどれほど当てはめることができるかは、まだ勉強不足なのでわからない。
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★2016年6月25日読了『これから始まる「新しい世界経済」の教科書』ジョセフ・E・スティグリッツ著 評価A
ここ30年で世界各地で急速に広がった格差の原因と対策を米国対象として分析し、その対策を探る。(ただし、スティグリッツ氏の意見は多分に民主党デモクラッツ的なので、その分は割り引いて聞く必要はあるかと思う。)
・各個人には能力の差はあるのだから、ある程度の不平等はやむを得ないと私は考えてきた。
そして、いよいよここに来て、世界中で不平等、収入格差に対する一般市民の不満が一気に爆発してきたように感じる。その原因は何か、なぜこのような状況になってしまったのかを分かりやすく分析してくれている。
・読み終わって、昨日の英国のEU離脱と合わせ考えてみる。
・東西・南北国際格差⇒アラブ国の混乱・ISの伸長=難民問題⇒欧州各国での受け入れの軋轢⇒昨日の英国のEU離脱決定 根本には、一向に良くならない経済問題がその根幹に存在。国別の丁寧な対応を取れない巨大になりすぎたEU政策の歪みに対する批判がこれからの世界経済を大混乱に陥れる気がしてならない。今年はようやく欧州景気も回復してきていたにもかかわらず、また景気の谷を自ら落ちていってしまうことになるのだろう。
・米国のトランプ氏の大統領選への勝ち残りも同様の原因があると考えられる。波乱の目は中国にも蔓延しつつあり、大衆の不満を中国共産党は不正摘発で抑えこむのに必死である。
・残るは日本なのだが、18歳の新有権者が波乱を起こしてくれるか?圧倒的なお年寄り多数派に抑えこまれてしまうのかは、興味深い今回の参院選ではある。
<備忘メモ>
■反競争的な活動、独占行為を規制、監視してきたシャーマン反トラスト法、れんぽう取引委員会方とクレイトン法
→80年代以降のサプライサイド経済理論の影響で規制緩和、経済自由化へ=最富裕層と資本収益に対する税率引き下げ
→労働・投資増加=雇用・所得・税収(トリクルダウン効果)の上昇を期待=企業の市場支配力が高まる。
⇒予測はハズレ、更なる不安定、成長の鈍化、不平等の拡大を招く
■短期主義の急速な台頭と拡大:短期的な利潤と株主利益に重点を置いた80年代以降のコーポレート・ガバナンスモデルが資本主義世界を席巻
・健全なイノベーション、長期的繁栄に繋がる投資減少、過剰なリスクテイクと短期転売による利益獲得を狙う企業乗っ取り、配当、買収を目的とする積極的行動主義の投資家激増。
⇒株主配当は倍以上に増えたものの、将来への投資は増えず、借金もしない企業増加
・従業員=長期的資産から短期的負債へ
実効税率の累進性&キヤピタルゲイン、法人税率下げ=最富裕層の納税額減、公共サービス低下。
全く政府の施策は経済の好転には結びつかず、中流以下の国民の生活水準は悪化。所得格差拡大
■安定・機会均等・貧困からの開放を目指し、21世紀の新しい政策が必要。
企業マネジメントへの過度の報酬を制限=レートシーキング(搾取を通じて他者から利益を引き出す事によって富を得る行��)のインセンティブを削減⇒中流層の安定と機会を確保=労働者を保護、完全雇用を目指し、インフラ整備投資して、仕事に見合った賃金を支払う。
■大企業の過度の市場支配を制限。金融セクターの役割を修復。長期的な企業経営へのインセンティブを回復させる。
■サービス・知識経済に対応した21世紀の新しい競争法を策定すべき
知的財産権、世界貿易協定、医療費改革、消費者金融保護等
■大きすぎて潰せない大金融機関経営者のモラルハザードを解消する必要性。
SEC、FRBのガバナンス改革、取り締まり強化を行い、シャドーバンキング、オフショア金融センターを調査透明化して、対策をとるべき。
■実施すべき改善政策
・短期主義打破、金融取引税復活による安易な金融仲介手数料狙いを防止、
・取締役会へ従業員代表を入れ、経営監視強化。
・税体系を元に戻し、最高限界税率引き上げ、キヤピタルゲインの優遇措置廃止。相続資産の時価評価中止。
・グローバル企業の海外活動に対する課税実施。
・戦略的公共投資の復活し、老朽化した米国のインフラ再構築4兆ドルで国のベースを再建。FRBの金融政策だけに頼らない。
・全国労働関係法(NLRA):アウトソーシング、下請けなどの21世紀の雇用形態に即したの改革へ。最低賃金引き上げ。
・有給病気休暇・育児介護休暇の創設。
・郵便局の銀行口座を拡大し、全国民が銀行口座を持てる制度を検討。
・住宅金融機関の再建。
・投票制度の旧態然たる現状を改革、期日前投票、オンライン投票、安易な投票者登録、平日投票の変更
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アメリカ経済の現状、一部富裕層への富の集中と中間層の生活不安、貧富の格差の広がり、それらがサプライサイド経済論による金融・税制などの緩和・優遇策で期待されたトリクルダウンの効果が出ていないことによるとして、最上層を制御し、中間層を成長させるための処方箋が示されている。
雇用、住宅、教育、長期的な投資など、方向性としては望ましいものと感じるが、さらに賃金格差のある世界規模での企業活動を考えると、一国内での政策的取り組みでの限界や難しさがあるように思えた。また、個人的には貧富差そのものが問題ではなく、富裕層の存在にかかわらず貧困層が解消されることが肝心だと思う。(例えば所得が平等で貧富差がなくなっても、文化的生活ができなければ問題は解消していない。)
16-135
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REWRITING THE RULES OF THE AMERICAN ECONOMY
http://www.tokuma.jp/bookinfo/9784198641047
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経済が強くなっても中流層が弱くなるという構造で、富の集中による巨大な格差社会が到来している。さらに、国家や社会を疲弊させ、各国で動乱や経済危機を生み出している。
解決策は新しい経済ルールの書き換えを説く。
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将来予測を経済学の視点から語っているのかと思って手に取ったら、アメリカ経済の問題点を語っている本でした。やられた。
経済全体でみたら成長していても、成長しているのは最上層だけで、中間層以下は貧困に喘いでいると、しかもそれが出生に影響を受けていると言うのは改めて悲惨。でも日本なんか成長もしてないからトリクルダウンなんて起こりようがないんだぜ?とかって皮肉も言いたくなる。
個人的には富裕層をディスるのは違うと思っていて、問題なのは相対評価ではなく絶対値としての貧困層がいること。そこだけ社会保障でカバーできればあとは自由競争ってのが一番管理コストはかからないよね。まあ、中間層には嫌がられそうだから選挙では弱そうなシナリオだけど笑
トリクルダウンは、起きなかった
不動産のようなレントで富が積み上がる
アメリカも結局親の学歴に左右される
経済的移動性が弱い(貧困層は貧困のまま)
規制緩和が再規制になっていた
テクノロジーは市場支配力を強める
最賃や福利厚生が機能していない
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ジョセフ・E・スティグリッツ(1943年~)は、米国の経済学者、コロンビア大学教授。2001年に「情報の非対称性を伴った市場の分析」によりノーベル経済学賞を受賞。クリントン政権では米国大統領経済諮問委員会委員長を務め、オバマ政権とも近く、その思想は民主党の経済政策に影響を与えてきた。
本書の原書『Rewriting the Rules of the American Economy』は、もともとルーズヴェルト研究所の報告書として、主として政策決定者向けに書かれたものであるが、その反響は大きく、ニューヨークタイムズ紙は「最上層への莫大な富の集中と、さらに強まる中間層への搾取を導いた35年の政策(レーガノミクスに始まる自由主義経済政策)を書き換えるための大胆な青写真」と評し、タイム誌は、「報告書が不平等の“秘めたる真実”を暴いた」と伝え、フォード財団は「陸標(ランドマーク)」と呼んだという。邦訳は2016年に出版された。
私は、経済学者・スティグリッツ教授の名前こそ知っていたものの、著書を読んだことはなかったのだが、先日NHKで放映された、今年のダボス会議の「ステークホルダー資本主義」についてのパネル・ディスカッションでのスティグリッツ教授の主張を聞き、ネットで調べて本書を手に取った。(思い出せば、以前からスティグリッツ教授はNHKのドキュメンタリー『欲望の資本主義』などにも出ていたのだが。。。)
そして、本書に書かれていたのは、私の期待通りの内容であった。私は、現在の世界の人間社会における最大の問題は、「格差・不平等」にあると考えている。国の間の争いも、一国の中の階層間の争いも、人種の間の争いも、更には宗教の間の争いでさえも、最も影響を及ぼしているのは「格差・不平等」である。「格差・不平等」がなければ、好き好んで他の集団と争ったり、他の集団の支配地域に移動したりすることはないはずなのだ。(あったとしても、現状よりはるかに少ないはずだ)
本書が議論の対象としている米国は、本書にもあるように、2009年から2012年までの収入増加の実に91%が、最富裕層1%の人びとの懐に収まっている、「格差・不平等」の縮図といえる国である。しかし、その米国でも、1980年代前の数十年間はもっとバランスが取れており、格差が急拡大したのは、大幅なルール変更が行われた1990年代以降のことである。そして、その結果、実体経済は健全な成長から乖離してしまったのだ。
そして、スティグリッツ教授は、金融セクターの改革、短期主義の排除、CEO報酬の抑制、最高限界税率の引上げ、公平な税制の制定、企業の海外所得への課税などにより、最上層を制御し、また、完全雇用の目標化、公共投資の復活、労働者の権利強化、最低賃金の引上げ、女性と非白人へのチャンス拡大、学資ローンの再構築、医療制度の改革、住宅金融システムの再構築などにより、中間層を成長させることにより、経済(さらには、民主主義と社会)を健全な姿に戻すことができると主張している。一方、格差の原因をテクノロジーの発達とグローバル化に求める従来の議論については、否定的である。
世界に広がる「格差・不平等」を縮小するには、世界を牽引する米国の改革が不可欠である。また、いまだ米国を��倣する日本にとって、本書の議論は他人ごとではない。米国・日本の政策決定者の真剣な取り組みを期待したい。
(2020年4月了)
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最近、「資本主義の過ち」的な本をいくつか読んでおり、そのせいもあってか新しい発見がなかった。
「自由な市場」のために減税、それは税率面では富裕層に最も利益があってそのメリットを独占、期待されていたトリクルダウンによるその下の層が富むことは起きず…というのはこれまでいくつか読んできた中で既知の話。
それをどう変えるかにもかなりの紙面を割いているが、一般市民でどうこうできるものではない。
そもそもアメリカ経済についての本で、邦題がミスリーディングなのも気になるし、どうも訳が自分に合わず読みにくい。
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アメリカ経済のどこに問題があるのか、どう修復すればいいのかが書かれた本。
アメリカで起こっていることは世界中の国々でも起こっている。
「神の見えざる手」は存在しない。正統派経済学によらない新しいルールに変える必要がある。
労働者の生産性は伸び続けているのに賃金は上がっていない。一方でCEOや銀行役員の所得は大幅に増加している。
富の増加の多くは、固定資産の価値増加。それは生産性の高い経済につながらない。独占利益が増え、不平等が拡大するだけ。
1970年代に始まった「規制緩和」という名の再規制が、1989年の金融危機、1990年代前半の不況、不平等の拡大を招いた。
富が集中すると、その人たちに都合のいい政策が採用されやすくなる。
短期的な株価の重視は、従業員たちを負債として扱うことになる。
かつて企業は投資のために借金していたが、現在は株主配当のために借金している。
有色人種差別による格差も大きい。住宅市場や労働市場でも差別は広がっている。
そして貧困は親から子へ受け継がれる。貧困率の高い地域では教育の質が不十分であることが多い。
性差による所得格差が是正されれば全体の所得が上がり、総需要が増え、GDPも上がる。
「大きすぎてつぶせない」金融機関は、自分たちが責任を負わなくても潰されないことを知っているから、簡単にハイリスクな事に手を出す。
これらの問題を解決するための提案も、終盤に書かれている。税制などはアメリカと日本では違うけど、アメリカと同じ轍を踏まないためにも参考にしたほうがいいと思う。
短期のキャピタルゲインに付加税をかける、というのは、長期の企業経営をうながし、労働者に投資するために必ずする必要があると思う。
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台頭著しい中国とは違った意味で、世界経済のこれからを考えるうえでその動向をもっとも注視しなければいけない国がアメリカです。なぜなら、アメリカはこれまで経済のグローバル化を推し進めてきた国であり、昨今力が落ちてきたと言われつつも、まだまだ世界の中心にポジションを取り続ける国だからです。
グローバル化の過程でアメリカは自国のルールを他国との貿易や経済のルールにおいても適用してきました。つまりグローバル化の主導権を握ってきた国であり、そのことはいわずもがなだと思います。そんなアメリカの国内では格差の拡大、それも富める1%と下位に属する層とに別れてきていて、中間層が空洞化しつつあるようです。この状況は日本の状況ともとても似ています。本書はそんなアメリカの経済状況の現状を分析し、なにがいけないのかをノーベル経済学賞受賞のスティグリッツ教授を中心としたルーズヴェルト研究所のグループでの共同研究の結果と提言を著したものです。アメリカ国内で貧富の差が拡大しているのに、そのルールを他国にもお仕着せるようでは他国も同じ目に遭います。本書のタイトルに『「新しい世界経済」の教科書』とありますが、グローバル化によって多くの国々に蔓延したアメリカと同様の格差社会を是正する方向性こそが新しい世界経済であるとの観点からのセンテンスだと思います。
僕たちが生活していて不安や不平等を感じるときというのは、少ない給与や不十分な利益、未来に対する不安などがあると書かれています。それを氷山の海面上にでた部分に喩えて、海面下のすぐ下の部分にあたるところに注目するのが本書です。そこには、経済の規制、税制、労働法があります。富める上位1%を優遇してどんどん富むようにしていくように、規制も税制も労働法も機能している。この何十年前からの経済システムの設計のありかたに今日の中間層の零落すなわち貧困層の拡大の発端があるのだと指摘されています。ここを具体的にどう良くない機能をしているかを前半部では述べながら、後半部でその打開策を提言しています。
読んでいて晴れ晴れする気分になるところが多いのは、一般人(僕のような者だとかです)が肌感覚で感じているんだけど言語化がままならないものを見つめて表現してくれているからでしょう。本書で具体的に指摘している部分って、実は市民感覚と繋がっているんです。
そして、どうして格差社会がいけないのか、と問う人もいると思うのですが、格差社会のほうが経済は発展しないからというのがまずひとつあります。中流層が多くて元気なほうが経済は発展していくと経済学の研究としてわかっているのだそうです。経済が発展するほうが豊かでしょうし、より多くの人が不安の少ない生活、または幸せを感じられる生活を送れるほうが豊かだというのがふたつめの答えです。
本書を読んでいてやっぱりこれだよなあと思うことがいくつもありましたが、他の本などでよく目にしてきた「企業の短期主義」についてもちゃんと書かれていて、これについても規制やルールの作り方によって長期主義が有利になるようにデザインすることが大切になるという主旨���した。まったくそのとおりだと思います。
最低賃金のパート労働だとかは、グローバル化でしょうがないなんて言われ方もあるでしょうけれども、はっきりいうとまあ搾取なんですよねえ。
あと、面白かったのは、アメリカのFRBが完全雇用率達成よりもインフレ率を抑えるほうに大きく傾いてきていてそれが問題だという指摘でした。失業率が下がっていき完全雇用率が達成に近づくにつれて、お金がより多くの人に回るようになるのでインフレが起こるというのが理論的な見解だそう。インフレがすすむとお金の価値が下がりますから、国全体・国トータルでストンっと貧しくなるイメージが湧きます。本書を読むと、もっと多岐にわたるインフレのネガティブな効果と、その真偽についてわかるのですが、ここでは説明にかなりの字数がかかるので割愛します。著者は完全雇用のほうが大事だ、と主張するのですが、それは完全雇用が達成されて、労働市場において労働者の取り合いになる状況のほうが、労働者の立場が強くなり力をもつようになるので、賃金の上昇だって望めるのが第一としてあります。そうなれば、中間層社会の実現に近づくという考えでした。
また、長きにわたって雇用状態にない人を作らない効果もあるんです。長きにわたって働いていないと、仕事をこなす能力が低くなるのでさらに採用が遠のき、ますます働けなくなります(ヒステリシス現象)。
と、消化不良気味のレビューなのですが、著者が言いたいのは、みんなで中間層になろうということです。1%の人だけが巨万の富を抱えて、さらにますます富んでいくなんておかしいじゃないか、それはルールや仕組みがおかしいからなんだ、ということです。本書の中身がもっとみんなの知るところになると、世の中の風向きが大きく変わります。そんな本でした。
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世界経済が今後どのような方向に向かっていくのかについて富と貧困や資本主義経済、女性の活躍等について解説されている。どのようなダイナミクスで経済が動いているかについてわかりやすく解説されているが、比較的一般的に議論されている内容が多かった印象であり特別印象に残る部分はなかった。